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「まち協」は必要ない?

≪おごおりトーク5≫
 
 小郡市では「市民との協働のまちづくり」として、校区のまちづくり協議会(以下、まち協)を中心とした「協働のまちづくり推進事業」に取り組んでいます。

 先日、地元のまち協役員会に参加した際、ある役員の方から「まち協は必要ない」「行政はまち協を今後どうしようと考えているのか」という意見がありました。自由な意見交換の場であったので、それ自体を問題視するものではありませんが、市民の中にある「まち協は必要ない」という思い、これに対して私たち自治体職員はどのように考えればよいのでしょうか?
 今回、小郡市の「協働のまちづくり」について考えてみたいと思います。

小郡市の協働のまちづくりとは?

 平成13年に北海道ニセコ町で「まちづくり基本条例」が施行されて以降、全国各地で住民主体のまちづくりを模索する動きがあらわれ、平成20年以降は自治体のコミュニティ政策が活発化し、「協働・共働」をキーワードにした住民自治協議会の設置などが推進されるようになりました。
 小郡市の「協働のまちづくり」は、平成23年の第5次総合振興計画に「市民との協働のまちづくり」「新たな地域自治の体制づくり」が位置付けられ、平成24年から市内8小学校区のまち協を中心とした「協働のまちづくり推進事業」がスタートしています。
 小郡市の「協働のまちづくり推進事業」は、自治会だけでなくPTA、老人クラブ、自治公民館、民生委員、消防団、市民会議、ボランティア団体など地域組織の連携による新たな共同体としてまち協を設置し、行政から財政支援を行うというものです。
 行政との関係性では、まち協は行政からの下請け組織ではなく、行政と協働して住民が自主的・主体的に地域課題の解決に向けたまちづくり活動に取り組むことを目指した組織です。
 また、自治会との関係では、まち協は校区単位で広域的に取り組んだほうが効果的・効率的に課題解決できるものを活動対象とし、本来自治会でやるべき活動をまち協へ移管したり、上部団体として自治会を統括するような組織ではありません。

協働のまちづくりの成果と課題

 では、これまでの「協働のまちづくり」の成果と課題は何なのでしょうか?
 私自身もプライベートで地元まち協の活動に参加していますが、私が感じる成果は、自治会だけでなく地域の様々な関係者が集まり、校区全体でまちづくりについて協議する場所と機会が確保されたことです。そのことにより、まち協の活動を通じて「自分たちの地域は自分たちでつくる」という住民の自治意識につながっています。
 また、まち協では熱意と意欲があれば誰でも活動に参加する門戸が開かれています。すでに自治会の役員を退任した人達が、その知識と経験を活かしながら継続してまち協の活動に参加している姿を見ることができます。
 さらに、まち協では、行政の一律的な施策では対応が困難な地域課題にも、それぞれの校区の特性や地域の実情に応じて多様性のある取り組みが創出されています。例えば自治会バス、移動販売、自主防災活動、認知症SOSネットワークなどの取り組みは目に見える成果だといえます。
 しかしながら、前述のように「まち協は必要ない」「役員の固定化によって組織の風通しが悪く閉鎖的な組織になっている」「新たな取り組みを始めたが担い手が確保できず継続できない」「まち協や自治会役員の負担が大きい」などといった課題があることも事実です。

まち協の成果の共有を

 どんな取り組みにおいても成果は同時に課題でもあります。まち協のそれぞれの活動における実績や成果も、視点を変えれば地域における課題や問題点でもあります。
 まず必要なのは、まち協自身が実施主体者としてこれまで取り組みや成果を確認すること、そして、それを関係する地域の人達で共有することだと思います。その上で、新たな課題や問題に対して地域全体で解決にあたることが協働のまちづくりの基本だといえます。
 その際、安易な行政への責任転嫁や地域の責任放棄につながらないよう「誰が主体的にその課題解決にあたるべきか」という視点が重要だと思います。
 まち協は行政主導型の組織ではありません。住民の主体的な関わりと相互の連携により、様々な地域課題や問題を乗り越えていくことを期待した組織です。行政が一方的に評価を行い、課題解決の方針を地域に押し付けるのであれば、それはもはや協働のまちづくりではありません。

 「まち協は必要ない」という前に、まち協のこれまで取り組みや成果について共有できていますか?
 「行政はまち協をどうしたいのか?」ではなくて、自分達はまち協をどうしたいと思っていますか?
 そんな話題を地域の皆さんと対話で導き出せるような自治体職員でありたいと思うわけです。

持続可能な地域自治の姿は?

 今後、増大する地域課題の解決や新たな市民ニーズへの対応を考えた時、地域自治の基盤となる自治会活動の活性化の問題は避けては通れません。
 まち協の活動は、小郡市の「協働のまちづくり」の一部にすぎません。
 私は、これからの小郡市の「協働のまちづくり」は、校区単位のまちづくりから自治会単位のまちづくりへ、より住民生活に身近なステージへ、地域自治の本質的な課題である自治会活動の活性化の方向に向かうべきではないだろうかと考えています。

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