日本の当たり前は、ベトナムの当たり前ではない…当たり前ですが、その2。

みなさん、こんにちは。
ベトナム医療・生命保険代理店TOMONI VIETNAM(トモニ ベトナム)
代表・CHOの山岸です。

前回は、「日本の当たり前は、ベトナムの当たり前ではない…当たり前ですが、[その1]」として、
「私たちが慣れ親しんだ日本医療の当たり前11のこと」をお話ししました。

そして今回、
では「ベトナム医療の当たり前とは」、「日本医療の当たり前とどう違うのか」についてお話をしていきます。

それでは、知れば知るほど怖いベトナム医療の当たり前のお話です・・・。
(これはあくまでも、ベトナムの公立病院や公共医療サービスのお話です。)

その1.救急車 |日本では、

119にかければ必ず救急車がきます。平均到着時間は、7分02秒!!
(平成30年 東京消防庁より)
それは、
①救急救命士
救命救急士という国家資格保持者が24時間体制で待機していてくれ、すぐに駆けつけてくれる体制があること。
②救急車には道を譲る。
救急車がきているとわかれば、みんな道を一斉にあけ、道を譲ること。
③救急車の要請にお金がかからない。
(それによる乱用が問題となっていますが。)

|ベトナムでは・・・

まず!救急車の平均到着時間は、政府のホームページにも記載はありませんでした。
なのでホーチミンのベトナム人の友人たちに聞くと
アンちゃん:多分、15分〜30分じゃないかな。
ヴィンさん:渋滞とかの具合にもよるから、なんとも言えないね。
チーちゃん:まず、ちゃんと来るかもわからないよ。
・・・とのこと、ちゃんと来るかも分からない救急車って、どういうことだろう…


① 救急救命士?

そんな資格自体がありません。救急車には医師と看護師が同乗して来ます。


② 救急車のために道を譲る?

そんなことは起こりません。救急車が来ようが、周りのバイクも車も変わりなく通常運転です。
これじゃいくら救急車でも渋滞に影響を受けたりして、到着時間だけで行ったらタクシーを呼ぶのと変わらないです。
実際、救急車を呼ぶよりも道のタクシーを捕まえて病院に行ったほうが遥かに早かったと話もたくさん聞きます。


③救急車を呼ぶには、お金かかります。

それに対しては、お金がかかる国があること自体は珍しくないですし。
アメリカでも距離によって料金が変わり、1度の要請に数万円はかかりますから、日本の当たり前=完全無料である国の方が少数ですよね。 
公共の救急車を呼ぶには115(日本でいう119)に電話をしますが、もちろん言語はベトナム語のみに対応、そもそも公共のものを日本人が使うのにはハードルが高いうえに、日本の救急車を想像してはいけません。
ベトナムの公共の救急車は担架があるだけのハイエースがきます。日本の救急車のようなフルスペックなものを望む場合は、プライベートインターナショナルクリニックが独自に所有する救急車を要請する必要があります。

その2.病院受診   |日本では、

緊急で医療機関を受診することになったとき、まとまった手持ちのお金がなくても病院は患者の重症度に応じて平等に対応してくれます。
①国民皆保険制度
1961(昭和36)年以降、日本ではすべての人が公的な医療保険に加入することになっている国民皆保険制度があります。この制度によって、誰もが安心して医療機関に行くことができます。
②誰かが倒れてたり、交通事故に遭遇したら…
他人でも一次救命処置を取ります。
③国家資格を保有した医療従事者による対応
病院に着いてたら医師、看護師、助産師、保健師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士など国家資格保有者が対応します。
④衛生とプライバシー管理
病院では衛生管理を行い患者が安心・安全・快適に過ごせるよう様々な対策が取られています。
それは、衛生管理が院内感染の予防や患者それぞれの治療にとっても重要なことであるとされているからです。
⑤食事管理
管理栄養士という国家資格を保有しているプロフェッショナルが患者の嗜好・体重・病状・アレルギー・内服薬との飲み合わせ等を全てを考慮した上でその状況に合わせ栄養管理されたものが1日3食届けられます。
それは、栄養管理も治療の1つとしてとても重要であると考えられているからです。
⑥看護師、看護助手が患者の身の回りのケアも行う。
オムツ交換・体位変換・口腔ケア・トイレの介助全て行います。ナースコールかかって来いです!(でも、本来なら患者がナースコールを押す前に先回りして対応するのがプロフェッショナル)

|ベトナムでは・・・

デポジット制が基本です。
治療前の問診は、症状の確認よりも支払い能力の有無から入ります。


①国民皆保険制度は、あります。

国民健康保険があり国民全員が加入することになっていますが、
未加入者数は30%(JICA ベトナム国健康保険制度に係る情報収集・確認調査2017 より)
ただ、国民健康保険で日本との大きな違いは、
原則3割負担の日本に対し、 国民保険のカバーできる範囲が実際に治療を受けたところのみということ。
つまり・・・
「ある日、具合が悪く、受診にきました。」
医師  :今日はどうしましたか?
わたし :お腹が痛くて下痢が止まらないんです。
医師     :そうですか。採血をおきましよう。
・・・・検査後
わたし   :どうでしたか?
医師    :検査結果みても異常と言えるものは無かったです。そのうち下痢も止まると思うから、水分をよくとってお家で休んでください。
支払い窓口:今回の診療代金は、〇〇〇〇VNDです。
わたし :わたしはベトナムの公的健康保険に入ってますが、自己負担はどのくらいになりますか?
支払い窓口今回の受診料は全額です。なぜなら検査の結果、異常はありませんでしたから。
わたし :と言うと、どう言うことですか?まだ状況が掴めてないのですけど。
支払い窓口:もし、内服薬や点滴が必要になったら保険でカバーできました。検査費については、カバーできるのは診断に必要になった検査項目だけとなります。
例えば、もし今回の結果が何かしらの食中毒だったとしても
今回の採血では、一通りの項目を行いましたが、肝臓機能を測るALT(GPT),AST(GOT),γ-GTPは直接診断に関係ないとされるので、そのような検査項目に対しては健康保険ではカバーできません。
わたし :(ということは、これは結果論会計制度・・・?)
  ・・・わかりました。お支払いします。

これにより病院に受診に行く人より、近くの市販薬で経過を見る人がとても多いようです。
実際ベトナムの人は、具合が悪いとまず近くの民間薬局に行き、薬剤師に必要な薬を調剤してもらって自己治療することが多いです。
しかも、その薬局にいる人が薬剤師とは限りません。薬剤師の大学を卒業したことのない人が白衣を着て普通に薬を売っていることがあります。それでも、症状に対して薬を選択し、処方します。

②道で人が倒れたり、交通事故現場に遭遇しても…

一次救命処置とりません。それは、「倒れている人には触れてはいけない。」と言う考えが根強く信じられているからです。
そのため、脈・呼吸の確認や心肺蘇生法などをできる人がまず、いません。
あなたがもしベトナムで急に倒れたり、交通事故にあったりして助けが必要でも、ベトナム人は何もできることがないと、意識がなく倒れているあなたをそのままにするか、救急車を呼んでくれても到着まで何もせずそばで立っているだけとなります。(それに交通事故であったら加害者はその間にいなくなっていることがほとんどです。)
私も何度も交通事故現場に遭遇しましたが、負傷者の知人のような人もみんな何十人の野次馬とともに、ただ倒れている人を囲むように立っているだけでした。
それは非道徳とかだけではなく、それが最善策だと考えられているからです。
ベトナムの人は正しい応急処置の方法も、救急車がくる間にできる対応があることも、その場の対応によって救命の可能性に大きく影響するという正しい知識も持っていないのが現状です。
ただでさえ救急車の到着にも時間がかかるというのに・・・

③これらの医療に従事する専門性を求められる職種に対して国家資格制度はありません。

④衛生的には管理されていません。患者にプライバシーもありません。

病院の至る所に血液が付着しているガーゼのようなものや、ゴミなどが落ちていることがあります。混雑時には1ベットに患者2人も日常的にあります。家族は住み込みでケアをしますが家族用のベッドはなく、患者用ベッドの下や廊下にゴザを引いて雑魚寝をされているような状態です。
日本であるようなベッドごとに仕切るためのカーテンもありません。
*プライベートインタナショナル病院やクリニックはまた別です。

⑤病状やアレルギー、内服しているお薬まで考えて必要な栄養を考えた食事が1日3食出てきません。

全く管理されていません。
患者やご家族が自分で食べたいものを勝手に買って来て食べます。
栄養士が必要なカロリーを考え、内服中の薬との相性や、アレルギーなどを配慮し、流動食から常食と病状の経過に合わせて、食事が出てくる・・・ことはありません。

⑥看護師や看護助手がオムツ交換から身の回りのケアまで行うことはありません。

家族が全部ケアします。看護師は治療面のみのケア。また、点滴の交換も看護師が時間を合わせて来てくれることもありません。夜中だろうが、どんだけ苦しかろうが、患者側からナースを呼ばないと交換にきてくれません。それで点滴の針先が詰まってしまっても看護師は悪くありません。
呼ばなかった患者や患者家族の責任となります。
(日本での病棟看護師として働いていた時、体位交換・オムツ交換・口腔ケア・トイレまでの介助・先生のむちゃぶり指示に髪を振り乱しながら奮闘することが普通だと思っていたので、看護師の立場では羨ましいと思ってしまいました。なんか・・・絶対楽でいいだろうなと。不謹慎ですが。。。)
そのため、家族の誰かが入院することになれば、家族の誰かが病院に付き添いで泊まり込みになります。
病院が家族にベッドを貸し出すこともないので、廊下にはゴザを引いて横になっている人で両端が埋まっています。
ナースコールもありません。何かあれば看護師を探して呼びに行かなくてはならないです。
(あのトラウマになるようなナースコールが聞こえない病棟なんて羨ましいna。日本での病棟勤務時は、家に帰った後も聞こえて来るほど恐ろしいものだった。)

ベトナム医療の現状は30年以上も前の日本に近い

私も、日本の方のベトナムでの入院経験を書いた記事を何度か読みましたが想像がつかないし、ベトナムの友人の弟のお見舞いに行った時に、このことか!とびっくりしました。
岩手から出稼ぎに来た田舎の娘だった私の母の新人ナース写真を思い出しました。
もう母は元気に65歳になりま。
65歳の超ベテラン看護師の新人時ですから日本の30年以上も前の姿です。
看護師はナースキャップをかぶり、通気性のないようなワンピース白衣を着用し、針刺し事故予防策も皆無なパタパタサンダル使用。
常夏のベトナムで扇風機がかろうじてある待合室(扇風機付近のな場所しか風を感じることができない。)、血液が付着したアルコール綿のようなものが落ちている廊下、またそこにゴザを敷いて横になる家族、和式で外まで匂いが漏れているトイレ(トイレットペパーがついていない。)、1ベットに雑魚寝状態の患者。
この状態は本当にローカルの大部屋の状態の話で、お金を払えば待ち時間なく受診ができたり、エアコン付きの個室に入ることもできるVIP対応もあります。

最近では、ベトナムの方でも自国の医療の質に疑問を持つ人も多く、私の周りのベトナムの友人も国際病院に行く人がほとんどです。
もっとお金を持っている方はタイやシンガポールなど海外で治療を受けに行くほど。
しかし、経済的な理由でみんながそのようなレベルの高い医療を受診できるわけもないですし。
ベトナム医療の全体の質を上げるのが一番ですが、日本でもODA・JICAで1974年のベトナム戦争終戦前からチョーライ病院新棟を設立(このチョーライ病院は現在でも南部の拠点病院となっています。)、その後も医療機材の供与・技術指導・施設整備・人材育成など国レベルの援助を行い続けていても、いまの現状であるんだから、これが日本のような医療水準までになることは簡単じゃないぞ!いうことですよね。

以上、これらすべてがベトナム医療の当たり前。
*これは、ベトナムの公立病院はベトナム系インターナショナル病院、公共医療サービスのお話です。
ベトナムでは、日本と違って公立病院とプライベート医療機関では、医療の質やホスピタリティーのレベルがまったく違います。
ここにいる日本人や外国人のほとんどは、プライベートインタナショナル系の病院や日系クリニックを受診しています。

次回はこのようなベトナム でのもしもの時に備えることについて考えていきます。

つづきは、こちら。
「ベトナムで安全に過ごすために必要な7つのこと」  


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