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勝ってる投資家はみんな知っているチャート分析

今回はマネックス証券の福島理さんの著書「勝ってる投資家はみんな知っているチャート分析」をご紹介します。

株価チャート分析を基本からわかりやすく解説した良書であり、各章のイントロには漫画も織り混ぜ、とても読みやすい構成です。

テクニカル指標の実践的な使用方法についても一歩踏み込んだ解説がされており、大変勉強になりました。

本書の構成は下記のとおりです。

Part 1 過去の高値と安値
Part 2 ローソク足
Part 3 トレンドライン
Part 4 チャートパターン
Part 5 移動平均線
Part 6 MACD
Part 7 ボリンジャーバンド
Part 8 一目均衡表
Part 9 RSI
Part 10 フィボナッチ

中でも特に勉強になったと感じた項目は以下の4点についてです。

・MACD
・ボリンジャーバンド
・RSI
・MACDとRSIの併用

それぞれ簡単に見ていきます。


MACD

MACDはMoving Average Convergence Divergence(移動平均収束拡散法)の略で、「マックディー」と呼ばれます。
MACDはトレンド発生時の分析に優れたトレンド系のテクニカル指標です。

MACDは、以下の計算式によって算出される「MACD線」と「MACDシグナル線」の2本のラインによって形成されます。

・MACD線=短期EMA(指数平滑移動平均)ー長期EMA
・MACDシグナル線=MACD自体のEMA

期間設定は、基本的に
・短期EMA:12日
・長期EMA:26日
・MACDシグナル線:9日
に設定します。

売買シグナルの見つけ方はとてもシンプルです。
・買いポイント:ゼロ地点より下でMACD線がMACDシグナル線を下から上に突き抜ける「ゴールデンクロス」が出現したとき。
・売りポイント:ゼロ地点より上でMACD線がMACDシグナル線を上から下に突き抜ける「デッドクロス」が出現したとき。

また、MACD線とMACDシグナル線が交差する角度が大きいほど、より強いシグナル転換のサインと見ることができます。

株価とMACDの動きが逆方法になる「ダイバージェンス」を見つけることで、トレンドの終わりを見つけることも可能です。
ダイバージェンスとは、「株価は上がっているのにMACDの2本のラインは下がっている」、あるいは「株価が下がっているのにMACDの2本のラインは上がっている」という状況です。
MACDでこのダイバージェンスが発生しているときは、「足元の株価自体は上がっているが、上昇トレンド自体は終わりに近づいている」と判断することができます。
一方で、足元の株価が下がっているのにMACDが上昇しているダイバージェンスが発生している場合は、「下降トレンドが終わりに近づいている」と考えられ、株価反転のシグナルです。

MACDが精度が高い分析手法として機能するのは、値動きにはっきりとトレンドが出ているときです。
一方で、株価が一定の値幅で上下するようなレンジ相場や三角保ち合いといった状況下にあると有効度は下がります。
レンジ相場に強いオシレーター系のテクニカル指標(売られ過ぎ、買われ過ぎを判断する指標)であるRSIとの組み合わせが比較的相性がいいそうです。

本書のあとがきで述べているように、著者が最も信頼している指標はMACDだそうです。
特に買い場を探すときに活用しているそうです。
ただ、MACDを頼りに買った銘柄をMACDのシグナルで売ろうとした場合、売りのシグナルが遅く出てしまうため、どうしても利益が少なくなりがちになります。
より値幅を狙いたい場合、決済のタイミングについてはRSIなどのオシレーター系指標を利用するのもよいようです。


ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドは、移動平均線と標準偏差(σ)で構成されており、移動平均線を表す線とその上下に位置する値動きの幅を示す線(バンド)によって投資判断を行っていきます。

著者が信頼するボリンジャーバンドの順張り型での使い方が「ボラティリティ・ブレイクアウト」というものです。
相場の転換点を素早く捉え、上昇や下降トレンドに乗っていく指標です。
株価の保ち合いが続き、バンドの幅が狭くなってきたところで値動きに注目し、終値がプラス・マイナス2σをはみ出したら、素直にトレンドに追随し、エントリーします。
なお、バンドの幅の狭い時期が長いほど、その後にブレイクした際の値動きが大きくなると言われています。

また、トレンド発生中の押し目を狙う「バンドウォーク」を活用することもできます。
バンドウォークとは、プラス・マイナス2σのラインに沿ってローソク足が並ぶ状態のことです。
バンドウォークが発生し、上昇トレンドが継続しているときは、株価が一時的に下がり、中心線である移動平均線にタッチすることがあります。
このようなタイミングが押し目買いのポイントです。

さらに、レンジ相場では行き過ぎた上昇や下落を狙って逆張りに活用することも可能です。
ただし、ボリンジャーバンドの考案者であるジョン・A・ボリンジャー氏は、「逆張りでは使うべきではない」といっています。
逆張りでの使い方は、上値抵抗線や下値支持線となるプラス・マイナス2σへのタッチと、見た目にも簡単ですが、時としてダマしも多く現れるためです。
レンジ相場での活用に徹していても、保ち合い状況から相場が上限に大きく変動することも十分に考えられます。


RSI

RSIとはRelative Strength Index(相対力指数)の略です。

ある一定期間内の相場の動きが、相対的に「買われ過ぎ」なのか「売られ過ぎ」なのかを判断する、オシレーター系テクニカル指標の代表格です。
ボックス相場において特に有効です。

RSIを算出するための計算式は特に覚える必要はなく、買われ過ぎ、売られ好き、あるいはどちらでもないのかさえ読み取れればOKです。
・RS=(n日間の終わり値の上昇幅の平均)÷(n日間の終わり値の下落幅の平均)
・RSI=100-{100÷(RS+1)}

RSIは0%から100%の間で推移します。
0%に近づくほど相場は弱く、反対に100%に近いほど相場が強いと判断することが可能です。

見方は非常にシンプルで、買われ過ぎ状態(RSI≧70~80%)への突入が売りポイントとなり、反対に売られ過ぎ状態(RSI≦20~30%)への突入が買いポイントとなります。
RSIは、足元の値動きの状態とは逆の投資行動をとるための指標、つまり「逆張り」のための指標です。
ただし、80%を超えても株価の上昇が続いたり、20%を下回っても株価が下落する、いわゆる「ダマし」となるケースも少なくありません。

RSIでは80%を超え、株価が過熱状態と判断できるのに、実際の株価は上昇を続けている…。
これも現実の相場でよく見られるケースです。
こういう際にはテクニカル指標と株価が逆方向に動く現象である「ダイバージェンス」の活用が有効的です。
ダイバージェンスの発生は頻度が低いものの、それまでのトレンドが転換する有力なシグナルになります。
RSI上のダイバージェンス出現は、投資チャンスです。


MACDとRSIの併用

前述したRSIには弱点があります。
RSIは株価の値動きが横ばいだったり、一定のレンジ内で推移していたりするときの的中率は高い一方で、上下に強いトレンドが出ると的中率が下がる点です。
この場合、RSI上で売買のシグナルが出ていたとしても、トレンドの勢いが止まらず、そのまま上昇あるいは下降を続ける「ダマし」になることがあります。

このダマしによる誤った判断を避けるためには、RSIの弱点を補うテクニカル指標としてMACDを同時にチェックするといいといいます。

RSIがボックス相場に強く、急激なトレンド発生時に弱いのに対して、MACDはトレンド発生時の分析に優れ、ボックス相場では有効度が下がる指標だからです。
ボックス相場時はRSI、強いトレンドが発生しているときにはMACDを活用して売買タイミングを見極めることで、どのような相場のときにも有効度の高い売買シグナルを活用できるため、トレードの幅が広がります。

RSIとMACDの併用は、互いの弱点を補い合うだけではありません。
この2つの指標上で同時に買いシグナルが出現することもあります。
ひとつの指標では有効度が低くても、トレンド系のテクニカル指標とオシレーター系のテクニカル指標でほぼ同時に買いシグナル出現となれば、的中率はぐっと上がります。

一方で、かなり狭いレンジ内での値動きのときなど、この2つのテクニカル指標では横ばい相場にはうまく対応できないこともあります。
こういうケースでは、無理に売買する必要はありません。
テクニカル分析による売買では、あいまいなシグナルでトレードする必要はありません。
「休むも相場」です。
明確な買い・売りのシグナルが出現したときだけトレードすればよいのです。


以上、本書の一部のみを簡単にご紹介しました。

正直なところ、表紙を見たときははもっと初歩的なありきたりな内容の本かと思いましたが、想像以上に"使える”内容が盛りだくさんでした。


本書を読み、テクニカル分析の有効性を再確認し、投資パフォーマンスを上げていきましょう!

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