日本の研究力低下のウソとホント①

研究力の低下は「雑用のせい」なのか?「選択と集中のせい」なのか?

https://news.yahoo.co.jp/articles/ffe0c827d0b09927f99f3b84b868ea75e0a1d8e0

日本の研究力の低下が叫ばれて久しく、natureに話題にもされています。
一般的な言い訳として「選択と集中」や「雑務の増加」、「給料が低いことによる人材不足」という言葉はよく挙げられます。

一方でnatureの記事ではこんな指摘ももあります。
研究者の人数は世界有数なのにインパクトのある論文数は下がっている。つまり「クソ論文」を量産しているのが日本の研究者ということになります。

クソ論文は「選択と集中」のせいなのか?「雑用を減らせば」よいのか?それとも「国からの関与」を減らすべきなのか?

冷静に現状を見てみる~選択と集中~

まず、「論文数が低下」したのはTop4大学と地方国立大の論文数が低下しています。

そして、論文数の寄与としてはTop4大学が最も下げている要因でもあります。一方で大学と論文数を見ると他国と比較して「選択と集中」が十分に行われているというのもわかります。

冷静に現状を見てみる~研究時間~

さて、お次に雑用時間問題。

以下を見ると全体として研究時間は減っているのは確かなんですが、保健系では社会サービス(健康診断とか)の増加がありますが、それ以外では実は昔から雑務の量自体は変わっていません。。。

保健系を見ると確かに「雑用が増えている」が、それ以外はたいして増えていない。理工系は教育と研究関連の社会サービス(要は講演とか、何とか委員とか)と教育の割合が増加し、人文系は教育が増加しています。

保健系を除いて「雑務時間の増加」=「教育デューティーの増加」ということになります。

ひょっとして教育=雑務とおもっていない??????

と言いつつも実感として雑務が多いと感じている様で、と言いつつも教育選任教員不足を訴える人も多い(この点は後から議論します)。

冷静に現状を見てみる~研究費~

日本の研究費自体は各国と比較しても遜色のないレベルで推移しています。

研究費の増減は単純に中国アメリカのGDPの伸びとそれに比例した金額にすぎないと言ったら過ぎない。

一人当たり研究費も例年からあまり変わっていません。

研究費自体は変更ないですが、海外のインフレとも関係して、相対的に目減りしている印象はあるのかと思います。

つまりは単純にGDPの伸びの鈍化がすべてでなんですが、+物価高騰等の影響によってじり貧になっているのは日常生活のみならず、研究でも影響を多少しているとも言えますが、これも「選択と集中」に関係してきます。

現状まとめ

現状を見ていると「日本の研究環境」自体は他国と比較しても遜色はないという以上に比較的良い方であることがわかります。ではなぜ研究力が下がっているのか?

その実日本の研究者の割合(日本に限らずですが)は臨床医学が最も多い。
つまり、雑用が最も増えた保健系と相関しています。この意味において雑用による弊害は大きいといえるのかもしれません。

さて、2018年から2020年の結果がこちらでその医学系の研究能力はどうかというと元々そんなに高いわけではない、、、

日本が元々強かった分野は化学、物理学、材料科学です。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg7/20230420/shiryou1.pdf

見ての通り、論文数がどんどん下がっていき、臨床医学の割合が増えているのがわかります。

この意味において選択と集中の結果が如実に表れているとも言えます。

選択と集中によってより「力を持っていた研究分野」の力を下げて、たいして研究力があるわけでもないが、金になりそうな(=臨床医学)に集中させている。

しかもその保健系では学外のサービス増加によって研究がままならない状況になっていった結果、研究時間が削がれ、質が落ちているというのが現状なのかと思われます。

それを象徴するような統計がこちらです。https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/27/11/27_11_52/_pdf/-char/ja

みての通り他の国とは特徴が異なっていてコンチネント型(=王道、過去からの継続的な研究)が突出して多いことがわかります。

この著者がいうように研究においても多様性が失われており、それが研究力の低下につながっていると悲観しています。

さらには大学毎の選択と集中も大きく大阪大学, 京都大学, 東京大学, 東北大学への資金集中がより顕著であることもわかります。

極端なことを言うと「東大医学部」を頂点としたヒエラルキーの元に研究費や人員が割り振られているが、その肝心かなめの東大医学部の能力が下がってきているというのが、当たらずも遠からずという状況なんでしょう。。。

つまり、最も大きな原因は「誤った選択と集中」にあるといえます。

次はその「なぜ誤った選択と集中」が起きているのか?を探っていきます。


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