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【読書記録1】52ヘルツのクジラたち

最初、「52ヘルツのクジラたち」という題名の意味が分からなかった。読み進めるうちに、それが壮絶な意味を持って僕に迫ってきた。
親が我が子にこのような虐待ができるものなのだろうか。
子どもの担任にちゃんと世話をしていないと言われたからというだけで、暴力を振るいトイレに閉じ込めてしまう。それも一晩だけのものではなく、年末年始の間の長期間ずっと。
子どもが初めて口にした言葉が、「ママ」ではなく「ばあば」だったからという理由で、我が子の舌にタバコの火を押し付けることができるものなのか。
虐待を描くシーンは辛くて何度もページを閉じたくなった。
自分をこんな地獄から救い出してくれた魂の番と言える人と、自分を縛り付けるDVな恋人。
結局親の愛に恵まれなかった人は、恋人の愛にも恵まれないのだろうか。

しかし、他のクジラに届かない52ヘルツという魂の声をちゃんと受け取ってくれる人がいるという希望を、この作品はしっかりと描いている。
互いに虐待を受けていた2人を支える、親友や頼りになる大人たちがいるのだ。
最初は本当に辛い描写が多かったが、最後は心揺さぶられた。
本屋大賞は伊達ではない。

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