クズにも妻はいる

 八月一日(月)榊

 朝食を食べ終わる頃、妻がやって来た。今日でこの二ヶ月過ごした病室とお別れか思うと、不思議な気分になった。「榊さんがいなくなると寂しいですね」と砂原君が言うので、「僕も寂しいけど、二度と来ないよ」と答えた。

 そうは言ったものの、しばらくは検診に来なくてはならないのだ。もう有給もないのにわざわざ平日の午前に会社を休み、車でここまで来なくてはならない面倒は考えると気が重かった。同室の患者に挨拶すると、同時期に入院した福留さんが悔しそうな顔をした。

 午後になりシーツがはがされ、最初から僕などいなかったように佇むベッドのことを想うと、思わず笑みがこぼれた。

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