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【新版】財務3表図解分析法

今回は、國貞克則さんの著書「新版 財務3表図解分析法」をご紹介します。

本書は「会計の専門家でない人」向けの会計学習をコンセプトとし、財務3表を図式化して大変わかりやすく解説しています。

本書では、財務諸表から会社の状況や戦略を分析できるようにするため、
1.PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)を図にして分析する「図解分析法」
2.CS(キャッシュフロー計算書)の8パターンによる分析法
を2つの大きな柱としています。

本書と、そのシリーズ本である「新版 財務3表一体理解法」「新版 財務3表一体理解法 発展編」の3冊を読むことで、会計に対するアレルギーはまずなくなると思います。

■本書を読んで特に勉強になったのは下記の4点です。

1.事業全体を3つのフェーズに分解した分析
2.PLとBSを図にして分析する「図解分析法」
3.BSのチェックポイント
4.図解分析の方法

以下、それぞれ見ていきます。


1.事業全体を3つのフェーズに分解した分析

すべての会社は、事業活動として
 お金を集める→それを何かに投資する→そして利益を上げる
という3つの活動を行っています。
そして、この3つの活動は、PL・BS・CSの財務3表で表されています。

事業全体のプロセスは、以下のように表すこともできます。

この事業プロセスが、株主から見て効率よく運営されているかどうか評価する分析指標が、ROE(Return on Equity)です。

ROEは、当期純利益÷自己資本によって計算できます。

1920年代にアメリカの化学会社DuPont が導入した業績管理手法「デュポン・モデル」によれば、ROEは、上記プロセスの3つのフェーズの分析指標である
① 財務レバレッジ
② 総資本回転率
③ 当期純利益率
の掛け合わせにより求められることが理解できます。

すなわち、財務諸表からザックリと会社の状況を分析しようと思えば、まずは4つの数字、
 ROE・財務レバレッジ・総資本回転率・当期純利益率
をチェックすれば、分析対象会社がどこのフェーズを効率よく経営しているかどうかわかります。


2.PLとBSを図にして分析する「図解分析法」

上記のプロセスを、PLとBSの図を使って表せば、資本主義社会の仕組みが見えてきます。

下の図において、右側がPL、左側がBS、図の大きさはそれぞれの項目の金額の大きさを表しています。

資本主義社会とは、株主の資本金を元手に事業が始まり、他人の資本を使って事業を行い、その事業によって生み出された利益が、株主の自己資本を増やしていくという仕組みといえます。


3.BSのチェックポイント

BSを見るときは、まずは以下の順番にチェックするとよいといいます。

1)BSの右側の2つの項目

①「有利子負債」
有利子負債とは、会社の借金です。
具体的には、短期借入金・長期借入金・社債などです。
有利子負債をチェックする理由は、負債の中には買掛金・未払法人税・預り金といった、純粋な借金でない負債もたくさん入っているためです。

②「利益剰余金」
利益剰余金は、基本的に過去の利益の積み上がりです。
過去の業績を推し量る意味でも利益剰余金は大切です。

2)BSの左側

BSの右側の次に見るのはBSの左側です。
BSの左側は何に投資しているのかを表すため、経営の戦略が表れます。
たくさんの資産を現金のまま保有している会社もあれば、積極的に何かに投資している会社もあります。
ただ、それはBSの左側に書かれている項目と数字を細かく見ていかなければわかりません。


3)BSの左右のバランス

BSの左右を見て、会社の経営の安全性を読み取ります。
見るべきは項目は3つです。

①「流動比率」
流動比率は、流動資産÷流動負債で求められます。
上の図の網掛けのないところを比較しています。
流動資産が多くて流動負債が少なければ、金払いが良いと言えます。

②「固定長期適合率」
固定長期適合率は、固定資産÷(自己資本+固定負債)で計算されます。
上の図の網掛けのところを比較しています。
流動比率の良好な会社は、経営の安全性を示す固定長期適合率も自動的によい数字になります。
上の図と計算式の関係からもわかるように、コインの表から見るか、裏から見るかという違いに過ぎないためです。
つまり、BSの左右の流動と固定を分ける線を上から見れば流動比率、下から見れば固定長期適合率になります。
BSの左側の流動と固定を分ける線が下の方にあって、BSの右側の流動と固定を分ける線が上の方にあればあるほど、金払いも良いし経営の安全性も良いと言えます。

③「自己資本比率」
自己資本比率は、自己資本÷総資本で求められます。
自己資本比率が高い会社は、安全性が高いと言えます。

以上の3つの経営の安全性指標は、上の図の3つの矢印の位置関係を見るだけでザックリとつかむことができます。


4.図解分析の方法

1社1期分の図解分析の方法を、以下に箇条書きで整理します。

① BSの右側を見て、有利子負債と利益剰余金をチェックする
    ↓
② BSの全体図からその会社の安全性を読み解く
    ↓
③ BSとPLを結んだ線から総資本回転率を把握する
    ↓
④ PLの図から利益率を把握する

図解分析を同業他社比較と期間比較と併せてて行えば、会計の専門家でない人でもかなりの財務分析ができるようになると著者はいいます。

この4つのステップで気なるところを見つけてから、細かい財務諸表に入っていけば、アレルギーなく、むしろ興味を持って財務分析ができるようになりそうです。

CSのプラスとマイナスの8つのパターン説明については割愛しますが、営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローの各々がプラスかマイナスかもチェックすることで、会社の具体的な活動や、経営者の意思がより具体的に見えてきます。



本書では、実例分析にも多くのページが割かれており、上記で簡単にまとめた「図解分析法」の威力を確かめることができます。

財務諸表を視覚的に理解し、財務分析のレベルアップを図りたい方に、本書は非常におススメです。

本書のシリーズ本も大変勉強になる内容でした↓

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