ドキュメンタリー的傑作 AV女優 永沢光雄



「古典」と聞くと、古い書籍のことを思い出すことが多いと思う。枕草子や源氏物語といった学校の教科書に載っているようなものも確かに「古典」ではある。インターネットで古典の意味を調べると下記のようなものが出てくる。

1. 古い時代に書かれた書物。当代・現代からみて、古い時代に属する書物。「鴎外や漱石も若者にとっては古典なのである」
2. 学問・芸術のある分野において、歴史的価値をもつとともに、後世の人の教養に資すると考えられるもの。多く、著述作品についていう。「国富論は経済学における古典である」
3. 芸能の世界で、近代に興った流派に対し、古い伝統に根ざしたもの。「古典舞踊」
4. 古くからの定め。古代の儀式や法式。

https://kotobank.jp/word/%E5%8F%A4%E5%85%B8-502802

また古典の英語にあたるclassicにも上記のような意味もある。英語のclassicには、『《スポーツ》クラシック、伝統の一戦◆リーグの創設当初から長く続いている対戦カード、または名物カードなど(https://eow.alc.co.jp/search?q=classic&ref=sa)』も含まれる。World Baseball Classicのclassicは上記の意味である。

さて、上記の2にあたる古典は時間が経たなくても古典たることがある。表題のAV女優こそ、日本人なら一度は読むべきドキュメンタリーである。著者の永沢光雄氏がひとりひとりインタビューしたこの作品には、決して表に出てこない彼女らの素顔が見えてくる。現代の事情とは異なるが、それでもその時代の風俗を見る事ができる稀有な一冊となっている。インターネットが普及していない時代のサブカルチャーの姿の一部を感じることが出来るだろう。

なぜ彼女らはカメラの前で脱ぐことになったのか。そこにはひとりひとりのドラマがある。それを永沢光雄氏が、彼独特の目線で紡いでいく。昭和の時代がどんな空気感だったのかを知ることも出来る。今同じようなドキュメンタリーを作るとしたら、誰が適切なインタビュワーなのだろうか。アングラに精通している人々はいるが社会が変わってきて、人も変わってきた。その時を切り取ったこの作品には色んな価値があると私は思う。しかしながら、アダルトビデオをよく思わない人がいることで、この本に対する価値が低くなっていると思われる。私はこの本はドキュメンタリーの古典だと確信している。

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