毎週ショートショートnote〜新説なピン札

「幸運」

雅は、退屈な毎日を過ごしていた。
特にこれといって趣味もなければ、
特技もない。

ある日、ネットを検索していると、
こんな記事が目に入った。

<新説 都市伝達 幸運のお札>

どうやら、流行りの謎と不思議系らしい。
雅は読んでみた。

<ピン札の1万円、番号がゾロ目なら幸運>

雅は普段疑り深い性格なのだが、
何となく気になってしまった。

財布を開けてみると、
1万円が1枚もなかった。

そこで、近くの銀行へ下ろしに行くことにした。

ATMを操作して出てきた札は、
ピン札だったが、残念ながら番号はバラバラだった。

雅はがっかりしたが、1回ではわからない。

出てきた札を入金して、
再度引き出す。

何度もそれを繰り返したが、
なかなか出てこなかった。

時には一旦中断して、列の後ろの人に譲りながら、
1日中試した。

そして、とうとう引き当てた。
綺麗に数字が並んでいる。

雅は大喜びだった。
これから来るかもしれない幸運が待ち遠しかった。

家に帰って暫くすると、
ドアホンが鳴った。

「すいませ〜ん。
宅配便です。
代引きで9800円です」

雅がドアを開ける。

「あっ、代引きで届いております。
受取期限は今日までとなっていますね」

宅配業者は笑顔を交えて言った。

そういえば、ずっと荷物が届いているとの通知があったのだが、
すっかり忘れていた。
かなり前のもので、期限の今日以降受け取らないと送り主に返されてしまう。
そして、キャンセル扱いになるのだ。

雅は急いで財布から札を出した。

「はい、1万円でお釣り200円ですね。
あとこちらに印鑑かサインいただけますか?」

宅配業者に促され、雅は押印する。

「はい確かに。
こちらお荷物ですね。
ありがとう御座いました」

宅配業者はお辞儀をすると、帰っていった。

「あっ・・・」

雅は気づいたように愕然とした。