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新しい章

「卒業が確定したよ」。
昨日、仕事中に届いた長男からの淡泊なLINEメッセージにしばらく見入ってしまった。

中学の頃から準備を始め、何度目かの試験でクリアして入学が決まった。イギリスのチームへ移籍する浦和レッズ阿部勇樹選手と一緒の空港ロビーで長男を見送ったのは、2010年の8月だった。

当時、ふたつ年下の長女は、ダンスに夢中の高校生。
新学期の始業式前夜、茶髪を隠すためのヘアスプレーを買いに自転車で走っていたところを警官に補導され、そのあとオレの車に乗せて深夜営業のドラッグストアへ行ったことがあった。

あれから丸5年経った。
社会人2年目の長女はこの8月に都内で一人暮らしを始めるという。順調に行けば長男の経済的な自立も遠くないはずだ。

まだまだいろいろあるだろう。子供はいくつになっても子供だから。

それでも章扉を捲る時はきた。
50代からの章はオレと妻の二人称のストーリー。新しい章は新しいデザインで待っているに違いない。

事実、最近になって、やりたいことがやたらと湧いてくる。月日(つきひ)のスピード感は増し、10年前とは格段の差だ。取捨選択を肝に銘じ、失うことや諦めることにぐずぐずしていられない。

長男のLINE送った「おめでとう」のメッセージは、自分自身につぶやいたように見える。

※2015年7月

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