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世界最速プレーヤー相手にエースを取る方法を考える⑨~センター寄り・ベースライン内1m~

こんにちは、トモヒトです。

今回も、相手の想定としてジョコビッチ選手を取り上げます。



前提条件

ここで、いくつかの前提条件を定義しておきます。

ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間

ジョコビッチ選手がヒッティングポジションへ移動する時間を、次の式で定義します。

$$ t= 0.25 + (sprint  length / 10) $$

この式は、以下を想定したものです。

  • 反応時間=0.25秒

  • スプリント時間=スプリント距離 / 10〔m/s〕

ショットの条件

  • ショットの落下点=想定よりも0.5m以上短い位置でバウンドした場合はカウントしない

  • ネットの上0.5m以上を通過したものをカウントする

エースの条件

エースの条件は、相手がベースライン後方2mにポジショニングしていると仮定し、ベースライン後方2mのショットの到達時間がフットワークの時間を下回った場合とします。


結果

それでは、結果についてみていきます。

このあと出てくるshot widthは、以下のように値を定義しています。

  • ストレート:ネットを挟んで反対側のバウンド地点を0とし、シングルスサイドライン方向をマイナス、センター方向をプラス

  • クロス:シングルスサイドラインからの距離

shot widthの定義

今回は、シングルスサイドラインから4m内側・かつベースライン内1mからのショットを考えてみます。
これは、センター付近で、ベースラインの1m内側に当たります。

【ストレート方向】

ショット到達時間(ストレート方向/打点=0.6m)
ショット到達時間(ストレート方向/打点=1.5m)

このケースでの合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.050mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。

  • shot width=-4.0: 0.7016s (0.25 + (4.516 / 10))

  • shot width=-3.5: 0.6472s (0.25 + (3.972 / 10))

  • shot width=-3.0: 0.5928s (0.25 + (3.428 / 10))

  • shot width=-2.5: 0.5384s (0.25 + (2.884 / 10))

  • shot width=-2.0: 0.4840s (0.25 + (2.340 / 10))

これらの結果から、エースになる最低速度は次のようになります。

  • shot width=-4.0 => 打点=0.6m: 160km/h / 打点=1.5m: 160km/h

また、-4.0middleはサービスラインとベースラインの中間、-4.0shortはサービスライン付近と、やや角度のついたショットとなっています。
これらについてshot width=-4.0のときのフットワーク所要時間を当てはめると、-4.0middleでは140km/h、-4.0shortでは125km/hでエースが奪える計算となります。

反対に、shot width=-3.5以下(シングルスサイドラインから0.5m内側のエリア)のショットでエースを取るためには、相手が何m以上離れた位置にいればいいのかを見ていきます。
センターマークを0mとすると、ショットスピード別に次のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 5.385m / 打点=1.5m: 5.255m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 4.225m / 打点=1.5m: 4.135m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 3.295m / 打点=1.5m: 3.195m

  • 130km/h => 打点=0.6m: 2.505m / 打点=1.5m: 2.445m

  • 140km/h => 打点=0.6m: 1.825m / 打点=1.5m: 1.795m

  • 150km/h => 打点=0.6m: 1.255m / 打点=1.5m: 1.285m

  • 160km/h => 打点=0.6m: 0.795m / 打点=1.5m: 0.775m

  • 170km/h => 打点=0.6m: 0.345m / 打点=1.5m: 0.375m

この結果をみると、140km/h以下のストロークでエースを取るには、ヒッティング時の相手のポジションをB・Cよりも外側に追い出す必要があると考えることができます(下図黒丸)。
一方、150km/h以上であれば、B,C内であっても、センターマークとの距離とショットスピードの兼ね合いによっては、エースを取ることができます(下図青丸)。

ショット到達時間(ストレート方向)

150km/hのショットであっても、B,Cラインの半分よりも外側に相手がいる必要があります。


【クロス方向】

次は、クロス方向へのショットを深さ別でみてみます。

ショートクロス

ショット到達時間(ショートクロス/打点=0.6m)

仮に、センターマークから0.050m横にずれた合理的待機位置から、ボールの軌道に対して最短距離(直角)に動くと仮定します。
この条件の場合の、エースとなるボールスピードは以下のようになります。

  • shot width=0.0: 95km/h
    (移動距離=5.813m/フットワーク所要時間=0.8313s)

  • shot width=0.5: 105km/h
    (移動距離=5.139m/フットワーク所要時間=0.7639s)

ミドルクロス

ショット到達時間(ミドルクロス/打点=0.6m)
ショット到達時間(ミドルクロス/打点=1.5m)

合理的待機位置を、センターマークからクロス側へ0.050mずれた位置とします。
これをもとに、ジョコビッチ選手のフットワーク所要時間を算出します。

  • shot width=0.0: 0.6796s (0.25 + 4.296 / 10)

  • shot width=0.5: 0.6177s (0.25 + 3.677  / 10)

  • shot width=1.0: 0.5559s (0.25 + 3.059 / 10)

  • shot width=1.5: 0.4940s (0.25 + 2.440 / 10)

以上から、各バウンド地点でエースになる最低速度は、次のようになります。

  • shot width=0.0: 打点=0.6m: 135km/h / 打点=1.5m: 135km/h

  • shot width=0.5: 打点=0.6m: 150km/h / 打点=1.5m: 150km/h

反対に、このポジションからミドルクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
センターマークを0mとし、サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 2.232m / 打点=1.5m: 2.122m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 1.322m / 打点=1.5m: 1.252m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 0.592m / 打点=1.5m: 0.502m

  • 130km/h => 打点=0.6m: -0.078m / 打点=1.5m: -0.058m

  • 140km/h => 打点=0.6m: -0.528m / 打点=1.5m: -0.558m

  • 150km/h => 打点=0.6m: -0.908m / 打点=1.5m: -1.008m

  • 160km/h => 打点=0.6m: -1.088m / 打点=1.5m: -1.398m

  • 170km/h => 打点=0.6m: -m / 打点=1.5m: -1.738m

この結果をみると、エースになる条件を次のように考えることができます。

  • ショットスピードが100km/h以下
    =>自分がストロークを打つ時点でB,Cより外側にいる必要がある(下図黒丸)

  • ショットスピードが110km/h以上120km/h以下
    =>B,Cにいてもセンターマークを越えずにストレート側の半面にいれば、エースになる可能性がある(下図青丸)

  • ショットスピードが130km/h以上
    =>センターマークを越えていても、ショットのコースがよければエースになる可能性がある(下図赤丸)

エースの取り方(ミドルクロス)

深いクロス

ショット到達時間(深いクロス/打点=0.6m)
ショット到達時間(深いクロス/打点=1.5m)

深いクロスの場合、一番相手との距離の遠いshot width=0のときでも4.065m(フットワーク所要時間=0.6565s)となります。
よって、相手に合理的待機位置に構えられると、深いクロスでエースを奪うには165km/h以上のショットスピードが必要になります。

もし、深いクロスでエースを取ろうすれば、センターマークからどのくらい離れていればいいのでしょうか?
サイドラインから0.5m内側のエリアのショットで考えると、下のようになります。

  • 100km/h => 打点=0.6m: 4.437m / 打点=1.5m: 4.357m

  • 110km/h => 打点=0.6m: 3.347m / 打点=1.5m: 3.257m

  • 120km/h => 打点=0.6m: 2.447m / 打点=1.5m: 2.457m

  • 130km/h => 打点=0.6m: 1.677m / 打点=1.5m: 1.707m

  • 140km/h => 打点=0.6m: 1.117m / 打点=1.5m: 1.097m

  • 150km/h => 打点=0.6m: 0.587m / 打点=1.5m: 0.577m

  • 160km/h => 打点=0.6m: 0.127m / 打点=1.5m: 0.107m

  • 170km/h => 打点=0.6m: -0.253m / 打点=1.5m: -0.283m

この結果をみると、次のように考えることができるかと思います。

  • ショットスピードが120km/h以下
    =>エースを奪うには、B, Cの外側に相手が残っている必要がある(下図黒丸)

  • ショットスピードが130km/h以上160km/h以下
    =>B, Cにいても、ストレート側の半面に残っていれば、エースになる可能性がある(下図青丸)

  • ショットスピードが170km/h以上
    =>センターマークを越えていても、ショットのコースがよければエースになる可能性がある(下図赤丸)

エースの取り方(深いクロス)


まとめ

今回は、センター寄りでベースライン内1mからのエースの取り方について考えてきました。

センター付近からの場合、ベースラインより後方ではエースを奪うのは難易度が高いですが、ベースライン内に入ることができれば難易度が下がります。
ベースライン内で打つことができるなら、センター付近からでもエースを狙いに行くのは、選択肢として有効と考えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。
ご意見ご感想あれば、コメントにお願いします。


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