プレミアリーグ2021/22のスポンサー企業を調べる(1)
過去にプレミアリーグに所属するクラブがどのような業種の企業とメインスポンサーとしてビジネスをしてきたのかを紹介してきましたが、今回は、2021/22シーズンについて触れていきたいと思います。
プレミアリーグクラブのユニフォームには、2社しか広告を入れられない
まずは、先にプレミアリーグのレギュレーションについて触れていきたいと思います。
まず、イギリスのクラブとして初めてユニフォームにスポンサー企業を入れたクラブはどこだと思いますか?正解はリバプールと言われています。
1979年に、初めてリバプールがキットスポンサーを入れることに合意し、日本の企業である日立製作所と2年間£100,000で合意しました。しかし、当時は、テレビ放送がされない試合に限り、かつ、リーグ戦ではなく、ヨーロッパでの大会かFAカップのみでの着用に限定されていました。
そこから、徐々にスポンサー企業が各クラブのユニフォームに掲載されるようになりましたが、最近までは、プレミアリーグに所属するクラブは、ユニフォームには1社のスポンサー企業しか掲載することができませんでした。しかし、現在では、シャツの袖(右側)にもスポンサー企業が掲載できるようになり、メーカーのロゴを除くと2社まで掲載が可能にました。
これが新しくなったプレミアリーグクラブに対して求められているレギュレーションになります。スポンサーとして入れられる場所は、胸だけでなく、袖にも入れることができるようになりました。
そのほかにも様々なレギュレーションがあります。例えば、18歳以下のプレイヤーがいることも考慮し、掲載ができる企業のサービスや活動が制限されています。特に年齢制限のあるものについては、厳しくなっており、アルコールやギャンブル系については、掲載するための条件が非常に厳しくなっています。過去には、ベッティング企業のスポンサーシップが多くみられたプレミアリーグ、ならびに下部リーグでしたが、現在は協会の承認が必須となっています。
それはさておき、新しく解禁となったスリーブスポンサー(袖)の価値とはどれくらいなのか、ご紹介をさせていただきます。
スリーブスポンサー(袖)の価値とはいかに・・・?
最も高額なクラブでは年間£1,000万ともいわれる契約を締結しています。
チェルシーは、Hyundaiと契約を結んでおり、アーセナルはVisit Rwandaと、マンチェスターユナイテッドはKohlerと契約を締結しており、その額は年間£1,000万と言われています。しかし、現時点では、プレミアリーグクラブの中には、ユニフォームに掲載をしていないクラブもありますが、掲載しているクラブで最も安く契約締結がされているのは£40万となっており、サウサンプトンがVirginと契約を締結しています。(※20/21シーズンに2部にいたクラブを除く)
キットスポンサーの世界最高額は約年間150億円越え!
続いて、キットスポンサーについて触れていきます。
まず、20のクラブで構成されるプレミアリーグは、10の異なるスポーツメーカーによってスポンサードされています。
特に、最も多いキットスポンサーメーカーは、AdidasとNikeでした。以外にも3位にはUmbroとなり、次いでCastoreとPumaとなりました。
あまり知られていないかもしれませんが、Castoreは2015年に誕生した英国のマンチェスターに本社を置くスポーツウェア・メーカーであり、現在は世界50か国以上で販売もされています。かなり注目されているスポーツメーカーでもありますので、一部記事をご紹介だけさせていただきます。
さておき、キットスポンサーは、長期契約をするクラブ・メーカーも多く、現在最も長い契約を締結中のクラブは、チェルシーがナイキと締結している15年契約、また、トッテナムホットスパーズがナイキと締結している15年契約が最長となり、チェルシーの15年総額£9億が最も大きな契約となっています。
単年でみる契約金額でみると、最も高額となっているのはリバプールがナイキと結ぶ契約となっており、年間£8,000万となっています。最も少ないクラブとしては、年間£150万となっておりバーンリーとなっています。(※20/21シーズンに2部にいたクラブを除く)
ちなみに、世界的にみると最も高い報酬を得ているクラブはバルセロナとなっており、ナイキとの契約は年間£1億と言われており、10年契約で総額£10億ともいわれています。
そして、最後にメインスポンサーについて触れていきたいと思います。
世界中に放映されているプレミアリーグにとって、メインスポンサーの広告価値は図り切れないと予想されます。
今シーズンからメインスポンサーが変わったクラブや、契約をリニュアルしたクラブもありました。マンチェスターユナイテッドは、シボレーとの長期契約が終了し、新たにTeamViewer社と5年総額£2.35億(年間£4,700万)で契約を締結しました。
この金額に対しての投資対効果というものはどのように回収するのかはTeamViewer社次第でもありますが、今回のパートナーシップでは、世界に11億人いるといわれているファン、フォロワーに対して自分たちのサービスを紹介することができるようになるだけでも魅力的な取り組みになると予想され、今後どのようにアクティベーションを行っていくのかも注目です。
また、マンチェスターシティはEtihadと契約を更新し、年間£6,750万で契約を更新し、プレミアリーグクラブの中で最も高いメインスポンサー料を得るクラブとなりました。
スポンサーシップを活用するために大切なこととは
これほどにまで高騰化するスポンサーシップの価値については、様々な意見があるものの、スポンサーシップはアクティベーションをするための権利であり、その価値を活用しきれるかは、スポンサー企業の手腕が重要だと考えている。
実際に、バルセロナにスポンサーをしていた楽天の三木谷社長に関しては、取材で以下のように述べており、スポンサー企業側がどのように自分たちの目指す方向性やビジョンなどをクラブを通じて社会に発信できるかも重要であると私自身も思う。
感染症の拡大などの影響により来場して観戦できる人数にも制限がかかる中で、クラブ側にも新しいパートナシップに応えられる体制・コンテンツを作る必要もあると考える。最近では、SNSを活用しスポンサー企業を獲得するチームも国内でも多くみられるようになり、これまでとは異なる形で、そして新しいコンテンツに対して、企業が協賛する事例も多くみられるようになりました。また、SDGsに絡めたスポンサーシップの活用も見られるようになりました。
このように、スポンサーシップの形もどんどん進化しており、ただ単に「広告」としての価値にとどまらなくなりました。アメリカでは、スポーツクラブと企業が共創し、企業にとってスポーツクラブが成長するために重要な役割を担っているともいえる状態にまで、スポンサーシップアクティベーションは活用されています。
今後、国内においても、このようなスポンサーシップが増えていくことで、スポーツの価値が高まると考えています。今後も様々な切り口からスポーツをとらえていきたいと思います。