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沈黙のWebライティング

今回は、松尾志起さんの著書
『沈黙のWebライティング ーWebマーケター ボーンの激闘ー』
をご紹介します。

本書は、松尾さんの著書『沈黙のWebマーケティング』の続編にあたり、「Webライティング」をテーマとした一冊です。
著者のライティングスキルがイラストやストーリーを交えて記憶に残りやすい形で上手くまとめられており、631ページというボリュームを全く感じさせない素晴らしい内容でした。

私のような「Webライティングって何…?」というレベルの方が楽しみながら気楽に学習をするのに最適な1冊と感じました。
”マナブさん”がおススメしている書籍としても本書は有名かと思います。

本書の内容は以下のとおりです。
会話調のエピソードと特別講義がセットとなり、各エピソードで1テーマを扱う構成になっています。

目次
episode 1 SEOライティングの鼓動
 特別講義:SEOを意識したコンテンツを作るカギ
episode 2 解き放たれたUSP
 特別講義:「USP」を最大限に活かすコンテンツ
episode 3 リライトと推敲の狭間に
 特別講義:わかりやすい文章を書くためのポイント
episode 4 愛と論理のオウンドメディア
 特別講義:論理的思考をSEOに結び付ける
episode 5 秩序なき引用、失われたオマージュ
 特別講義:オウンドメディアに必要なSEO思考
episode 6 嵐を呼ぶインタビュー
 特別講義:SEOに強いライターの育成方法
episode 7 今、全てを沈黙させる・・・!
 特別講義:バズにつながるコンテンツ作成のコツ
epilogue 沈黙のその先に


どのepsodeもまさに目から鱗…! 大変勉強になるものでした。
今回はビジネスパーソンにとっても役立つ機会が最も多そうなepisode 3「わかりやすい文章を書くためのポイント」からエッセンスを箇条書き形式でご紹介します。

わかりやすい文章を書くためのポイント

■ 文章を読んでもらうために必要な3つの視点
1.感情表現を入れ、自分事化による”共感”を誘発する
2.伝えたいことがきちんと伝わるよう、”見やすさ”や”わかりやすさ”にこだわる
3.ファーストビュー(冒頭文)で、伝えたいことをまとめる

上記のポイントをまとめます。


1.感情表現を入れ、自分事化による”共感”を誘発する

共感とは”相手の感情を自分事として感じること”
読み手が共感した文章は、読み手にとっての自分事になるため、「この文章は自分にとって関係があるのか、じゃあ、読んだ方がいいな」という心理になり、文章を読み進めてもらえるようになります。

感情を伝える上で重要なのは次の2つのポイントです。
i) どこが感情表現なのかが、わかりやすいような演出を行う
ii) その感情は誰の感情なのかが伝わるよう、”感情の発信者”を明らかにする

たとえば、感情と表すために「」(カギ括弧)を用いた演出を行うのも一手です。
カギ括弧を用いることで、その文章は「話し言葉」に見えるため、感情が伝わりやすくなるのです。
また、文末に感情を表す記号を入れることでも感情表現は演出できます。
「!」や「?」、「・・・」などの感嘆符や記号、場合によっては顔文字を使ってみてもよいです。

そして、次に大事なのが、”その感情が誰のものか?”という「感情の発信者」の明示です。
感情の発信者の人物像が具体的であればあるほど、その発信者が発する感情は説得性をもち、より深く共感されやすくなります。


2.伝えたいことがきちんと伝わるよう、”見やすさ”や”わかりやすさ”にこだわる

文章を読むとき、脳には負荷がかかります。
なぜなら、視覚情報の多いマンガや映像などと違い、文章は情報を自分の脳を使ってイメージする必要があるからです。

そして、文章を読むときに作り上げられるイメージは、各人の脳の中にある知見や記憶によって変わってくるほか、脳への負担の程度によっても変わってきます。
脳への負担が少ない状態であれば、脳は自由な発想ができるため、想像力豊かなイメージを膨らませることができます。

しかし、脳に過度な負担がかかってしまうと、脳はイメージを膨らませるどころか考えることを止めてしまうのです。
よって、文章を用意する際は、読み手の脳に負担をかけないような、見やすく、わかりやすい文章を意識する必要があります。

では、そのような文章はどうやって書けばよいのでしょうか?
実は、私たちの脳におけるふたつの思考パターンを理解していれば、見やすくてわかりやすい文章を書くのはカンタンなのです。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏は自身の著書『ファスト&スロー』の中で、”脳は楽するようにできている”という主張のもと、人間の脳には「システム1」と「システム2」というふたつの思考があると述べています。

システム1
脳への負担を減らすために自動的に高速で動く思想。
物事を直感的に理解しようとする思考。

システム2
複雑な計算など、注意力を要する作業が必要な際に、慎重かつゆっくりと動く思考。
物事を論理的に理解しようとする思考。

脳はラクをするようにできているため、何かの物事を判断するとき、まずは「システム1」の思考を用いて、「これはいい」「これはダメ」というふうに物事をふるい分けています

このような脳の働きを考えると、文章を書く際に注意すべき点が見えてきます。
脳が少しでも「この文章は読みづらいな」と感じた場合、「この文章は読む必要がない」と判断されてしまう恐れがあるのです。
どれだけよい内容の文章でも、見た目がダメだめなら、それだけで読んでもらえないことが起こりえます。

「システム1」の思考をパスすると、次は「システム2」という思考が待ち構えています。
この「システム2」は「システム1」とは違い、物事を慎重かつ冷静に判断する思考です。
よって、「システム1」に配慮した見やすい文章であっても、その文章の内容が論理破綻していたり、おもしろくないのであれば、結局読んでもらえないことになります。

文章を読んでもらうために配慮すべき「システム1」と「システム2」。
それぞれに配慮するためには、次の要素が必要になります。

i) 心理的負担が下がるくらい、見やすい・読みやすい
→「システム1」に配慮した文章
ii) 論理的に理解しやすい(わかりやすい)
→「システム2」に配慮した文章

次からは、「システム1」、「システム2」のそれぞれに配慮した文章を書くためには、どういったことに気を付ければよいかをまとめます。

■ 「システム1」に配慮した文章作成のテクニック

① 改行と行間に気を配り、心地よいリズムを意識する。
(改行や行間をうまく取り入れることで、文章に「間」が生まれ、それがリズムを生み出す。リズムが生まれれば、文章を読む人たちもそのリズムに乗ることができ、文章をスラスラとよめるようになる)

② 漢字とひらがなの含有率を調整する
(漢字だらけの文章は難しく感じられる。一方、ひらがなが多い文章は平易に感じられる。そのため、漢字とひらがなのちょうどよいバランスを意識する。漢字を使う際には、「その表記は本当に漢字である必要性があるのか?」ということを考えるようにする)

③ 「この」「その」「あの」などの指示代名詞を減らす
(指示代名詞を減らして固有名詞を増やすことで、読み手が文章を読み飛ばした際、主語が何を指しているかをわかりやすくする。ただし、指示代名詞を完全になくしてしまうのはNG。指示代名詞は文章のリズムを作る重要は役目も担っているため、不自然にならない程度に減らすことが大切)

④ 箇条書き(リスト表記)を使い、要点を整理する
(箇条書きを使うことで、情報を見やすく整理することができる。たとえば、”数字”を用いた箇条書きを使えば、読み手に対して「この項目数分の情報を覚えておけばよい」と感じさせることができ、読み手の心理的負担を軽減させる)

⑤ 情報をカテゴライズして整理する
(ページの冒頭に「この記事ではどういった情報が取り上げられているのか?」を示す「目次」を設置する)

⑥ いらない言葉や表現はカットし、文章が不必要に長くならないようにする
(たとえば、無意識のうちに同じような意味に文章を2回入れていると感じた場合、どちらかをカットするとよい)

⑦ 感情表現を入れ、自分事化による共感を誘発する
(「システム1」は「その文章が自分にとって関係があるかどうか」を瞬時に判断しようとするため、記事に感情表現を入れるのであれば、できるだけ冒頭に入れるとよい)

⑧ 文字のサイズや色、強調のルールに気を配る
(文字自体の”見やすさ”にも配慮する。色の強調を使うのであれば、ルールに沿って色を変えるようにする。赤:否定・禁止・ネガティブな強調、水色(紺):肯定、緑:例示・用語の強調、オレンジ:単純な強調、など)

⑨ 区切り線や記号を使う
(行間を空けて「間」を作る)

⑩ 写真やイラストを挿入する
(言葉は万能ではない。言葉だけで表現するのが厳しいと判断した場合は、写真やイラストの使用を検討する)

⑪ マンガ的な演出を意識する


■ 「システム2」を意識した論理的にわかりやすい(理解しやすい)文章を書く

「論理」とは、ある”主張”を相手に届けるために必要な「理解の架け橋」のことです。
この理解の架け橋を築くためには、”主張”をもとに相手が抱いた「なぜ?」という疑問を全てクリアにする必要があります。
「なぜ?」をクリアにするために重要なことは次の3点です。

① ”相手がわからない言葉”を使わない
(もし、相手がわからない言葉を使うのであれば、その言葉に対する説明を必ず入れる)

② 相手が”何に対して”疑問を持っているのかを察する
(「なぜ?」と感じるポイントは相手によって異なる。相手がすでに理解していることに対して、こちらが懇切丁寧に説明をすると、説明がかえってまどろっこしくなり、相手からの心証が悪くなる。その結果、こちらの主張が届かなくなるという事態に発展する恐れがある)

③ 「なぜ?」に対する「理由」を導くための十分な「根拠」をもっている
(理由を述べるためには、なぜその理由がいえるのかという「根拠」が必要)

✓ 論理的な文章を書く3つの要素
論理的な文章は、基本的には「主張(結論)」「理由」「根拠」の3つの要素で構成されます。
誰かに主張を通したいときには「理由」と「根拠」が必要です。
そして、それらの「理由」と「根拠」の数が多ければ多いほど、その主張は強固なものになっていきます。
理由には根拠なきものはなく、そして、主張には理由なきものはないのです。
(なお、Webの文章においては、「結論」→「理由」の順を徹底する必要があります。Webで文章を読むほとんどの人は、その記事に自分のほしい情報があるかどうかわからないと、すぐに離脱するからです。)

✓ 相手の反論に先回りして反論しておく
主張には「一貫性」が大事です。
一貫性があるからこそ、”理解”の架け橋を真っ直ぐに築いてゆけるのです。
ただ、どんな主張にも「反論」はあります。
その反論を打ち破らないと、相手に「理解の架け橋」を砕かれてしまうことがあります。

そこでおススメなのが、主張に対する「反論」を予測し、その反論に対して、あらかじめ先回りして答えを用意しておくことです。
「反論」「反論に対する反論」を準備しておくことで、「この文章の書きてはしっかり考えて意見を述べている」と読み手に感じさせることがでいます。
また、主観的な意見だけでなく、客観的な意見も入っているため、信頼感が増します。
ただし、理由の「根拠」にあたるデータに関しては、信頼できる場所から参考・引用するようにします。

✓ 主語や修飾語の、”係り受け”の関係を意識する
論理的な文章を書くためには、文章内の「言葉の関係性」をわかりやすくしないといけません。
主語や修飾語を使う場合は、”係り受け”の関係をしっかりと意識します。
以下の3つのポイントに留意します。

① 主語と述語はできるだけ近くに置く
(主語と述語の間に言葉が多く入るほど、双方の関係性がわかりにくくなるため)

② 修飾語は被修飾語の近くに置く
(修飾語も同様に、どの言葉にかかっているのかがわかりやすいよう、修飾語と被修飾語の距離をできるだけ近づける)

③ 修飾語が複数ある場合は、短い修飾語を被修飾語の近くに置く
(長い修飾語は前に、短い修飾語は後ろに置く。短い修飾語は、長い修飾語に比べて存在感が弱いので、被修飾語の近くに置いて、被修飾語との関係をわかりやすくする)

✓ セルフディスカッションとセルフディベートを行う
論理的な文章を書く際におススメしたいのが「セルフディスカッション」と「セルフディベート」を行うことです。
これらは、自身が読者(客観)の視点に立ち、自分の主張に対して「なぜ?」という意見をぶつけて自問自答により議論を行ったり、反論意見をぶつけることを指します。
「セルフディスカッション」が「なぜ?」という意見をぶつける「議論」、「セルフディベート」が反対意見(反論)をぶつける「討論」と考えるとわかりやすいです。

「セルフディスカッション」では、「5W3H」を意識して質問を投げかけます
そうるれば主張をどんどん深堀りすることができます。
とくに「Why(なぜ?)」「What(何を?)」「How(どのように?)」はよく使います。

セルフディスカッションを行う際の5W3Hとは以下です。
When:いつ?
Where:どこで?
Who:誰が?
Why:なぜ?
What:何を?
How:どのように?
How many:どのくらい?
How much:いくら?

「セルフディスカッション」や「セルフディベート」を行った後は、”二人称の会話を一人称の文章へ変える”ことを意識して、新しく文章を書きます。
そうして書いた文章は、セルフディスカッションを行う前と後では、わかりやすさに雲泥の差があるはずです。
なぜなら、セルフディスカッションを行うということは、その記事を読むユーザーが抱く可能性が高い疑問や質問を先回りして解決することになるからです。

✓ 文書の推敲を行う
記事を書いたあとは、必ず何度も読み返し、「システム1」に配慮されているか(見やすいか)、「システム2」に配慮されているか(わかりやすいか)をチェックします。
この推敲時には以下のポイントを意識するとよいです。

① 複数の端末でチェックする(PC、スマートフォン、タブレット
② 紙に印刷をしてチェックをする
③ できるだけ多くの人にチェックに加わってもらう
④ 声に出し、演じて読んでみて、強調や行間が適切かとうかをチェックする

また、推敲後に文章を「テコ入れ」することになった場合は、テコ入れしたあとで、できるだけ記事の最初から読み返すようにします。
なぜなら、部分的にテコ入れすると、記事全体のリズムや論理展開に違和感が生じることがあるためです。

以上、episode 3「わかりやすい文章を書くためのポイント」の一部分のみを抜粋してご紹介しました。

本書では”SEO”などWebライティングの必須スキルについても大変わかりやすく説明されており、何らかの形でライティングを行うすべての人にとって極めて学びの多い一冊であること間違いなしです。

是非本書をお手に取り、ご一読されることを推奨いたします。

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