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呪術廻戦の『赤飯』



漫画『呪術廻戦じゅじゅつかいせん』のヒロイン、釘崎野薔薇くぎさきのばらとその親友のふみちゃんの過去が語られたエピソードは、本作の中でもトップクラスに「じっとりとしたリアリティを伴う薄気味の悪さ」が披露された場面だと感じる。
生々しいと言うべきか、『質量を持った湿度』と言うべきか。
たった4コマではあるが、女性的世界観から見た『田舎の気持ち悪さ』が描かれている。

その内容は「初潮を迎えたふみちゃんの元に、近所のお婆ちゃんが赤飯を炊いて持ってきた」というもの。

初潮を迎えた子供に赤飯を振る舞って成長を祝う風習は全国にあるが、この作品でその存在を知った者もいるかもしれない。

呪術廻戦・釘崎野薔薇
©︎芥見下々・集英社
呪術廻戦・ふみちゃん
©︎芥見下々・集英社

元々その村に住んでいた野薔薇とは違い、ふみちゃんは後から引っ越してきた子供だ。

ふみちゃんの初潮が近所のお婆ちゃんの耳に届いているという事は、その噂は複数人を経由していた可能性が高い。
学校での出来事が噂として広まった説や、ふみちゃんの親が娘用の生理用品を購入する瞬間を村内で目撃され噂になった等の考察も見かけた事がある。

善意で赤飯を炊いて持ってきたお婆ちゃんが諸悪の根源という話ではなく、ふみちゃんは自身のプライバシーが知らぬ間に不特定多数から共有・侵害されていた事を子供ながらに薄気味悪く感じた。
周囲でそれが公然と行われている事、それが普通である文化の土地に今後も住み続けなければならない事にショックを受けた。という文脈の話だと個人的には捉えている。




さらに、先日放送されたアニメでは近所のお婆ちゃんの口元から赤飯を持つ手元までが初めて描写された。
お婆ちゃんと赤飯があまりにもおどろおどろしく描かれていて、笑ってはいけないのに笑ってしまった。

©︎芥見下々・集英社
MAPPA・TBS

こんなグロテスクに見える赤飯があるのか。
ただ容器に入った赤飯を色濃く、ちゃんと描いているだけなのに、バックボーンありきだとここまで印象が変わるのか。
歯を剥き出しにして笑うお婆ちゃん、その手の皺やスジの入った爪等のコントラストも赤飯のグロテスクさに拍車をかける。

©︎芥見下々・集英社
MAPPA・TBS


容器の蓋に反射する光も悪い意味で良い味を出していると思う。
漫画『鬱ごはん』にて、牛丼屋の味噌汁に蛍光灯が映り込む描写を思い出した。

©︎施川ユウキ・秋田書店


その上、赤飯を入れた容器が『田舎の人がお裾分けに使う保存容器』すぎてビックリした。解像度が高すぎる。
実家の冷蔵庫に、ほとんど同じ柄の陶製タッパーでお裾分けされた漬物があった事を思い出す。
色は上記とは異なるピンク色だったが、模様は完全に一致していた。

ちなみに、この容器は使い捨て用ではないため、必然的に洗って返す事となる。
赤飯を食べ終えた後日、容器を洗ってお婆ちゃんの元へ返しに行き、再びお礼を言わざるを得ない未来が確定しているのだ。
それはふみちゃんの不在時に親が行う可能性も高いが、自分の知らない所で再び自分の生理の話をされる事もまた気色が悪いだろう。

※陶製タッパーの一例














アニメでこうならなくて良かったです。
なるわけないんだけど。




次回


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