見出し画像

Tomopiiaナースのひとりごと ~寄り添うということ その1~

看護師はよく『寄り添う』という言葉を使います。
以前、看護師の採用のお仕事をしていた時に、『どんな看護をしたいですか?』という質問をしました。するとほとんどの看護師が『患者さんに寄り添った看護を心がけています』というような、この『寄り添う』という言葉を使うのです。この頃から私は、この『寄り添う』という言葉が気になって仕方なくなってきました。
『寄り添う』とはいったいどういう事なのだろう・・・と。
面接にきた看護師にも、『寄り添う看護とはどんな看護?』と聞くようになりました。

『患者さんが困ったときにそばにいること』『患者さんのしてほしいことをすぐにしてあげること』その看護師なりの『寄り添う』を皆さん一生懸命説明してくれました。でも、私自身がしっくりくる答えには巡り合えずにいました。

そんな時、ふと思い出したことがあります。

私は小学生のころ『テツ』という名の柴犬を飼っていました。
ある日、母とケンカをして家を飛び出したものの、小学生の私には行くところなどありません。仕方なく、庭の片隅にある『テツ』の小屋に行き、そっとそばにしゃがんで泣いていました。すると、小屋から静かにテツが出てきました。

画像1


テツは普段なら、しっぽを大きく振って飛びついたりじゃれたりするのに、その時は本当に静かにゆっくりと私に近づき、そっと私の横に座りました。そして私の足の上に顎を置いてじっとしています。時々、泣いている私の顔を見上げては、さっきよりもっと近くにぴったりとくっつきます。
気が付くと私はテツに向かって『お母さんがね・・・』と、話しかけ始めました。もちろんテツは何も言いません。テツに全ての思いを話し終えたとき、『もう、おうちに帰るね』とテツを抱きしめて、家に帰りました。15分ほどの短い家出でした(笑)家に帰ると、母に『家出は終わり?』と言われましたが、不思議と気持ちが穏やかにすっきりしていたのを今でも覚えています。

今思うと、テツがしてくれたことが『寄り添う』ことだったのかもしれません。慰めの言葉も励ましの言葉も何もありませんが、テツのぬくもりや優しさを感じ、私はテツに思いを打ち明けることで、心が癒されたのだと思います。
・・・その後も何度か家出をしてテツのお世話になりました(笑)

その2へ続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?