【100均ガジェット分解】(17)ダイソーの「ラジコンカー(本体: 受信編)」
※本記事は月刊I/Oに掲載された記事にページの都合で省略した部分を追加したものです
ダイソーで無線コントロールの「ラジコンカー」が送信機とペアで600円(税別)で販売されていましたので、早速購入して分解しました。今回はラジコン本体(受信側)を分解します。
■パッケージと製品の外観
「ラジコンカー」はおもちゃコーナーで見つけました。本体が外からみえる大き目の箱に入っていて、人目を引くパッケージです。
パッケージの外観
本製品はダイソーブランドとなっています。表示は日本語と英語の2か国語で、パッケージの側面には簡単な仕様(特長)と使用上の注意事項、裏面には使い方が記載されています。本体は単三乾電池x3本、コントローラは単三乾電池x2本での動作となっています。ラジコンの使用周波数は27MHzです。
パッケージ側面の表示
■本体の分解
パッケージの内容
パッケージの内容は「本体」と「コントローラ」です。本体はボディ色のプラスチックの成形品、窓の部分は黒の塗装です。受信用のアンテナは外に出ておらずスッキリした外観になっています。
本体の外観
コントローラはラジコン用のプロポを意識した外観で「前進・後退」「右折・左折」の2個のスティックがついています。金属ワイヤーの「送信用アンテナ」が上から出ています。
コントローラの外観
本体の分解
今回は「前編」として本体を分解していきます。
本体は底面にある6か所のビスを外すことでボディをシャーシから分離することができます。
開封した本体
受信用のアンテナはボディに貼りつけた「銅箔テープ」です。ボディのフロントライトの位置に直接つけられた2個のLEDはリード線でメイン基板と接続されています。
メインボードはシャーシと一体成型された電池ボックスにかぶせる様な形でビスで固定されています。
モーターは130タイプのDCモーターです。ステアリングもDCモーターで制御しています。
モーターの端子間にはノイズを吸収するためのセラミックコンデンサ(0.1uF)が直接ハンダ付けされています。
モーターについているセラミックコンデンサ
後輪(駆動部)の構造
後輪を駆動しているモーターのカバーを外して構造を確認します。
駆動部のギヤは2段構成になっており、モーターに付けられたピニオンギヤから平のダブルギヤを経由して車軸に取り付けられた平ギヤを回すことで限られたスペースで減速比とトルクを確保しています。
後輪(駆動部)の構造
前輪(操舵部)の構造
前輪の操舵部についてもモーターのカバーを外して構造を確認します。
操舵部はモーターに付けられたピニオンギヤと、タイヤとのリンク構造になっている成形品上に形成された直線のラックギヤで構成されています。DCモーターの回転をラックギアで直線運動にすることで、左右のステアリング操作を実現しています。
前輪(操舵部)の構造
ラックギヤを外すと、下には裏面の突起を挟み込むようにバネがあり、モーターが停止したら中央に戻すようになっています。車体の底側をみると直進補正用のダイヤルがあり、バネの中央位置を調整することで直進のズレを補正することができます。
バネで直進のズレを補正
■回路構成と主要部品の仕様
メインボード
メインボードは紙フェノールの片面基板です。表面には基板の型番(JX-4R25)と基板の製造日(2019/8/17)、および無線周波数である「27MHz」がシルクで表示されています。表面には電源スイッチと同調用のトリマコイル(インダクタ)が実装されています。
メインボード(表面)
基板裏面(パターン面)に実装されている部品は全て面実装、主な部品はコントローラICとNPNトランジスタ及び1.1Aのポリヒューズです。基板には各リード線をハンダ付けするためのランド(丸穴付き)が設けられています。
メインボード(裏面)
回路構成
基板パターンからメインボードの回路図を書き起こしたものが以下になります。
乾電池(単3乾電池電池x3本の直列接続=約4.5V)の出力が保護用のポリフューズ(F1)経由でコントローラIC(U1)のVCCに入力されます。コントローラ内蔵のLDO(Low-dropout regulator)は同調回路用の電源VDD(2.6V)を生成します。
アンテナで受信した信号から同調回路で搬送波(27MHz)を取り出し、コントローラICに内蔵されたアンプで構成された検波回路で搬送波をフィルタしてコントローラICのSI(コード信号入力)に入力します。SIへ入力された信号はデコードされて、結果に応じて各モータードライバの出力が制御されます。
ヘッドライト用のLEDのアノードはコントローラICのモーター出力端子(FORW)に接続されているので、前進動作にあわせて点灯します。
パターン上はDCジャックがあるのですが、部品は実装されておらず(NMT)未使用となっています。
主要部品の仕様
次に本製品の主要部品について調べていきます。
● コントローラIC FMRX2BMS
コントローラIC
コントローラICは深圳市富满电子有限公司(Shenzhen Fuman Electromics Co.,Ltd, http://www.superchip.cn/ ) のラジコン向け多機能モータードライブIC「FMRX2BMS」です。
部品通販サイトのShenzhen LCSC Electronics Technology Co.,Ltd.での価格はUS$0.15です。データシートもLCSCのサイトから入手できます。
※2021年12月現在、LCSCでの販売はなくなっていてデータシートもダウンロードできなくなっています。
「FMRX2BMS」の電源電圧(VCC)範囲は2.5V~7.5、同調回路用のLDO(2.6V)とラジコンコードのデコード回路及びモータードライブ用のHブリッジ回路を内蔵しています。
ラジコン操作は27MHzの搬送波に乗せた周期の異なる2種類のパルスによる「シリアルコード」で行います。
「シリアルコード」は「エンドコード」と「ファンクションコード」で構成されます。「エンドコード」は4個のW2パルス(500Hz、Duty比1:3)、「ファンクションコード」は機能に応じたn個のW1パルス(1KHz、Duty比1:1)です。各機能と「ファンクションコード」の対応及び実測波形を以下に示します。
ファンクションコード一覧
SI入力の実測波形(前進)
● ポリヒューズ 1812サイズ 1.1A
ポリヒューズ
乾電池と直列に入っている面実装部品は過電流保護用の自己回復型ポリヒューズ(Resettable PTC, Polymer Temperature Coefficient)です。本機ではホールド電流(トリップしない最大電流)1.1Aのものを使用しています。
データシートはLittelfuse Inc.( https://www.littelfuse.com/ )のLoRhoのものが以下から入手できます。
このタイプのポリヒューズは複数の会社で作られており、Aliexpressでは50個でUS$2.0程度で販売されています。
自己回復型ポリヒューズは過電流が流れると発熱による膨張で内部のカーボン粒子が分離、導電経路が切断され内部抵抗が増加し電流を制限します(この状態をトリップと言い、トリップすることが保証された最小電流がトリップ電流です)。電流による発熱がトリップ状態を保持する温度を下回れば元の状態に回復するという特性を持っており、バッテリー機器やUSBポートの過電流保護等によく使われています。
● NPNトランジスタ TMBT3904
NPNトランジスタ
同調回路に使用されている「LW907」とマーキングのあるトランジスタは東芝( https://toshiba.semicon-storage.com/ )の汎用トランジスタTMBT3904(もしくは互換品)です。LCSCでの価格は50個でUS$0.43です。データシートもLCSCのサイトから入手できます。
■まとめ
構造含めて「予想以上によくできている」という印象です。アンテナは銅箔テープにリード線をつけたものであったり、LEDのON/OFFをモーターのドライブ端子と共用していたりとコストを安くする工夫も参考になります。
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今回は本体部分の分解をしました。
次回は「送信編」としてラジコン送信機を分解する予定です。
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