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サイドに振られたときにどこに返すのが良いか?

こんにちは、トモヒトです。

今回は、サイドに振られたときに、どこへ返すのがよいのかを、物理的に考えてみます。
ここでは、次の2点に焦点を当てます。

  1. ショット到達時間とリカバリー移動距離

  2. 相手の返球可能範囲


前提条件

想定シチュエーション

今回は、次のようなシチュエーションを想定して話を進めていきます。

  • 相手が角度のついたショットを打ち、コート外へ追い出される

  • 自分はシングルスサイドラインから横へ4m、ベースライン後方1mの位置でショットを返す

  • このとき、どのコースへ返すのが効果的か?

比較対象のショットコース

今回は、以下の7コースを比較します。

  1. short cross
    クロスコートで、シングルスサイドラインとサービスラインの交点付近に落下するショット

  2. middle cross
    クロスコートで、シングルスサイドライン際かつサービスラインとベースラインの中間に落下するショット

  3. deep cross
    クロスコートで、シングルスサイドラインとベースラインの交点付近に落下するショット

  4. half cross
    クロスコートで、ベースライン際かつシングルスサイドラインとセンターマークの中間に落下するショット

  5. center
    センターマーク付近に落下するショット

  6. half straight
    ストレートコートで、ベースライン際かつシングルスサイドラインとセンターマークの中間に落下するショット

  7. deep straight
    ストレートコートで、シングルスサイドラインとベースラインの交点付近に落下するショット

ショットコースのイメージ図


1.ショット到達時間とリカバリー移動距離

まずは、ショット到達時間とリカバリー移動距離について考えてみます。

コース別ショット到達時間

返球の条件を以下のように設定し、コース別ショット到達時間を算出しました。

  • ショットスピードは、110~140km/hの5km/h刻み

  • 回転量は1200~3000回転/mの50回転/m刻み

  • ショットの投射角度は5~20度の0.5度刻み

  • 打点の高さは0.6m

  • 横1m×縦2mの長方形をターゲットエリアと定義し、エリア内にバウンドしたもののみを有効とする

  • バウンド位置からy軸方向(サイドラインと平行)に1m進むまでの時間を、ショット到達時間とみなす

以下、ショット到達時間の算出結果です。

コース別のショット到達時間
  • short cross    :0.865~0.988s(中央値0.9650s)

  • middle cross :0.863~1.120s(中央値0.9630s)

  • deep cross    :0.917~1.210s(中央値1.0590s)

  • half cross      :0.863~1.120s(中央値1.0085s)

  • center           :0.859~1.113s(中央値0.9570s)

  • half straight  :0.853~1.110s(中央値0.9540s)

  • deep straight:0.874~1.065s(中央値0.9560s)

コース別の合理的待機位置とリカバリー移動距離

次に、リカバリー移動距離を求めるために合理的待機位置を算出します。

  • 相手のショットスピードは、130~160km/hで5km/h刻み(short crossのみ120~160km/h)

  • 回転量は1200~3000回転/mの50回転/m刻み

  • ショットの投射角度は5~20度の0.5度刻み

  • 打点の高さは0.6m

  • ヒッティングポジションは、各コースの到達時間が中央値と等しいデータに絞り、到達地点の中央値を算出して使用する
    short cross:x=8.152, y=20.225
    middle cross:x=8.124, y=22.247
    deep cross:x=7.999, y=24.616
    half cross:x=6.461, y=24.408
    center:x=4.153, y=23.814
    half straight:x=2.090, y=24.385
    deep straight:x=0.258, y=22.933

  • 合理的待機位置はベースライン後方1mのライン上にあるものとする

上記の条件をもとに、以下で返球コースごとの合理的待機位置とリカバリー移動距離、必要フットワークスピードを見てみます。
必要フットワークスピードに関しては、スタートまでのラグを0.1sと仮定して、次の計算式で算出します。

$$ 必要フットワークスピード = \frac {リカバリー移動距離} {スタートまでのラグ + ショット到達時間の中央値}$$

short cross

合理的待機位置(short cross)

short cross返球時のリカバリー移動距離は6.955mとなります。
必要フットワークスピードは6.531m/sです。

middle cross

合理的待機位置(middle cross)

middle cross返球時のリカバリー移動距離は6.862mとなります。
必要フットワークスピードは6.455m/sです。

deep cross

合理的待機位置(deep cross)

deep cross返球時のリカバリー移動距離は6.94mとなります。
必要フットワークスピードは5.988m/sです。

half cross

合理的待機位置(half cross)

half cross返球時のリカバリー移動距離は7.639mとなります。
必要フットワークスピードは6.891m/sです。

center

合理的待機位置(center)

center返球時のリカバリー移動距離は8.11mとなります。
必要フットワークスピードは7.673m/sです。

half straight

合理的待機位置(half straight)

half straight返球時のリカバリー移動距離は8.579mとなります。
必要フットワークスピードは8.139m/sです。

deep straight

合理的待機位置(deep straight)

deep straight返球時のリカバリー移動距離は9.261mとなります。
必要フットワークスピードは8.770m/sです。

リカバリーの観点からみた返球コース

上の結果をもとに、返球コースについて考えてみます。

リカバリー移動距離を基準に考えると、

  1. middle cross(6.862m)

  2. deep cross(6.94m)

  3. short cross(6.955m)

  4. half cross(7.639m)

  5. center(8.11m)

  6. half straight(8.579m)

  7. deep straight(9.261m)

必要フットワークスピードが遅い順に並べると、

  1. deep cross(5.988m/s)

  2. middle cross(6.455m/s)

  3. short cross(6.531m/s)

  4. half cross(6.891m/s)

  5. center(7.673m/s)

  6. half straight(8.139m/s)

  7. deep straight(8.77m/s)

となります。
この結果をみると、リカバリーの観点からはクロス=>センター=>ストレートの順に良いと考えられます。

2.相手の返球可能範囲

short cross

0.67s: px=5.275m, fl straight=5.279m, fl cross=6.351m

deep cross        : 0.67s   | 3.193m | 5.73m/s
deep straight    : 0.686s | 5.279m | 9.833m/s
middle cross     : 0.67s   | 4.298m | 8.081m/s
middle straight : 0.795s | 5.87m   | 9.025m/s
short cross        : 0.795s | 6.351m | 9.834m/s

middle cross

0.73s: px=5.368m, fl straight=5.373m, fl cross=6.09m

deep cross        : 0.73s   | 3.053m | 4.817m/s
deep straight    : 0.73s   | 5.374m | 9.196m/s
middle cross     : 0.73s   | 4.136m | 6.86m/s
middle straight : 0.792s | 5.792m | 8.939m/s
short cross        : 0.808s | 6.09m   | 9.194m/s

deep cross

0.82s: px=5.29m, fl straight=5.541m, fl cross=5.924m

deep cross        : 0.82s   | 3.125m | 4.234m/s
deep straight    : 0.82s   | 5.3m     | 7.742m/s
middle cross     : 0.82s   | 4.114m | 5.829m/s
middle straight : 0.82s   | 5.541m | 8.131m/s
short cross        : 0.867s | 5.924m | 8.132m/s

half cross

0.8s: px=4.591m, fl straight=6.561m, fl cross=6.281m

deep cross        : 0.8s     | 3.799m | 5.498m/s
deep straight    : 0.8s     | 4.66m   | 6.933m/s
middle cross     : 0.8s     | 4.618m | 6.863m/s
middle straight : 0.8s     | 5.007m | 7.512m/s
short cross        : 0.862s | 6.281m | 8.733m/s
short straight    : 0.894s | 6.56m   | 8.732m/s

center

0.8s: px=4.12m, fl straight=4.802m, fl cross=4.802m

deep cross        : 0.8s | 4.286m | 6.31m/s
deep straight    : 0.8s | 4.295m | 6.325m/s
middle cross     : 0.8s | 4.802m | 7.17m/s
middle straight : 0.8s | 4.801m | 7.168m/s

half straight

0.8s: px=4.579m, fl straight=6.511m, fl cross=6.372m

deep cross        : 0.8s     | 3.817m | 5.528m/s
deep straight    : 0.8s     | 4.66m   | 6.933m/s
middle cross     : 0.8s     | 4.587m | 6.812m/s
middle straight : 0.8s     | 5.029m | 7.548m/s
short cross        : 0.878s | 6.372m | 8.661m/s
short straight    : 0.894s | 6.511m | 8.661m/s

deep straight

0.73s: px=5.261m, fl straight=5.67m, fl cross=6.257m

deep cross        : 0.73s   | 3.138m | 4.977m/s
deep straight    : 0.73s   | 5.276m | 9.011m/s
middle cross     : 0.73s   | 4.243m | 7.062m/s
middle straight : 0.746s | 5.67m   | 9.469m/s
short cross        : 0.808s | 6.257m | 9.469m/s

相手の返球可能範囲からみた返球コース

上の結果をもとに、返球コースについて考えてみます。

最大移動距離の観点からみると、

  1. center(4.802m)

  2. deep cross(5.924m)

  3. middle cross(6.09m)

  4. deep straight(6.257m)

  5. short cross(6.351m)

  6. half straight(6.511m)

  7. half cross(6.561m)

最大フットワークスピードの観点からみると、

  1. center(7.17m/s)

  2. deep cross(8.132m/s)

  3. half straight(8.661m/s)

  4. half cross(8.733m/s)

  5. middle cross(9.196m/s)

  6. deep straight(9.469m/s)

  7. short cross(9.834m/s)

となります。
この結果をみると、相手の返球可能範囲の観点からは、センター寄りのコースのほうが良いと考えられます。

まとめ

今回は、サイドに振られた際の返球コースについて、物理的に考えてきました。

リカバリーの観点からも、相手の返球可能範囲からも、返球コースとしてはセンター~クロスが妥当だと考えられます。
反対に、ストレートはリカバリー移動距離も長く、相手の返球可能範囲を狭めることもできないため、効果的な選択肢ではないです。

ただし、今回はフォアバックの観点を考慮していないため、フォアバックを考慮するとまた優先度が変わってくると考えられます。

最後までお読みいただきありがとうございました。
ご意見ご感想あれば、コメントにお願いします。

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