Tomo Satonaka

見習いAIエンジニア(ph.D持ち) 別分野から手習い程度にしか知らないAIの業界に飛…

Tomo Satonaka

見習いAIエンジニア(ph.D持ち) 別分野から手習い程度にしか知らないAIの業界に飛び込んでしまいました。

最近の記事

最適化の世界で

近頃Z世代に流行るもの、投資、タイパ、tiktok、 推し活、AI、コンサルタント。 これらに共通するのは「最適化」というキーワードです。 投資やコンサルは「経済的最適化」つまり「経済的に得をする最適解」として投資やコンサルが挙げられる。推し活やディズニーガチ勢のようなものは「行動最適化によって受けられるサービスを最大限にする」わけですね。 そしてその救世主として現れているのが「人工知能」やその他のサービスであったりするわけです。 昨今のトレンドはすべて「最適化」とい

    • 科学からみたアクター-ネットワーク理論

      サイエンスウォーズとその射程皆さんはサイエンスウォーズというものを知っているでしょうか? サイエンスウォーズとはポストモダン思想から派生した「科学構築主義」の一派がその思想を用いて”科学”に対する批判を行った時期のことを言います。 やがて「でっちあげ論文」を査読付き論文に投稿するというソーカル事件というものがあって、実質的に”科学の完全勝利”で幕を閉じました。ある意味において思想が力を失った分岐点にもなったように思います。 さて、この中で批判のやり玉に挙がったラトゥール

      • Z世代における信仰

        私の思想書読みのきっかけ皆さん山岳ベース事件、あさま山荘事件を知っていますでしょうか? 未だにテレビでの最高視聴率等で話題にはなりますが、その程度の理解しかない方も多いと思います。 今の世代の人には理解できないかもしれませんが、全盛期の「左翼活動」は今以上にカジュアルでした。 東大の安田講堂事件の逮捕者が450人ですので(必ずしも東大生だけでもないし、東大全共闘全員が逮捕されたわけでもない)、シンパも含めると大体500~1000人くらいが左翼活動に肯定的でした。東大の在学者

        • 役に立たない研究は今すぐ滅ぶべきである

          私は「役に立たない」研究の代表である理学部出身ですし、文学部の研究も好きです。 しかし、研究をAIに移した中で「役に立たない」研究についての発表を見ているとものすごく嫌悪感とイライラ感を感じるようになりました。 それは民間企業の論理にどっぷりつかってしまって「役に立たない研究」への「無駄さ」を感じたからではありません。私が学んでいた物理学も大して役に立ちませんが、それとはどこか異なる「研究の無意味さ」とそれを「誇る人々の愚かしさ」にイライラさせられる。 私自身のイライラ

        最適化の世界で

          理系が精神分析を勉強してみる②

          フロイトとラカンの取り扱い今回は精神分析を科学の面からみて「どう科学的でないのか」、「どの辺が科学的であるか」という点を寸評していきたいと思います。 フロイトは様々な著作が手ごろな価格で出版されていますが、ラカンは岩波文庫から出たもの以外は専門書なので高価です笑。そしてラカンの主著「エクリ」は難解であることで有名です。そこまでの労力をかけるリスクは負いたくない笑 一点だけ言えるのは「ラカンはフロイトを全面的に「真」として取り扱っている」ことです。 ラカンを読んでいると読み

          理系が精神分析を勉強してみる②

          理系が精神分析を勉強してみる①

          ドゥルーズへの道私個人的にずっとドゥルーズを理解したいんですよね。で何度もアンチ・オイディプス読もうとしては挫折をしている笑 そして近頃フロイト、ラカンのセミネールが岩波文庫から出ましたので、これを期に精神分析とドゥルーズまで理解したいというモチベーションです。 精神分析の取り扱い私は大学一回生ころに当然フロイトは読んだことがあります。なんか精神分析のぱんきょーもとってました。 フロイトは厨二病、大二病にかかっている方々にとっては非常に「キャッチー」です笑。様々なサブカ

          理系が精神分析を勉強してみる①

          日本の研究力低下のウソとホント④

          さて、前回は研究力の低下の真の原因として「海外追従主義」な研究者の増加によるものであるとしました。 最後にその裏にある原因と、その対応についてです。 憧れることのメリット研究において「憧れ」は他の分野同様メリットデメリットあります。デメリットについては先に書いたとおりです。同じことを別の方も語っていますし、大谷選手がいったように「憧れては勝てない」んです。 一方で海外研究への憧れをもちフォロワーになることのメリットが当然大きいからフォロワーになるんです。 まずは価値観

          日本の研究力低下のウソとホント④

          日本の研究力低下のウソとホント③

          医学系以外の研究力低下の要因さて、これまでの大まかな話の流れは「十分な選択と集中はすでに起きており、大学に対して、特に医療系対して集中が起きている」、「雑用が増えたのは医学系のみ」というデータから「誤った投資の結果」研究力がマクロでは低下しているということでした。 医学系の論文割合が半分以上を占めているということもあり、医学系の研究環境の悪化が「研究力低下」の一応の要因として説明がつけられます。 しかし、「インパクトのある論文数」が減っているという点では医療系は元々研究力

          日本の研究力低下のウソとホント③

          日本の研究力低下のウソとホント②

          現場の研究者の意見として研究力低下の原因は「雑用」、「選択と集中」、「研究費」があげられています。その中で「選択と集中」が一つの原因としてあげられてそうということを書きました。 次はこの選択と集中とその他の研究力低下要因2ついてあれこれを考えてみます。 研究にける選択と集中研究では常に「選択と集中」に対しての批判が起きます。ではばら撒きをすればいいのか?というのも常に疑問になってきます。 一方で前回の記事で見たように今現在の選択と集中は「分野への選択と集中」であったり「

          日本の研究力低下のウソとホント②

          日本の研究力低下のウソとホント①

          研究力の低下は「雑用のせい」なのか?「選択と集中のせい」なのか?https://news.yahoo.co.jp/articles/ffe0c827d0b09927f99f3b84b868ea75e0a1d8e0 日本の研究力の低下が叫ばれて久しく、natureに話題にもされています。 一般的な言い訳として「選択と集中」や「雑務の増加」、「給料が低いことによる人材不足」という言葉はよく挙げられます。 一方でnatureの記事ではこんな指摘ももあります。 研究者の人数は世界

          日本の研究力低下のウソとホント①

          AIブームを科学史的にたどる~まとめ~

          人工知能 vs 機械学習 vs 統計 vs ニューラルネット前回まででロボット、自然言語処理、画像認識とみてきましたが、ロボットと自然言語処理etcでは「毛色」が違うと指摘しました。 一つは思想としてのプラグマティズムと言いましたが、今やほぼ同じものとしてとらえられている上記の4つの概念の違いがあります。 ロボットに限らずいたるところで(ITでない)エンジニアリングでは「データ」を取り扱い、それぞれの分野でそれぞれの手法が開発されてきました。データ分析の際に仮説検定や関数

          AIブームを科学史的にたどる~まとめ~

          AIブームを科学史的にたどる~自然言語と知識システム~

          自然言語についてのAI革命と言われるのはおそらく2017年のトランスフォーマーでしょう。 トランスフォーマーのアイディア自体は革命的かと言われるとさほどです。画期的だったのは単に性能です。 そこにはその後の人工知能の流れを決定づけた「脳筋でデータを学習させる」という身も蓋もない技術があります。 自然言語処理から深層学習までの流れ自然言語処理はある意味もっとも人間のプリミティブな知能として認知されています。言葉を話すのは人間だけですからね。 その意味で自然言語をコンピュ

          AIブームを科学史的にたどる~自然言語と知識システム~

          AIブームを科学史的にたどる~ロボット~

          前回は画像認識系を見ましたが、お次はロボット系。 ロボットとAIの切っても切れない関係「機械学習」の機械という単語からもあるようにオートメーションと最適化の自律化というのが元々の目的になります。その意味でおおよそ全ての人工知能はロボットがモチベーションにあります。 皆さんがロボットと言って想像するようなドラえもん、アトム等「人間の友達」となるロボットの存在はSFで多く書かれ、そして日本人の1980年代の産業発展に大きく貢献しています。その意味で人工知能は常にこれらのロボッ

          AIブームを科学史的にたどる~ロボット~

          AIブームを科学史的にたどる~画像~

          AIを学ぶ人は必ず多少の歴史をならいます。 第一次、第二次ブーム、エキスパートシステムなどなどの成功と失敗、 そして2012年のAlexNetによる第三次ブームと学びます。そして、その理由として「コンピュータリソースの改善」があげられます。 しかし、よく言われているようにBack PropergationやCNN 自体は1980年代にはすでに開発されていたわけで、それが結実したのが2012年であったにすぎません。 では「なぜ2012年だったのか」? Hintonによる

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          ある研究分野の寓話

          そんなに遠くない昔、あるところに飛ぶ鳥を落とす勢いの研究分野がありました。 「森羅万象全ての」の基礎学問を標榜し、ありとあらゆるポストや予算に影響を与えてしました。 また当時「科学といえば物理」というほどの勢いでしたので「物理帝国主義」という言葉さえありまして、その極左とも言えるのが彼らでした。 この分野の人々は生物や化学の法則に対して「それ何が面白いの?」や「それ物理的にはもうわかってるからあとは計算の問題だよね」という見下した態度をとっていました。 実際に「全ての

          ある研究分野の寓話

          ワクチンと反ワクチン

          ワクチンについて様々な意見があるので「真に」科学的な観点からの私見を。 医学と科学と政治まず、ワクチンに関する様々な意見について、科学的な見解と政治的、医学的な見解はわけで考える必要があります。というのも科学的見解は事実の問題であるのに対して、政治的、医学的見解は「判断」の問題になるからです。 科学的というのはコロナに関わらず「全てのワクチン」、「全ての感染症」に対して言えることです。 ワクチンの効果や原理については科学的な根拠がありますが、それによって人間の健康に害を

          ワクチンと反ワクチン