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ラストマイルは2回見たほうがいい(ネタバレガッツリですごめんなさい)

待ちに待った、会いたくて会いたくて震えるほど待ち続けたラストマイルがついに公開された。

野木亜紀子さん脚本×塚原あゆ子監督×新井順子Pの最強タッグによる、アンナチュラルとMIU404の世界線が交差するシェアードユニバースムービー。

強ェェェ……字面だけで超絶強ェェェ……


主演の満島ひかりさんと岡田将生さんを軸に、阿部サダヲさんディーン藤岡さん火野正平さん宇野祥平さん安藤玉恵さんなど豪華な顔ぶれ。
そこにさらにアンナチュラルとMIU404のキャストも出ちゃうという爆盛りアベンジャーズ映画。

強ェェェ……字面だけで超絶強ェェェ……


野木さんの作品が大好きでMIU404をこよなく愛し、アンナチュラルがクソぶっ刺さった私、公開翌日に観に行きさっそく感想をしたためようと思ったのだが、あらゆる感情(ウルトラクソデカ)が渦巻いてうまく言葉にあらわすことが出来なかった。
いったん落ち着いてからまとめようと思ったのに語彙力と表現力が行方不明のまま1週間が過ぎた。

そして昨日。
再び映画館へと向かい2度目の鑑賞をしてきた。
どうしてももう一度観てしっかりと咀嚼したくて。
まだまだ全然噛み切れた気がしやしねぇ。

一度流れを理解したうえであらためて観ると、初回では見えていなかったことや気付けていなかったことが次々と浮かび上がってきた。
そしてガックガクに震えた。

すっごいなこの映画ァァァ!!!!!


よっしゃこのブルッブルに震えた思いを書き綴ろう。
この興奮を文章に表すんや。
ワイは……書けるッ!!!(握りこぶしギュッ)

……と力強くガッツポーズしたのにまだ語彙力も表現力も帰ってきていなかった。捜索願出さなあかん。

感想文のように一文にまとめる自信はないが気持ちはワサワサとあふれてきてるので、項目に分けて思ったことをありのままに語ってこのウルトラクソデカ感情を成仏させていこうと思います。
お付き合いいただけましたら幸いです(⁠⁠´⁠ω⁠`⁠⁠)

✰米津玄師、おそろしい子……!!


ラストを見届けて感情がぐらんぐらんに揺さぶられてる最中にエンドロールを見ながら米津玄師さんの「がらくた」を聴いたらでっけぇ叫び声が出そうになって両手で口を抑えてた。

米津玄師さんの歌詞、すごくないですか?!

私個人の勝手なる解釈なので“違う、そうじゃない”と鈴木雅之氏が降臨したとしても何卒お許しいただきたいのですが、私的には「Lemon」は中堂系から糀谷夕希子への想いを、「感電」は志摩一未と伊吹藍の絆を描いてるように感じてて、「がらくた」はどうしても山崎佑と筧まりかが浮かんでしまったんです。
悲しい結末を選ばざるをえなかった2人の姿が。

あとこれは英語が得意な息子氏の気付きなのですが、最後のほう、エレナがサラと会話してる時にJUNKと言ったように聞こえた、と…。
もしかしたらJOKE(冗談)だったのかもしれないけど、JUNKにもバカバカしいみたいな意味があるし、それにがらくたって意味もあるんよなー、とのこと…。
聞き間違いとか単なる偶然かもしれないけれども。

✰中村倫也、おそろしい子……!!


今作の最大ビックリドッキリだったのは完全シークレットだった中村倫也さんの出演だと思うが、実は私、公開日にうっかりネタバレをくらってしまってた。
(ミュートしてなかった私にも非はあるのだが)

ほとんどの方がふせったーを使ったり内容にふれないようにものすごく配慮してツイートしてくれてたけれど、ごく稀にモロなお方もいて、私は運悪くそのモロにバッタリ出くわしてしまった。
ちなみに白井くんが出ることも合わせ技でくらった。
先ほどのトモヤモロとは違うモロから。
ガッデム!!!!!

なので残念ながら不本意ながら登場することに驚きはなかったけれど、セリフが「馬鹿なことをした……」しかなかったのに存在感がすごかったのには驚いた。

飛び降りる寸前の表情のわずかな移り変わりも見事で目を奪われた。
ロッカーに鍵を挿すことさえできなくなってるほど心身が衰弱したあの時・あの状態の山崎佑としてベストな演技だなと思った。
(どの立ち位置で言うとんねんでごめんなさいですが)

表情と動きだけで感情を現さなければならないのも、わずかな出演時間で観てる側の脳裏に常に居続けなけねばならないのも、非常に難しいお芝居だと思う。
それをやれちゃうのが中村の倫也氏。すごいわぁ。

✰間に合う、信じる


アンナチュラルもMIU404も
「間に合った、間に合わなかった」
「信じる、信じない」
が物語の大切な軸になってると私は思ってるのですが、ラストマイルでもこれらは重要なポイントだったように感じた。

エレナへの、山崎佑への、会社への不信感。
配送する側の、クライアントへの募る不信感。
山崎佑にも筧まりかにも間に合わなかった。
でも佐野親子は松本親子を爆弾から救うことに間に合った。
他にもたくさん至る所にこれらが散りばめられてた。

私が一番好きだったのは佐野亘が以前勤めてたヒノモトの洗濯機のことを語るシーン。
嬉しそうに「うちのは…」て言うんですよね。
そこには会社と製品への深い信頼と愛情、揺らぎない自信があった。
その「信じる」気持ちが無事救うことに「間に合う」につながる。
まさか洗濯機で泣かされるとは想定外だったぜ。

✰眠れるエレナ


1年目、やり甲斐を感じた。
2年目、順調。
3年目、眠れなくなった。

冒頭、デリファスに向かう電車の中でうつらうつらするエレナから始まり、最後は一矢報いてデリファスを辞めたエレナがパトカーの中で爆睡する姿が描き出される。
眠れなくなったエレナが起こされても起きないほどにぐっすり眠っている。眠れている。
冒頭は表情が固く、ラストは微笑みを浮かべて。
この緊張と安心の対比がエレナの環境や心境の変化を現してて良い描写やなと思った。

✰おめでとう、次は孔の番


エレナが西武蔵野LCを去る際、孔に鍵を渡しながら言ったのがこれ。

「次のセンター長は孔だよ」
笑顔のエレナと対照的に浮かない顔の孔。

私、このシーン、ゾワッとしたんです。
物語の初めのほうで孔はここに来て2年目と言ってましたよね……。

1年目、やり甲斐を感じた。
2年目、順調。
3年目、眠れなくなった。

「次に眠れなくなるのは孔だよ」
そう言ってるように感じたんです。
全然おめでとうやないやんけ、と。
そしてこのゾワッがラストにつながった。

✰ロッカー


無機質にズラッと並ぶロッカー。
でも使われてるのはほんの一部。
壊れていても直してない。
ここに来て2年の孔が一番長くここにいる人。
デリファスの闇の部分が垣間見える描写。

そしてこのズラッの中からあのロッカーを選んであの文字をなんじゃこれと見つめながら身支度をととのえるのが孔の初登場シーンなんですよね。

最後はあのロッカーの前であの文字を見て頭を抱える孔で終わる。

街中ではデリファスのCMが流れてる。
「What do you want?(あなたのほしいものは?)」
つまりブラックフライデーの季節。
すなわちあれから1年経ってて孔はセンター長としてデリファス勤務3年目を迎えてるわけですよ……。

エッグゥゥゥーーーッ!!!!!

あまりにもエグい。つらい。しんどい。
この先の展開を観てる側に委ねる野木脚本もエグい。
そういう苦み走った余白を残すのが野木さん。

✰2.7m/s→70㎏→0


最初は孔にも我々にもなんのこっちゃな暗号のようなこの走り書き。

意味が分かった瞬間のあの衝撃。
70㎏が意味するのは山崎佑。
うわぁ……て震えた。悲しかった。

自ら身を挺してまで止めたかったベルトコンベア。
止めることができたのに、倒れたあとすぐに目の前で再び動き出すベルトコンベア。

意識朦朧とする中でそれを見つめる山崎佑。
山崎佑に駆け寄るより先に荷物を優先した五十嵐。 この時2人はどんなことを思っていたのだろう。

エレナの「止めませんよ、絶対」が脳裏をよぎった。

センター長・孔は山崎佑のこのメッセージをどんな思いで見てたのだろう。ああもう苦しい。

✰社会のピラミッド


爆弾に振り回されるデリファス。
デリファスの無茶な要望に頭を抱える羊急便。
それらを受けててんてこ舞いになる配送の現場。
詳細を何も聞かされずに懸命に働く佐野親子。

デリファスジャパン本社の五十嵐と西武蔵野LCのエレナ。
エレナと羊急便の八木。
配送センターの犬塚と佐野親子。

社会の構図や理不尽を見事に描いてるなと思った。

そしてさらに荷物を待つ松本親子を描くことでこれらの上下関係や力の差、会社と現場の軋轢がさらにくっきりと浮かび上がってくる。
お見事がすぎる。

✰アンナチュラル


UDIが変わらずあのままなのが最高によかった!!!
坂本さん登場時の「ラストチャンスオープン、パカッ、ない」があまりにも飯尾さんだったけどあれはアドリブなのかしらん。
中堂さんがクソを言えず羊急便八木さんがクソと言うクソ回収の流れもめっちゃよかった。

そして六郎!がんばってたァァァーーーッ!!(号泣)
最終話の六郎の「法医学は!未来のための仕事!」でおいおい泣いた身としては、法医学者として働く六郎も見たいので単発SPドラマでもよいから続編希望。

それから白井くん!がんばってたァァァーーーッ!!(号泣)
公開前日の夜、ポソッとつぶやいたツイにたくさんの反応をいただきビックリしたのだが、白井くんのその後を見られたことで納得。
許されるように生きてきたんやね…あれからずっと、そして今も……(超号泣)

✰MIU404


映画館に大音量の伊吹藍が流れ出した瞬間、あまりの感動に両手で口を覆って必死に興奮を抑えた同志が全国にどれくらいいるのだろう。

志摩と伊吹のバディをスクリーンで見られた喜び。
伊吹のスタンスゥ〜が聞けて全私が全米より泣いた。
志摩が伊吹のきゅるっを通訳するの最高すぎた。
またこの並びを、掛け合いを見られるなんて…
生きてりゃ何回でもチャンスがあるよマジで!!!
志摩と伊吹、目の前(スクリーン)だよッ!!!
 
陣馬さんの隣には3話で逃げるのを踏みとどまり泣きながら罪を詫びた勝俣奏太がいた。
白井くん同様に許されるように生きてきたんやね…。
ところで成川岳は元気ですか…気になるわぁ…。
MIU404もSPドラマでもいいから続編希望、心から。

西武蔵野署で変わらぬお美しさで奮闘する桔梗さん。
スパイダーいとまきまきも相変わらず優秀。
やっぱり大好きだよMIU404。

九ちゃんがいないのは寂しかったけど、4機捜で陣馬さんに刑事として人として教わったことを胸に、九ちゃんは九ちゃんの立場でがんばってるんやろなと思った。
正しいことをしたければ偉くなれ。なんてな。
(©踊る大捜査線・和久さん)

✰メロンパン号と木林さん


みんな大好きメロンパン号と木林さん。
ぶっちゃけ物語の展開には登場しなくても差し支えはなかったので、完全なるファンサでぶち込んでくれた感があったが非常に歓喜したしありがたかった。
さすがオタクのツボをよく分かっていらっしゃる。

✰五十嵐道元


5年前のあの事件を知ってるのはもう五十嵐さんしかいないとエレナが言ってたけど、五十嵐以外はやめたか他に移動したかってことで、西武蔵野LC同様にデリファスの人材が足りてないことを示唆してるなと。

5年間、誰にも話せずに1人で重すぎる真実を背負い、止まらぬ変わらぬ現状を見つめながら眠れぬ夜を繰り返しながら彼なりにもがいてきてたんやろな…と思った。

常に自信と強さに満ちあふれた五十嵐の姿は武装しているように見えた。
自身の過去を孔に打ち明ける前のエレナもそうだった。
エレナに「俺に何ができた……?」と言った時とラストでロッカーの文字を見たあの時だけ、武装してない五十嵐道元だったように思う。
デリファスを具現化したようなキャラだったけど時折垣間見える人間臭さがよかった。

✰デリファス12か条


一見社員のことを考えたすばらしき理念のように見えるが映画を観たあとにこれを見ると恐怖しかない。

公式本に写真が載ってたのでここに書き写すと

1 信頼をつかむ
2 必要なリスクもある
3 大胆に進め
4 限界は自分で決める
5 自らの責任で行動を
6 全てはお客様のために
7 行動の結果に責任を
8 細部まで把握する
9 多角的な視点で
10 成長する努力
11 反論する勇気
12 結果を残す

登場人物に思いを馳せながらあらためて読むと……
おっそろしい話や……(震え)

✰筧まりか

爆弾を無事処理したあと、ソファーでくつろぎながらエレナさん(このタイミングで初めて名前で呼ぶのがめっちゃよかった!)のブルドーザーみたいなバイタリティが欲しいと言う孔に、エレナがあの女のバイタリティには勝てないと言う。

あの女……筧まりか、ほんとバイタリティがすごい。
バイタリティというより執念、怨念かな。
何年もかけてじっくり計画を遂行して自らも果てた。でも山崎佑の行動と同じく、結局止めることはできなかった。

先ほどの私のつぶやきの、アンナチュラルとMIU404の言葉が脳裏をよぎる。

「生きてる限り負けないわよ」
「生きてりゃ何回でも勝つチャンスがある」


エレナは生きてベルトコンベアを止めた。
生きて不条理に一矢報いた。
たとえわずかであってもあの瞬間勝てた。
筧まりかにも仲間がいたら違う未来だったろうな。

✰エレベーターの女

エレベーターにいたあやしい女の写真を見た時、中村倫也さんのファンである私はすぐさま
「これは……女装した山崎佑ッ?!」
と思った。何の根拠もなく。
影裏(えいり)を観た方は皆さんそう思ったのでは?
あれ?もしかして私だけか?!


羊急便にヤギ・クマ・イヌがいるのおもろいよねとか、佐野親子がすごくよかったなとか、松本親子の話もよかったよねとか、刈谷毛利コンビ抜群にスタイルいいなとか、やっぱり時々カッコいい毛利さんとか、まだまだ書きたいことたくさんあるくらい次から次へと思いがあふれてくる。

ただ爆弾を追うだけのスリリングな物語ではなくて、ネットショッピングが日常となった世界と流通業界が抱える問題や知られざる現状、働くということ、幸せとは、誇りとは……あらゆることがその背後にびっちりと隙間なく描き出されている。

ラストマイルは繰り返し観て都度自分なりに咀嚼してきちんと受け止めて考えていきたい作品。
観たあと「面白かった!」と手放しで言えない、ただそれだけではない、深くて苦い感情が残った。

アンナチュラルといいMIU404といいラストマイルといい、その塩梅が絶妙なのが野木さんの脚本。
そこが本当にすばらしくて大好きなところ。

物流の2024年問題はニュースで見て知ってたけれど、ネットショッピングを利用している者としてあらためてきちんと考える良い機会となった。

デリファスで、羊急便で、ラストマイルという作品で起きていたことはけっして映画の中のことだけではなくて、どんな業界にも当てはまることだと思う。

1年目、やり甲斐を感じた。
2年目、順調。
3年目、眠れなくなった。

エレナに、山崎佑に、五十嵐に、筧まりかに、そしてラストの孔や佐野親子の会話に出てきたやっちゃんになる前に、自分自身のためにできることを。

働くとは、幸せとは。
エンドロールの最後に出たメッセージがすべてかもしれない。


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