現場のおっちゃんの中からファーストピンを探せ

工場の現場や営業の現場に行くと本当に多くの発見があります。例えば横浜支店の営業の現場を訪問して現場の創意工夫が知見として得られると、ここでの学びを他の支店にも広めたいという思いと、この支店のやり方は本当にベストなやり方だろうか?もっと上手いやり方が他にあるのかも?という思いが交錯するのではないでしょうか。私が行なっている一つの習慣ですが、「このやり方ってどなたから学ばれました?」
「もっと凄い事やってる方を他にご存知ですか?」
というような質問をします。現場の職人気質の方々は実は我々には見えない地下水脈の様な陰のネットワークで繋がっており、しかも能師・狂言師の〇〇流の世界と同様に、それぞれ家元のお師匠様がいる世界です。
横浜支店の方が「これは今は京都支店にいるA先輩から教わったもので…」というお話しをされたらこれはグッドニュースです。しかも別の支店に行った際の会話でも「私なんか大したことないですよ。大阪支店のBさんの方が凄いんです。」となって、Bさんが「私なんか京都支店のAさんに比べたら大したことないですよ。」ってなったら、京都支店のAさんが家元の可能性があります。突撃取材して「私なんか、X先輩とY先輩から色々教わっただけでして…」とAさんが語り、X先輩、Y先輩が既にご引退されていれば、現存する社員でAさんが現場のおっちゃんの頂点に立っている可能性がとても高いのです。

学術論文の評価は他の論文からの引用数が多ければ高まります。また検索エンジンにおける評価は、どれだけ他のサイトから引用されるか(被リンク数)で信用度が高まります。先ほどの京都支店のA先輩は、引用数が高く、信用度が高い。社内の現場の人からの被リンク数がダントツで、検索エンジンでトップに表示されるような人です。まさに、現場のおっちゃんの中のおっちゃん、キングオブおっちゃんなのです。

コミュニティマーケティングの世界で活躍し、私がリスペクトする小島英揮さんが書いた本「ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング」で紹介されているコミュニティにおける「ファーストピン」。

「フォロワー」の多い「ロールモデル」から「ファーストピン」を選定して育成するプロセスが紹介されています。京都支店のAさんは「フォロワー」の多い「ロールモデル」です。この方を「ファーストピン」として育成するのが次のプロセスです。該当プロセスのシステム化を京都支店Aさんを「ロールモデル」に定め、プロトタイプを作っていくのです。

ただしシステム作りにおいてここで大変重要な事があります。Aさんが欲しいシステムをAさんが言う通りに作っては行けない、ということです。まずAさんに聞くと「システム?そんなもん要らんよ。全部頭の中にあるから。」と言われます。もしくは、手帳に丁寧に書かれた細かいメモを見ながら、「これ見ながら仕事してるからコンピューターは要らん。」とか言われます。現場の凄い人は、鬱蒼と生い茂る暗黙知の森の中で暮らす住民です。システム化で目指すことは、経験の浅い社員がいかにAさんのレベルに近づけるかであって、Aさんを支援する仕組みづくりではないのです。そのためにはAさんの頭の中に鬱蒼と生い茂る暗黙知の森の地図を頭の中から引き出して、他の人にも転用可能なパッケージとしてシステム化するのです。結果として出来上がるシステムは、Aさんの熱心なフォロワーからすれば、「当たり前すぎて使えねえ。」と言われる代物かもしれませんが、ターゲットはこのコミュニティの外側にいる人たちや先ほどの本の中で「ワナビー」と言われる意識や関心の成熟度がまだまだ低い人たちです。別の見方をすればこの人たちは、制約条件理論で言われる「足の遅い子」たちです。Aさんの暗黙知の森の地図から生み出した「魔法の靴」を履かせることで、Aさんのようにさっそうと荒野を駆け回れるようにするのです。

システム化とは足の遅い子が転ばないための「魔法の靴」作りなのです。

システム作りで良くやる手法は全員からアンケートを取ってコストと機能のバランス取りながら7割ぐらいを狙った「誰もが使える標準システム」を作りがちですが、経験的にこういうやり方で作ったシステムは誰の為にもならない中途半端なシステムです。私の主観で述べる、ある種の極論として聞いて頂きたいのですが、Aさんの様に尖った(エクストリームな)人を「ファーストピン」として先頭に立てて、システムを作った方が良いシステムが出来るように思います。しかもシステム導入する際は「京都支店のAさんのノウハウをシステム化した」と説明すれば、後の説明がほとんど要らず、「ファーストピン」を倒した勢いで残りのピンが倒れていくのです。

最後に、小島さんが推進するコミュニティマーケティングのノウハウは、情シスが社内にソリューションを浸透させるためのノウハウ本としても一級です。大事なことなので、もう一回リンク貼りますね(笑)。

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