見出し画像

ビジネスエリートになるための教養としての投資

今回ご紹介するのは、農林中金バリューインベストメンツCIOの奥野一成さんの著書『ビジネスエリートになるための教養としての投資』です。

奥野さんは、日本における長期厳選投資のパイオニアであり、”バフェット流の投資”を行う数少ないファンドマネージャーです。

本書全体を通じて、株式投資、特に長期投資の有効性が様々な角度から説かれており、これまで読んだ株式投資に関する本の中でトップ3に入る良書と感じました。
労働者思考しかも持たない会社員には特に強く響く、「資本家の思想」が本書にはたくさん詰まっています。
子供が大きくなったら本書を読ませ、”投資家マインド”を早期に植え付けたいと思います。

本書の構成は以下のとおりです。
1時限目 投資家の思想が人生を成功に導く
2時限目 私の投資人生
3時限目 日本人はなぜ投資が苦手なのか?
4時限目 「投資」と「投機」は違う
5時限目 売らない株を買えばいい
6時限目 ファンドマネージャー流 株式投資で成功するコツ
補講 資産形成で失敗しないために

本書で特に勉強になった内容は下記4点です。
1.「時間」という有限のリソースを有効に配分する
2.なぜ日本は投機なのか
3.強靭な構造を持つ会社を選ぶ
4.保有株式を売却するときの判断基準

以下、それぞれを箇条書き形式で簡単に見ていきます。

1.「時間」という有限のリソースを有効に配分する

(『1時限目 投資家の思想が人生を成功に導く』より)

・金融資産を積み上げるためには、「自分が働く」ことと「自分以外を働かせる」ことの2つを組み合わせることが不可欠。その優先順位をつける上で重要なのは、皆が持っている「時間」というリソースには限りがある、ということを知ること。

・「時間」「能力」「お金」という資産・リソースは概ね交換可能。子供のうちにやる勉強などの活動は、「時間」を「能力」に変える活動。大人になってからは、その「能力」と「時間」を「お金」に変えて生活する。

・若くて時間がある若いビジネスパーソンがまずやらなければならないこと、やり続けなければならないこと、それは「自分への自己投資」。継続的に自己研鑽することで、「自分が働く」場合の単価を上げる。「自分が働く」場合の選択肢、つまり転職や副業の選択肢を広げる。

・人間が持っている時間は1日24時間で、この点については例外はない。だから「時間管理術」のような本が人気を集めるわけだが、結局それも1日24時間のなかで無駄を省き、動きを効率化することによって隙間時間を捻出し、そこから新しい何かにチャレンジして付加価値を上げるという話でしかない。

・株式投資を通じて他人に働いてもらえば、実質的に自分の1日の持ち時間を増やすことができる。時間という限りあるリソースを有効活用できる。必要以上のお金を預金で置いておいても、この超低金利下ではそこからは何の利益も生み出されない。

・会社の本来的な存在意義は「社会に付加価値をつけるため」。資本主義は、そのように世の中に付加価値を提供できる企業同士を「神の見えざる手」によって競い合わせることで、より効率的に機能させる近代最大の発明。決して構成員である従業員に給料を支払うために存在しているのではない。


2.なぜ日本は投機なのか

(『4時限目 「投資」と「投機」は違う』より)

・株価とは短期的に見ると、その時々の人気によって大きく上下にブレるが、不思議なことに長期的な株価の動きをグラフにすると、利益の増え方とリンクしている。利益はその会社の価値の源であるため、株式市場は長期的に見ると価値の計測器になる。

・教育により「利益がしっかり確保されている会社の株式に投資すれば、細かく売り買いしなくても投資成績は得られる」ことが理解される日が来ても、日本株は投機的なものであり続ける恐れがある。なぜなら、米国株に比べて利益が増え続ける会社が圧倒的に少ないから。利益が微増か横ばいだとしたら、根本的に企業価値は高まらない。したがって、企業価値の向上をベースに株価が右上がりで上昇するということにはならない。

・利益が横ばいだとしたら株価は全く動かないのかというと、決してそのようなことはない。その時々の思惑によって、株価は上下動を繰り返す。ただ、利益が長期的に増えるという期待感がないと、ちょっと株価が安くなったところで買い、ちょっと高くなったら売って利益を確定させるという短期売買を繰り返す傾向が強まる。だから、日本の株式市場は、いつまでたっても長期投資が根付かないだけでなく、思惑で売り買いを繰り返す投機的なマーケットになってしまう。

・ビジネスモデルを考えるうえで一番肝心なのは、いかに自分たちのビジネスの周りに高い参入障壁を築くかという点に尽きる。そこを疎かにしたことが、日本企業が利益を伸ばし続けられなかった原因だと思われる。結果、多くの日本企業の株価は、綺麗な右肩上がりのトレンドを描くことができず、上下のブレの中で、ギャンブル的なトレードが横行するようになったと考えられる。


3.強靭な構造を持つ会社を選ぶ

(『5時限目 売らない株を買えばいい』より)

・売らずに済む会社は、「高い付加価値」「高い参入障壁」「長期潮流」の3要素に支えられた強靭な構造を持つ。

・「高い付加価値」とは、「本当に世の中にとって必要か?」ということ。必要性が高ければ高いほどいい。言い換えると、会社の存在意義。その会社が存在する意義はどこにあるのかということを見極める必要がある。
ディズニーを例にすると、ディズニーは単に遊園地や映画を提供しているわけではなく、彼女や子供など、「大切な人に喜んでもらいたい」という消費者の課題を解決している。

・「高い参入障壁」とは、「今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的に強いか?」ということ。参入障壁とは「競争力を決める要因」とも言える。極めて強い競争力の源泉こそが参入障壁だからである。

・「長期潮流」とは、高い付加価値と高い参入障壁によって獲得された利益を、増幅させるもの。つまり、長期潮流があったとしても、付加価値や参入障壁が無かったら、長期的に利益を獲得し続けることは出来ない。本物の長期潮流とは、「不可逆的であると言い切れるもの」。例えば、人口動態、長生きしたいという欲求、国家財政は悪化する、など。


4.保有株式を売却するときの判断基準

(『6時限目 ファンドマネージャー流 株式投資で成功するコツ』より)

・「絶対に持ち株を売らないのか?」と言われれば、答えはノー。基本的には売らなくてもずっと株価が上がり続けていく会社に投資するのが理想だが、それでも売却するケースが3つある。

・第1は、自分たちの見立てが間違っていることに投資した後で気づいた時。「この会社は強い参入障壁を持っている」と思って投資したのに、実は大したことがなかったというケースが時々ある。見立て違いだった会社の株式を持ち続けるわけにはいかないので、その時は潔く売却する。あるいは、参入障壁が、時間の経過とともにどんどん蝕まれていき、どうやらこのままだと参入障壁を構築し直せるような状況ではないと思った時も売却する。

・第2は、より面白い投資機会が出てきた時。例えば、B社と比べてA社の方が高い参入障壁を持ち、かつ付加価値も高くて投資妙味があるという場合、B社の株式を売却してA社の株式を買うケースもある。明らかにA社の方が高い投資妙味を持っているのに、あえてB社を持ち続ける意味はない。

・第3は、株価がフェアバリュー対比で上がり過ぎた場合。フェアバリューとは「適正価格」のことで、将来予想される業績や現在の資産、負債の状況から独自に算出する理論値。実際の株価がフェアバリューに対して2倍、3倍などと大きく上回った時は、ひとまず売却して利益を確定させる。長期的に考えれば、フェアバリューに対して2倍、3倍と上昇した株価は、どのかの局面で必ず値下がりする。そうなったとき、もう一度、参入障壁が蝕まれていないかどうかをチェックして、まだまだ競争力が維持できそうだと判断すれば買えば良い。


以上、本書の一部のみを抜粋して簡単にご紹介しました。
本書は、投資家マインドや、株式投資の必要性・有用性、長期投資の基本から実践を理解するのに非常に有用な書籍であると感じました。

勉強を続け、本書の長期投資のアプローチを実際の投資を行う中で磨いていき、キャリア的にも経済的にも独立した状態へと近づけるよう努力を継続していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?