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シュワルツマン選手のプレーから身長の低いプレーヤーの勝ち方を考える②ーリターンゲームー

高身長が多数を占めるトッププロの中で、170cmという身長の低さで結果を残しているディエゴ・シュワルツマン選手
活躍の理由を探ることで、身長の低いプレーヤーがどのすれば勝てるのか?を見つけることができるのではないかと考えました。

そこで、シュワルツマン選手の試合を様々な面から見ていき、身長の低いプレーヤーがどう戦うのが良いかについて考えていきます。

今回はリターンゲームがテーマです。
2021年のハードコートでのブレーク率は、32.3%で全体1位となっています。
シュワルツマン選手のリターンゲームを分析すれば、サーブブレークのヒントになるかと思います。


サーブゲーム編はこちらから。

分析方法

分析対象の試合

今回は、2021年のATPツアーの試合のうち、以下の条件に当てはまる27試合を分析対象としました。

  • サーフェスがハードの試合

  • TennisTvで試合映像が入手できる試合

ラリー数の集計

試合の勝敗によって分けて集計し、それぞれのリターンゲームでラリー数を見ていきます。

ラリー数は、サーブを1ショット目とし、コート内に入った有効打のみをカウントします。
ただし、コードボールによってポイントが決まったラリーは除外します(コードボール後もラリーが続いた場合は集計対象)。

結果

サーブゲームでのラリー数の内訳は、以下のようになりました。

リターンゲームにおけるラリー数内訳
リターンゲームでのラリー数ごとの比率

結果から考える勝つために必要な要素

この結果から、身長の低いプレーヤーが勝つ上で必要な要素について考えていきます。

サーブゲームでのラリー数内訳

サーブゲームでのラリー数の内訳を勝ち試合と負け試合で比較した差は次のようになります。

ラリー数別内訳の差

特に差が大きいのは、1ショット目、2ショット目、4ショット目となっています。

まず、1・2ショット目ですが、これらはサーブ・リターンに関わる部分です。

1ショット目のポイントは、サービスエースorリターンミスによるものです。
全体の中での割合は、次のようになっています。

won match return
リターンミス:14.66%
サービスエース:7.45%

lost match serve
リターンミス:18.08%
サービスエース:7.79%

これを見ると、リターンミスの割合が勝った試合の方が3%以上低くなっています。
ここから、リターンの返球率が上がると勝率が上がると考えられます。


2ショット目のポイントはリターンエースor3ショット目のミスによるものです。
これらの全体のポイント数に対する割合は、以下のようになります。

won match return 
3ショット目のミス:10.74%
リターンエース:0.55%

lost match serve 
3ショット目のミス:7.37%
リターンエース:0.83%

これを見ると、3ショット目のミスの比率が3%以上低くなっていることが分かります。
この数字から、試合に勝つために無理にリターンエースを狙う必要はないと言えます。
リターンで攻撃的すぎるとリターンミスのリスクが上がり、それが負けに繋がる可能性もあります。
まずはしっかり返し、サーブが甘いときのみ攻撃的に打つくらいがちょうど良さそうです。


続いて、4ショット目のポイントについて見ていきます。

won match return
ミス:7.05%
ウィナー:2.74%

lost match return
ミス:5.01%
ウィナー:1.81%

ここでは、勝った試合の方が、ミスは約2%、ウィナーは約1%高くなっています。
4ショット目は、リターン後の1球目に当たります。
4ショットというポイント序盤でポイントを決めるには、リターン技術が鍵となります。


カテゴリー別内訳

また、ラリー数ごとに3つのカテゴリーに分けると、次のようになります。

(カテゴリーの分け方は、Craig O’Shannessy氏のNum3ersを参照)

0〜4ショットの割合
won match 60.50% (W 25.63%/L 34.87% 差-9.24%)
lost match 55.91% (W 18.22%/L 37.69% 差-19.47%)

5〜8ショットの割合
won match 21.55% (W 10.50%/L 11.05% 差-0.55%)
lost match 24.34% (W 10.01%/L 14.33% 差-4.32%)

9ショット以上の割合
won match 17.95% (W 9.17%/L 8.78% 差+0.39%)
lost match 19.75% (W 8.48%/L 11.27% 差-2.79%)

全体としては、勝ち試合の9ショット以上のラリーを除いて、失点の方が多くなっていることが分かります。
これは、サーブ有利なことを考えると当然のようにも感じます。

また、ラリーが長くなるほど、獲得ポイントと失点の差が小さくなることも分かります。


カテゴリー別に見ると、0〜4ショットのラリーが6割程度占めています。
サーバーの優位が最も大きいエリアとは言え、ここでいかにポイントを落とさないかは重要です。
リターンとその後のショットを練習する重要性は、高いと言えます。


最後までお読みいただきありがとうございました。

ご意見等ありましたら、コメントにお願いします。

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