Tomo Satonaka

見習いAIエンジニア(ph.D持ち) 別分野から手習い程度にしか知らないAIの業界に飛び込んでしまいました。

Tomo Satonaka

見習いAIエンジニア(ph.D持ち) 別分野から手習い程度にしか知らないAIの業界に飛び込んでしまいました。

最近の記事

何番煎じか分からないけれど物理側から2024年ノーベル物理学賞の解説をする

物理側から見た人口知能のノーベル賞今年のノーベル賞は人口知能でした。 ノーベル賞のサイトにアンケートがあったのですが、人口知能の元ネタが物理であることを半分以上の人が知らなかったようで、その意味においても意外な受賞であったようです。 人口知能側からみた解説は様々な人がしているので、あまり述べるつもりはないですが、その中で「何故日本人が受賞できなかったのか?」みたいなことを多くの人が述べています。 物理学側から見るとこのあたりがなんとなく見えてくるよというお話です。 物

    • 反証可能性の間違え方

      反証可能性は定義でなく帰結である最近こちらの本を読みました。 行動経済学の反証可能性をみて「行動経済学は科学」であるが、反証されたかというとそうではない。という主張をして、遠回しに「経済学は科学的であって検証性も今後改善されていく」というニュアンスな帰結でした。 しかしその反証可能性の使い方に違和感しかなく、案外色々なところで反証可能性が間違って使われているような気がしてきました。 というわけで正しい反証可能性の使い方についてです。 反証可能性の論理ポパーはまずイント

      • 夫婦別姓推進派にこそ古い家制度概念が残っている

        姓へのこだわり夫婦別姓の議論が選挙の際にツイッターでの候補者選びの基準になっているように夫婦別姓を殊更主張する人がいます。 この議論のややこしいところは本当は「アイデンティティ」の問題であって制度上の問題ではない点です。 何故なら今の法律でも「女性の姓」にする選択肢が存在するから。 何故姓にアイデンティティがあるのかというお話です。 呼び方の問題夫婦別姓の議論をするたびに海外との比較が行われます。まあそれはそれで結構なんですが、どこの国との比較かも大事です。なんだかんだ

        • 国民国家と少子化問題②

          前回までに「国民国家」という観点から少子化は問題であって、国民国家の構成に重要なアイデンティティの拠り所が所属から能力へ変化した事が遠因としてあるという話をしました。 そのため解決策としては「アイデンティティの拠り所」を所属に戻すことを考えましたが、その施策がうまくいっていない現状があります。 そこでその原因を探り、真の少子化の解決策を考えていきます。 移住と疎外移民や出稼ぎ等の移住の多くの原因は広い意味での「疎外」です。クルド難民やユダヤ人、白ロシア人の様に迫害や経済

          国民国家と少子化問題①

          何故子供が必要か?そもそも論として何故子供が必要なのでしょう? 生物学的には「子孫を残すため」でありそれが生物の本能であるからで、それ以外に「子供産む」という行為に必要性はありません。その意味では子供は「性欲の赴くまま」の結果に過ぎない。それへ多分昔の人々も同様です。 これは低所得層の方が子沢山という事実から外れずとも遠からずです。少子化はある意味で「人々が理性によって性欲が抑えられるようになった」結果とも言えます。 すると「性欲=本能の結果」以外に子供が必要な合理的な

          国民国家と少子化問題①

          最適化の世界で

          近頃Z世代に流行るもの、投資、タイパ、tiktok、 推し活、AI、コンサルタント。 これらに共通するのは「最適化」というキーワードです。 投資やコンサルは「経済的最適化」つまり「経済的に得をする最適解」として投資やコンサルが挙げられる。推し活やディズニーガチ勢のようなものは「行動最適化によって受けられるサービスを最大限にする」わけですね。 そしてその救世主として現れているのが「人工知能」やその他のサービスであったりするわけです。 昨今のトレンドはすべて「最適化」とい

          最適化の世界で

          科学からみたアクター-ネットワーク理論

          サイエンスウォーズとその射程皆さんはサイエンスウォーズというものを知っているでしょうか? サイエンスウォーズとはポストモダン思想から派生した「科学構築主義」の一派がその思想を用いて”科学”に対する批判を行った時期のことを言います。 やがて「でっちあげ論文」を査読付き論文に投稿するというソーカル事件というものがあって、実質的に”科学の完全勝利”で幕を閉じました。ある意味において思想が力を失った分岐点にもなったように思います。 さて、この中で批判のやり玉に挙がったラトゥール

          科学からみたアクター-ネットワーク理論

          Z世代における信仰

          私の思想書読みのきっかけ皆さん山岳ベース事件、あさま山荘事件を知っていますでしょうか? 未だにテレビでの最高視聴率等で話題にはなりますが、その程度の理解しかない方も多いと思います。 今の世代の人には理解できないかもしれませんが、全盛期の「左翼活動」は今以上にカジュアルでした。 東大の安田講堂事件の逮捕者が450人ですので(必ずしも東大生だけでもないし、東大全共闘全員が逮捕されたわけでもない)、シンパも含めると大体500~1000人くらいが左翼活動に肯定的でした。東大の在学者

          Z世代における信仰

          役に立たない研究は今すぐ滅ぶべきである

          私は「役に立たない」研究の代表である理学部出身ですし、文学部の研究も好きです。 しかし、研究をAIに移した中で「役に立たない」研究についての発表を見ているとものすごく嫌悪感とイライラ感を感じるようになりました。 それは民間企業の論理にどっぷりつかってしまって「役に立たない研究」への「無駄さ」を感じたからではありません。私が学んでいた物理学も大して役に立ちませんが、それとはどこか異なる「研究の無意味さ」とそれを「誇る人々の愚かしさ」にイライラさせられる。 私自身のイライラ

          役に立たない研究は今すぐ滅ぶべきである

          理系が精神分析を勉強してみる②

          フロイトとラカンの取り扱い今回は精神分析を科学の面からみて「どう科学的でないのか」、「どの辺が科学的であるか」という点を寸評していきたいと思います。 フロイトは様々な著作が手ごろな価格で出版されていますが、ラカンは岩波文庫から出たもの以外は専門書なので高価です笑。そしてラカンの主著「エクリ」は難解であることで有名です。そこまでの労力をかけるリスクは負いたくない笑 一点だけ言えるのは「ラカンはフロイトを全面的に「真」として取り扱っている」ことです。 ラカンを読んでいると読み

          理系が精神分析を勉強してみる②

          理系が精神分析を勉強してみる①

          ドゥルーズへの道私個人的にずっとドゥルーズを理解したいんですよね。で何度もアンチ・オイディプス読もうとしては挫折をしている笑 そして近頃フロイト、ラカンのセミネールが岩波文庫から出ましたので、これを期に精神分析とドゥルーズまで理解したいというモチベーションです。 精神分析の取り扱い私は大学一回生ころに当然フロイトは読んだことがあります。なんか精神分析のぱんきょーもとってました。 フロイトは厨二病、大二病にかかっている方々にとっては非常に「キャッチー」です笑。様々なサブカ

          理系が精神分析を勉強してみる①

          日本の研究力低下のウソとホント④

          さて、前回は研究力の低下の真の原因として「海外追従主義」な研究者の増加によるものであるとしました。 最後にその裏にある原因と、その対応についてです。 憧れることのメリット研究において「憧れ」は他の分野同様メリットデメリットあります。デメリットについては先に書いたとおりです。同じことを別の方も語っていますし、大谷選手がいったように「憧れては勝てない」んです。 一方で海外研究への憧れをもちフォロワーになることのメリットが当然大きいからフォロワーになるんです。 まずは価値観

          日本の研究力低下のウソとホント④

          日本の研究力低下のウソとホント③

          医学系以外の研究力低下の要因さて、これまでの大まかな話の流れは「十分な選択と集中はすでに起きており、大学に対して、特に医療系対して集中が起きている」、「雑用が増えたのは医学系のみ」というデータから「誤った投資の結果」研究力がマクロでは低下しているということでした。 医学系の論文割合が半分以上を占めているということもあり、医学系の研究環境の悪化が「研究力低下」の一応の要因として説明がつけられます。 しかし、「インパクトのある論文数」が減っているという点では医療系は元々研究力

          日本の研究力低下のウソとホント③

          日本の研究力低下のウソとホント②

          現場の研究者の意見として研究力低下の原因は「雑用」、「選択と集中」、「研究費」があげられています。その中で「選択と集中」が一つの原因としてあげられてそうということを書きました。 次はこの選択と集中とその他の研究力低下要因2ついてあれこれを考えてみます。 研究にける選択と集中研究では常に「選択と集中」に対しての批判が起きます。ではばら撒きをすればいいのか?というのも常に疑問になってきます。 一方で前回の記事で見たように今現在の選択と集中は「分野への選択と集中」であったり「

          日本の研究力低下のウソとホント②

          日本の研究力低下のウソとホント①

          研究力の低下は「雑用のせい」なのか?「選択と集中のせい」なのか?https://news.yahoo.co.jp/articles/ffe0c827d0b09927f99f3b84b868ea75e0a1d8e0 日本の研究力の低下が叫ばれて久しく、natureに話題にもされています。 一般的な言い訳として「選択と集中」や「雑務の増加」、「給料が低いことによる人材不足」という言葉はよく挙げられます。 一方でnatureの記事ではこんな指摘ももあります。 研究者の人数は世界

          日本の研究力低下のウソとホント①

          AIブームを科学史的にたどる~まとめ~

          人工知能 vs 機械学習 vs 統計 vs ニューラルネット前回まででロボット、自然言語処理、画像認識とみてきましたが、ロボットと自然言語処理etcでは「毛色」が違うと指摘しました。 一つは思想としてのプラグマティズムと言いましたが、今やほぼ同じものとしてとらえられている上記の4つの概念の違いがあります。 ロボットに限らずいたるところで(ITでない)エンジニアリングでは「データ」を取り扱い、それぞれの分野でそれぞれの手法が開発されてきました。データ分析の際に仮説検定や関数

          AIブームを科学史的にたどる~まとめ~