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ふと書き出した旅の思い出2

短い滞在のゴールドコーストを堪能しようと、午前中はサーフボードで波遊び、昼食後に小型バイクを借りた。
名もなき隣町にでも行ってみようと走り出したが、行けども行けども次の街が現れず、挙句大雨にやられて引き返した。
「オーストラリアは広いなあ」と実感したのだった。

薄暗いドラッグストアの店内に、獣(けもの)の骨がたくさんぶら下がっていた。煎じて調合するらしい。
ヨハネスブルグのダウンタウンでは黒人しか見かけなかった。アパルトヘイト撤廃から10数年、にわか旅行者が気を休めることができるのは外国人向けのホテルやレストランぐらいなのだろう。

ブルース・スプリングスティーンの帰宅をキャッチしたくて、ビバリーヒルズにある彼の自宅(と思われる)玄関前でひたすら待った。
外塀の隙間から覗いたら、芝生に卓球台が置いてあって「あれは“ボス”の使用人が遊ぶのかな」。
イーグルスのジャケットデザインで有名なホテルThe Beverly Hillsで記念にマッチを拝借して高級住宅地から退散した。

真冬のリバプールで梯子酒。2軒目のテキーラバーは、誰も長居しそうもない年季の入った場末の小さな店。カウンターの向こうの壁にずらっと並んだやつから一杯頼んで、グィッとやる。親指の付け根に付けた塩を舐める。体を火照らして、次の店に向かった。

オーストリア・チロル地方の、地名が思い出せない。確かインスブルックから路面電車で行った。12月だった。
夜遅く到着した村の宿泊案内板の空室ランプを確認して宿を訪ねる。リュックを背負ったアジア人の身なりに宿の主人の顔が曇った。
「部屋はいっぱいだよ」。
キュキュと雪道を踏みしめる音、窓から覗く暖かくて楽しげなオレンジ色。泊めてくれた宿は何軒目だったかな。

便の悪いところだから、ローマ帝国の都市遺跡エフェソス(トルコ)は観光バスで訪れる人が多い。
拠点となるセルチュクという小さな村に早朝着き、数キロ先の丘の上にある遺跡へ向かって歩いていた。
澄んだ青空。2000年以上前から変わらない空が今もこの村に続いている。

そう、世界中に空が続いている。

※2016年2月

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