とっちゃんの話

とっちゃんはいつも何を言ってるかわからない。

幼かった僕は

今程言葉を知らない子供だ

それにしてもとっちゃんの言ってることはなんだかよくわからない

他の友達の言葉はわかるのに

どうしてなんだろう?

僕らは友達だった

何を言ってるかはわからなかったけど、僕らは遊んで、笑って、喧嘩して、先生に怒られて、仲直りして、また遊んで、また笑って

卒園式の時、みんなは一人ずつ卒園の言葉を言っていくけど、ちゃんと喋れないとっちゃんは僕と一緒に卒園の言葉を言った

何を言ったかもう覚えてないけど、とっちゃんは相変わらず何を言ってるのかわからなかったけど、僕らの息はぴったりだった

何度も練習したからね

もう思い出もぼんやりだけど、とっちゃんの笑った顔とか、怒った顔とか、ピースサインとか、バイバイの姿とか、今でも覚えてるよ

卒園してからずいぶんたった小学生になっていたある日、一度とっちゃんと再会した

あいかわらずとっちゃんは何を言ってるかわからなかったけど、元気そうだった

やっぱり何を話したかは覚えてない

あれは僕の記憶違いなのかな?

それから更に少し経ったある日、ある事に気付く

たまにとっちゃんにそっくりな人を見る

まさか兄弟な訳はない

結構沢山いるからね

その人達を見ると、いつもとっちゃんを思い出す

僕は毎日忙しく、少しずつ大人になっていった

ある時

僕はずいぶん大きくなってからようやく気付く。

とっちゃんはダウン症なんだ

そうかそうか

ず~っと不思議だった事がやっと、少しだけわかった

思い出は少なくないけど、なんで僕らは仲が良かったんだろう?

なんだか記憶があやふやな僕だけど、一緒に遊んだり、一緒に喧嘩した思い出は思い違いじゃないよね?

幼かった僕らは、伝わらない言葉を交わして、沢山のことを伝え合ってたよね

幼い僕の

小さな小さな

でも、大切な思い出。

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