「くっ、この状況だ!あいつならどうする。考えるんだ」

みたいなセリフを、格闘インフレ系漫画ではよく見かける。

最近のものでいえば、「僕のヒーローアカデミア」の緑谷出久だろう。窮地に陥った時彼はつぶやく。

「オールマイトならどうする?」

彼にとってのヒーロであり師匠でもある。ヒーローとしての「個性」である「ワン・フォー・オール」をオールマイトから継承した弟子として「僕のヒーローアカデミア」は成長の物語として描かれている。オールマイトは彼にとってコーチでもあり道を示してきた。

さて最近、読了した本に「1兆ドルコーチ」がある。

これは、アップルのスティーブ・ジョブズの親友でありコーチであり、Google創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンや元CEOのエリック・シュミットのコーチでもあったビル・キャンベルの物語である。

惜しくも2016年に亡くなってしまった彼であるが、黒子に徹していたため表舞台に立つことが無かった。2013年のスティーブ・ジョブズの追悼イベントでコーチとして紹介される彼が数少なく表舞台にいる残っている映像であるという。多くのシリコン・バレーの著名人の書く本の謝辞に謎の男としてビル・キャンベルの名前が載っているのを見たことがあるかもしれない。

彼にコーチングを受けてきたシリコン・バレーの経営者達は、既に亡くなってしまったため、彼に頼ることは出来ない。今の多くのシリコン・バレーの経営陣達は容易でない問題が出てきた時に考えるのだ。

「ビルならこういうときにどうする?」

長い時間をかけて彼が会社に持ち込んだものは何か。一言で言うならば安心感である。「1兆ドルコーチ」には、Googleの社内プロジェクト アリストテレスが結論づけた「心理的安全性」がどうやって生まれてきたのかを垣間見ることが出来る。

キーワードは、

「プロダクト」、「チーム」、「愛」

である。「1兆ドルコーチ」に関する書評は別で書こうと思う。この本に載っている彼はスーパーマンでは無いにせよ、稀有な才能を持ち合わせている。人の緊張を読み取れる観察力である。それは、表情、言葉、文面など様々なところから読み取れるようである。

では彼のコーチングは才能によるものなのかと考えるとそれは違うと言える。彼は後天的にそれを会得していると言えるし、彼が行ってきたことはGiver(与えるもの)でありIntegrity(誠実さ)を合わせもつものであった。

与えることに意味があるのだ。

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