【神アナゴ】なぜ1%の穴子は99%の穴子の100倍美味いのか?【食べるべき場所 編】
「良き出会い」が思いのほか多いと、人生が豊かになる。
これは前世の私がユーカリの葉を噛みながら言い放ったコトバであります。
すみません。ウソです。
突然ですが、お寿司屋さんで出てくる穴子は、どんな食感をしていますか?
「ふわふわ」でしょうか。
「ざらざら」でしょうか。
おそらくほとんどの人が、これらの食感をイメージするかと思います。私もそう思っていました。
温かければ、ふんわり。
冷たければ、ざらざら。
どちらも美味しいは美味しいのですが、大きな感動はありません。
あのアナゴさんにお熱だった時期のある私でも、そういう穴子に対しては「わざわざ頼むほどでもないな」くらいの評価を下していました。
しかし、
生の穴子を調理したてのものと出会って(食べて)からというもの……。
「穴子がダントツ」
の評価のまま心変わりすることなく、殿堂入りして「05(あなご)」が永久欠番になりました。
私にとっては、鰻より穴子です。
穴子は鰻以上に美味いと思っています。
「絶妙なコリコリ食感と口の中で溶ける脂がマジで最高」です。
穴子本来の食感は「コリコリ」。
炊くとふわっとしますが、刺し身や、軽く焼いたもの、天ぷらの穴子は「コリコリ」しており、
食感、口当たりが極めて良いです。
たとえるなら、焼き鳥の「ぼんじり」。
あんなかんじです(似て非なるものですが)。
ちなみに、回らない寿司で20年修行した板前が「せっかくの生の穴子だから天ぷらにしよう、それが1番美味いから」と言っていたので、私は最初、(もちろんお金を払って)天ぷらにして食べました。
忘れられない味です。
ぜひ、また食べたいです。
今回は、「穴子がマジで美味すぎるのでぜひ食べてください」という話をさせて頂きます。
そんな穴子名誉会長。
なぜ(私主観の)表舞台に姿を表さなかったのか。
それは、
「仕込み(調理)が大変だから」
だと思います。
回転寿司を中心に2年で150店舗食べ歩いていた私は「穴子はどこで食っても同じ味だな」と思っていました。
おそらくホントに同じ(業者が加工した)穴子なんだろうな、と思っています(定かではありませんが)。
穴子の血中には(軽度の)食中毒を引き起こす、人間にとっての毒があります。
(ちなみに、その毒は熱に弱いため「加熱処理」をするのが穴子の一般的な食べ方とされています。しっかりと血抜き等の下処理をすれば生でも食べられます)
なので、技術のある人間がしっかりと時間をかけて仕込む必要があります。
ただ、それを客数の多い(1日500人程度)お寿司屋さんがお店で行うのは不可能に近いです。
お寿司屋さんの仕込みの量は尋常ではありません。
簡単に言うと一貫のネタを切るのにかける時間は1〜2秒、大きなシンク一杯の魚をすべてさばくのに30分、数百の小魚をさばくのに10〜20分、というような速さで仕込み作業を行わなければ終わらないくらいの量です。
多くのお店には、大量の穴子を仕込むだけの余力はありません。
したがって、お寿司屋さんでは業者が加工した穴子を使うことになります。
たま〜に高級スーパー等で加熱加工された切られていない1本のままの穴子を見かけますが、あんなかんじです。
そういうものに感動はありません。
「なんで鰻屋はいっぱいあるのに、穴子屋はほとんどないんだろう? 絶対流行るのに」
と、私はけっこう本気で思っています。
ちなみに銀座には穴子専門店があるらしく、ぐる○びさんでも熱烈プッシュされています。
わかる、わかるよ。
「穴子うめーーーーー!」
のテンションのまま書くと、そうなっちゃうのわかる。仕方ない。「マジ良いから! マジ良いからあああ!」と言いたくなりますもん。
http://r.gnavi.co.jp/sp/g-mag/entry/013224
(↑ちなみにこの記事です。良い記事)
書き手の方は、ホントに興奮して書いたのでしょうね。
わかる、わかるわかる。
私も穴子の素晴らしさを小鼻を広げてフンスカしながらお客様にお伝えしましたから。
どの調理法であっても、
これまでの穴子に対するイメージが崩壊して金ピカに輝く穴子が脳内をお花畑にするほど、「今まで誤解しててゴメン」感が出てきて「もう絶対に君のことを裏切らないから」的な気持ちになるはずです。
余談ですが、
そういう感動は「ほっけの刺身」でも味わえました。
「ほっけ」は寄生虫のリスクがとても高い(鮮度が劣化しやすいことも理由のひとつ)ので、基本的には生では食べないのですが、新鮮なものをきちんと処理すれば生のまま寿司にできます。
私が板前をしていた頃にお客様にご提供させて頂いたことがありまして、そのときに(もちろんお金を払って)食べたのですが、それはもう、絶品でした。
イメージとしては「あいなめ」をもっと脂っぽくして甘みが増した感じ。
「あいなめ」も寄生虫のリスクが高く、アニサキスがいる可能性がとても高いため、よほど新鮮でなければ刺身では食べません。
あ、
アニサキスについても触れておいたほうが良さそうですね。一時期話題になっていましたから。
アニサキスは、(基本的)に魚の内臓の中にいます。内臓のほうが美味しいからです。肉食獣も動物の内臓から食べますよね。そんなイメージです。
しかし内臓の鮮度が落ちると、アニサキスは内臓から身のほうに移動します。
なので、新鮮なものは身の部分にアニサキスがいる可能性が低くなります。
ちなみにアニサキスは、切れば死にます。
アジやイワシ、サンマといった「小さなアニサキスがいる可能性が高い小魚」に切れ込みが入っているのをよく見かけませんか?
あれはアニサキス対策のひとつです(飾り包丁の意味合いもありますが)。
小さい魚ほど、(板前が対処しにくい)小さなアニサキスがいる可能性が高いです。
アニサキスは、宿主を替えて生き延びます。
食物連鎖の頂点に近づくほど、アニサキスも大きく育ち、目に見えて大きいので対策も簡単になります。
なので、小さな魚ほど要注意。
主なアニサキス対策は、新鮮なうちに内臓を取り除く、切れ込みを入れる作業をする、そしてきちんと目視すること。
イカなんかは(イカにもいますよアニサキス、なかなかの確率で)、電球の明かりに透かしてアニサキスがいないかどうかを目で見て確認します(いればすぐにわかります)。
ここで最も大切なことをお伝えします。
生の魚は、よく噛んで食べてください。
特に小さな魚こそ、よく噛んで食べてください。
こういうことは現役の板前の口からは言えません。
「アニサキスがいる可能性があるので、よく噛んで(アニサキスを噛み切って)ください」だなんて、お客様に言えるはずがありませんから(そんなお客様の食欲を失わせる、また自分の仕事を否定するような発言を口にできるわけありませんよね)。
板前はアニサキスを最も恐れています。アナフィラキシーショックでお客様の命にかかわる危険性があるからです。なので、板前たちは真剣にアニサキス対策をしているはずです。
元板前の私が代弁します。
生の魚を食べるときは、よく噛んで食べてください。
お客様自身ができる、
最善のアニサキス対策であり、
魚の美味しさを味わうために、
必要なことでもあります。
よろしくお願いします。
さて話を戻します。
「ほっけ」も穴子のようなコリコリ感、加えて「上品な甘みのある脂」を味わえます。
私が鮮魚のほっけと出会ったのは、たったの一度だけ。
よほど鮮度のよい「ほっけ」を見つけたのでしょう。
お寿司屋さんで出会えることはそうないかもしれませんが、もしも奇跡的に出会えたときは、ぜひ食べてみてください。焼いてとびきり美味い魚は、生でもとびきり美味いです(寿司なら炙ったほうがいいです、脂が浮くので)。
もっと話を戻します。
穴子。穴子ですよ、主題。
穴子は食感を楽しめるお魚です。
それは穴子の稚魚も同じで、「のれそれ(泳いでいる姿がそう見えたのが名前の由来)」も食感を楽しめます。
稚魚系でいえば「白魚」が美味しい稚魚の筆頭でしょうが、私は「のれそれ」も同格級だと思っています。
平たい体をしているので冷麺のようにツルツルとした喉越しと、コリコリとした食感。
大変美味であります。
こちらもあまり出会えない寿司ネタ(軍艦ネタ)かと思いますが、出会えた際はぜひ食べてみてください。
美味いです。
穴子の醍醐味は、コリコリ食感。
それを味わえるのは、生の穴子(生のものを調理したてのものも)だけ。
大変残念に思いますが、お寿司屋さんの鰻や穴子はイマイチです(よね?)。
お寿司屋さんの鰻と、鰻屋さんの鰻。
どっちが美味しいですか?
鰻屋さんの鰻ですよね。
穴子も同じ。
穴子屋さんで食べるべきです。
食品によって、食べるべき場所はちがいます。
たとえば生のマグロなら、お寿司屋さんが1番美味いです。
アジだって、イワシだって、サンマだって、お寿司屋さんが1番美味いと思います。
それは、なぜか。
お寿司屋さんが「鮮度にこだわるお店」だからです。
魚を生で食べるなら、魚本来の旨味も然ることながら、味が劣化していない新鮮なものを食べてこそ、本来の美味しさを味わえます(寝かせたほうが美味い魚もいますが)。
お寿司屋さんが最も重要視しているのは「鮮度」です。
余談ですが、前述したイカだって、本当は活きているものが1番美味いんですよ。
冷凍したイカと生のイカにも、歴然たる差があります。
生(冷凍していない)の「マイカ(スルメイカ)」を食べたことはありますか?
甘みも、食感も、別物です。
でも、生のイカには寄生虫のリスクがあります。美味しいものを安心して提供するため、板前はしっかり時間と手間をかけて確認しているはずです。
それだけ、多くの魚の鮮度がもたらす美味しさは大きいのです。
したがって、鮮度が直接的に美味さにかかわる食材は、お寿司さんで食べるのがいいと思います。
しかし穴子や鰻のように仕込みの手間がかかり、「調理」に比重のかかる食材に関しては、大変残念ですが、お寿司屋さんは弱いです。
お寿司を食べるのが好きな人は、魚介類が好きな人だと思います。
「食材によって、食べるべき場所が違う」
これが、本エントリーで私が最もお伝えしたいことです。
私と美味い穴子との出会いはお寿司屋さんでしたが、それは例外中の例外。
生の穴子に会えたのはその1回きりだったので。
美味しいお魚を食べるためには、「食べるべき場所で食べること」も大切です。
穴子は、穴子屋さんで食べる。
そういう穴子を食べたことがない人は、きっと穴子に対するイメージが激変すると思います。
穴子専門店は思いのほかあるようなので、ぜひ行ってみてください。
穴子は鰻の代替品ではないです。
穴子には穴子の個性があり、美味さも鰻に匹敵します。
本当に美味しい穴子を、ぜひ食べてみてください。
「良き出会い」になれば幸いです。
最後に、海山商事の営業マンであり、国民的アイドルでもあるこちらのアナゴさんの秘密を紹介している名翻訳家としても有名なエキサイトさんの記事をご紹介して、終わろうと思います。
https://a.excite.co.jp/News/net_clm/20160917/TriviaNews_5032788.html
上唇8.1センチて。
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