69355703-左脳と右脳思考の方法

右脳思考を学ぶ

今回は、内田和也氏の「右脳思考」についてです。
ビジネスの世界ではロジカルにものごとを考えてアウトプットすることの重要性は誰しもが理解していることだと思いますが、本書では「左脳思考<右脳思考」という立場で、右脳でものごとを考えることの重要性・大切さを説明しています。

■目次
第1章 右脳を使うことが重要な理由
第2章 右脳の使い方
第3章 右脳で考え、左脳でロジカルチェック
第4章 左脳で考えたロジックフローを右脳で肉付け
第5章 右脳「力」を鍛える
第6章 ロジカルシンキングより直感を信じてみよう

第1章 右脳を使うことが重要な理由

ビジネスの世界では、ロジカルシンキング(左脳)は必要不可欠なのは当然である。プレゼンに至るまでには、市場環境・ニーズ・競合優位性・競合分析などの様々な工程を論理的に思考しプレゼンに臨む。しかし、いざ経営者や事業責任者にプレゼンを行なっても企画が通らないという場面もしばしば見られるだろう。

これは、現実のビジネスの世界では、左脳のスキルがあれば成果を発揮できるわけではなく、右脳のスキルが必要ことがあるとことを表している。

具体的には、企画が通らなかった理由は以下の2つが考えられる。

パターンA:ロジカルではなく提案の完成度が低い状態
パターンB:感覚的に気に入られていない状態

上記は表面的には企画が通らなかったという点で同じなのだが、その性質は全く異なっている。パターンAの場合は再度企画を見直して再提案する解決策がわかるが、パターンBの場合は、そもそも何が気に入らなかったのかを見極める必要があるということだ。この状況を打開するためにはロジカルシンキングでは対応できず、相手の心理状態を理解した上で対策を考える必要があり、これこそが右脳で考える、あるいは相手の右脳思考を理解するということなのである。

簡潔に述べると、ロジックにだけにとらわれずに「ビジネスを動かすのは人間であり、人間は感情で動くもの」ということを理解べきであるということである。そして、優れたビジネスパーソンや経営者の多くが経験や直感にもとづく勘をうまく利用している。

第2章 右脳の使い方

何かの問題解決を行う際、3つのステージに分類され、その中での右脳と左脳のキャッチボールを行うことが重要となる。

①インプットステージ
重要なのは情報のインプットである。そのプロセスは通常、五感をフルに活用する。ものを観察したり、異変、あるいは面白いことを感じ取り、その結果が課題の仮説となったりする。場合によっては何かひらめいて、解決策の仮説となったりもする。もちろん、データを読み取るには左脳も大事であるが、データから何を読み取れるかはセンスの問題でもあり、右脳の世界とも言える。
②検討・分析ステージ
インプットした情報に基づいて、真の課題を特定し、解決策を考える。課題が複雑な場合はそれを構造化したり、仮説はそれが正しいかどうかを検証したりするプロセスが必要となる。これらは左脳を目いっぱい使ってやるプロセスである。難しく言えば、情報処理のプロセスである。
③アウトプットステージ
結論を導き出し、その結論を人に「腹落ち」してもらい、実行に導くプロセスである。「腹落ち」とはコンサルティング業界の言葉で、「理屈はもちろん、感覚で大いに納得している状態」を指す。結論はロジカルに左脳で決めることもできるが、その後にチームや組織、あるいは顧客を動かそうと思えば、右脳を主に働かせて決めたほうがよい。特に、先行き不透明な中でエイヤッと決めるのも右脳である。

第3章 右脳で考え、左脳でロジカルチェック

プライベートではとくにロジックを意識せずに、割と勘や直感といった右脳で物事を考えている瞬間があるかと思う。しかし、ビジネスの現場になった途端、ロジカルに考えることが刷り込まれているために左脳でばかり考えてしまっているのではないだろうか。もちろん、間違っている訳ではないが、ビジネスでもまず右脳で考えてみて、それを左脳でロジカルチェックするスキームも良いのではないかと言っている。

もちろん、理論的に検証できなければ成功はあり得ないため、どうやってロジカルシンキングの観点から通用するものに返信させていくかが鍵となる。
その方法としては、以下の2点が挙げられる。

方法① キーコンセプトから結論を逆算してロジックを考える
具体的には1〜5の視点でチェックする必要がある。
1 市場性
2 競争状況
3 自社の強み・弱み
4 ビジネスモデル
5 実行計画
方法② ストーリーを作ってから、ロジックで細部を詰める
思いついたものごとを対象となりそうなターゲットとその生活などから、より具体的なストーリーを想像するなかでロジックを構成していく。

第4章 左脳で考えたロジックフローを右脳で肉付け

たとえロジックが完璧であったとしても、必ずしも提案内容が通り、人の気持ちを動かせるとは限らない(著者の経験より)。だからこそ、時として意思決定者の当事者の想い・責任感を理解した上で、人の気持ちを動かすためにロジックフローに右脳で肉付けをすることが重要である。

具体的に人を動かす4つの要素は以下の通りである。

①論理性
②ストーリー
③ワクワク・どきどき
④自信・安心を与える

中でもストーリーは非常に重要なファクターであり、ストーリーを豊かにするためには、「立体感・現実感・安心感」の要素を組み込む必要がある。

立体感:イメージできる
現実感:実現できそう
安心感:やってみたい、自分でもやれそう

第5章 右脳「力」を鍛える

前章ではロジックに右脳で肉付けすることを説明してきたが、では「勘、感覚、直感」といった右脳の力は、先天的なものであって後天的に鍛えることができないのかを考えてみる。結論としては、著者は決してそうではないといっており、そのためにも、まずは自分がどんなことには右脳が働き、働かないのかを自覚しておくことが重要であるという。

例えば、ビジネスの世界をみても、勘のいい人とそうでない人がいると思うが、ここでは生まれながらに勘のいい人を「G型」と呼び、一方で経験や学習によって鍛えられる人を「L型」と呼ぶことにする。
しかし、両者ともにビジネスでもプライベートでも意識的に勘を使っていることを自覚していたり、ましてや鍛えようとする人はあまりいないと思う。だからこそ、特にL型に関しては意識的に右脳を鍛えることが重要となる。

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実際に右脳を鍛えるには、インプットとアウトプットの両側面から行うことができる。

■インプットでの右脳の鍛え方「観・感・勘」
①観察する、②感じ取る、③勘を働かせるの3つが重要。

①観察する:常に問題意識をもってものを見る癖をつける。
②感じ取る:五感を働かせて様々なものを感じる。
③勘を働かせる:見聞きした情報や感じたことを想像し、自分の会社、ビジネス、業界、社会にどのようなインパクトがあるかを思い浮かべる。

▶︎これら3つを磨くために、「観察して感じたことを書き出す」「観・感・勘の検証(証拠探し)」「進化させる(修正する)」ことが重要である。
■アウトプットでの右脳の鍛え方「腹落ち」
「腹落ち」が非常に重要。
第4章で述べた通り、人は心から納得しないと行動せず、人を動かす為にはロジックで組み立てたストーリーではなく、心に刺さるストーリーが重要なとなるため、腹落ちしてもらうため、なぜ相手が納得していないのか、どこに引っかかっているのかを理解する必要がある。

▶︎「相手の靴に自分の足を合わせる」すなわち「感情移入」が重要となる。

そして、ビジネスにおいて大事な勘は「山勘」ではなく、「経験に基づく仮説」であることを理解し、常に問題意識を持ち経験を積む事で、自身のデーターベースを充実させると勘が冴えてくる。
つまりは、右脳思考は自分の中に蓄積された経験というデーターベースにアクセスし、それを使って自由に考える事である。

第6章 ロジカルシンキングより直感を信じてみよう

ビジネスの世界では、ロジカルに物事を考えることが大事であって、勘や直感に頼って感覚的な仕事をしてはいけないと教わったかと思う。
しかし、右脳で考えたことをすべて杓子定規に切り捨てないで、仕事のステージごとに右脳と左脳をうまく使いこなし、直感的に考えたことであったとしても左脳で解明しロジックに落とし込む努力がとても重要となる。

もちろん、ロジカルシンキング全盛時代に勘や直感を前面にだして仕事をすることは勇気がいることだろうし、時には反論をくらう場面もあるだろう。それでも、優れたリーダーの多くは左脳と同じくらい、いやそれ以上に右脳が優れていることもまた事実であり、ぜひ右脳思考に積極的にチャレンジしてほしい。

さいごに

クライアントの課題に対しての解決策を提示する際、もちろん大前提としてロジックは必要である。しかし、全てをロジカル武装するだけが最高の提案になるとは限らないし、どんなにロジックが成立していたとしても、時として人は理屈ではなく感情で判断する要素を持っていることは、日々仕事をする中で頭に入れておきべき重要なことではないかと思う。

そして、それを打破できるのが右脳思考であることも。
是非今の自分は「何型」で、どうすれば右脳思考を養うことができるかを考えて、仕事をスムーズに進めて、コミットできるようになるかを考えましょう!

                                TOMO

☟著者プロフィール
内田 和成(ウチダ カズナリ)
早稲田大学ビジネススクール教授。東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空株式会社を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出。
 2006年より早稲田大学大学院商学研究科教授。ビジネススクールで競争戦略論やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行なう。著書に『仮説思考』『論点思考』(東洋経済新報社)、『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(編著)『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(KADOKAWA)、『プロの知的生産術』(PHP研究所)などがある。


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