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シュワルツマン選手のプレーから身長の低いプレーヤーの勝ち方を考える①ーサーブゲームー

高身長が多数を占めるトッププロの中で、170cmという身長の低さで結果を残しているディエゴ・シュワルツマン選手
活躍の理由を探ることで、身長の低いプレーヤーがどのすれば勝てるのか?を見つけることができるのではないかと考えました。

そこで、シュワルツマン選手の試合を様々な面から見ていき、身長の低いプレーヤーがどう戦うのが良いかについて考えていきます。
今回はサーブゲームがテーマです。

分析方法

分析対象の試合

今回は、2021年のATPツアーの試合のうち、以下の条件に当てはまる27試合を分析対象としました。

  • サーフェスがハードの試合

  • TennisTvで試合映像が入手できる試合

ラリー数の集計

試合の勝敗によって分けて集計し、それぞれのサーブゲームでラリー数を見ていきます。

ラリー数は、サーブを1ショット目とし、コート内に入った有効打のみをカウントします。
ただし、コードボールによってポイントが決まったラリーは除外します(コードボール後もラリーが続いた場合は集計対象)。

結果

サーブゲームでのラリー数の内訳は、以下のようになりました。

サーブゲームにおけるラリー数内訳
サーブゲームでのラリー数ごとの比率


結果から考える勝つために必要な要素

この結果から、身長の低いプレーヤーが勝つ上で必要な要素について考えていきます。

サーブゲームでのラリー数内訳

サーブゲームでのラリー数の内訳を勝ち試合と負け試合で比較した差は次のようになります。

ラリー数別内訳の差

特に差が大きいのは、1ショット目、2ショット目、6ショット目となっています。

まず、1・2ショット目ですが、これらはサーブ・リターンに関わる部分です。
1ショット目のポイントはサービスエースまたはリターンミスによるものです。
これらの全体のポイント数に対する割合は、以下のようになります。

won match serve 
リターンミス:19.63%
サービスエース:2.90%

lost  match serve 
リターンミス:13.62%
サービスエース:1.50%

比較として、シュワルツマン選手がリターン時のサービスエースとリターンミスの割合を見ていきます。

won match return
リターンミス:14.66%
サービスエース:7.45%

lost match return
リターンミス:18.08%
サービスエース:7.79%

リターンミスの割合はシュワルツマン選手と他の選手の間に大きな差がない一方で、
サービスエースの割合は2〜3倍程度の差があります。

原因の1つとして、サーブスピードが考えられます。
シュワルツマン選手の1stサーブの平均スピードが時速100数マイル(約160〜170km)なのに対し、例えばジョコビッチ選手では110マイル(約175km)前後、メドベージェフ選手で120マイル(約190km)前後です。
サーブが遅ければ同じコースでも触られる可能性が高くなります。

スピードの不足分は、コントロールや回転で補い、サーブのみのポイント(サービスエース+リターンミス)を2割程度獲得を目標とするのが良いかと思います。


6ショット目に関しては、リターン側が6球目にウィナーを決めた、またはサーバー側が7球目をミスしたのいずれかとなります。
アンフォーストエラーを除けば、2・4球目でリターン側にラリーの主導権を奪われたと考えられます。
5ショット以上ラリーが続く場合でも、サーブと次のショットで少しでもサーブの優位は保つ必要があると考えます。

カテゴリー別内訳

また、ラリー数ごとに3つのカテゴリーに分けると、次のようになります。
(カテゴリーの分け方は、Craig O’Shannessy氏のNum3ersを参照)

0〜4ショットの割合
won match 56.96% (W 37.41%/L 19.55% 差+17.86%)
lost match 52.03% (W 29.83%/L 22.2% 差+7.63%)

5〜8ショットの割合
won match 22.12% (W 15.04%/L 7.08% 差+7.96%)
lost match 25.34% (W 13.89%/L 11.45% 差+2.44%)

9ショット以上の割合
won match
20.92% (W 13.52%/L 7.40% 差+6.12%)
lost match 22.62% (W 10.49%/L 12.13% 差−1.64%)

0〜4ショットのラリーが5割以上を占めており、このカテゴリーでのポイント獲得率は勝敗に大きく関わってくると考えられます。
サービスエースが取りにくい分、「サーブで崩して次で決める」3球目攻撃が、このカテゴリーでの得点源になります。

5〜8ショットは、0〜4ショットと比べるとサーブの影響が小さくなっており、ラリーの組み立てが鍵となります。

9ショット以上のラリーは2割強ありますが、他のカテゴリーと比べるとアドバンテージが取りにくいことが分かります。
できるだけポイント序盤で終わらせるほうが有利に進められると考えられます。

3つのカテゴリー別に見ると、身長の低いシュワルツマン選手でもそこまでロングラリーをしているわけではないと言えます。
「サーブが強くない分、ストロークを強化する」こと自体はアリだと思いますが、それはミスしない安定性ではなく「ラリーからの展開力」を伸ばすことでないと試合での勝利には繋がらない可能性が高いです。
また、サーブスピードに頼らず、ボールの回転やコントロールでサーブ力を補うことは必要です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
ご意見等ありましたら、コメントにお願いします。

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