うたスト小説〜曲D

「チーちゃんと不思議な森」

ここは草木も生い茂る薄暗い森の中。
チーちゃんという女の子が歩いていました。

「どうしよう・・迷子になっちゃった」

チーちゃんは、金色に輝く花があると聞いて興味津々。
その花を探しに森に入ったのです。
そしたら、迷子になってしまいました。
いつもならオヤツの時間です。
森の中なので、少し薄暗くなっています。
このままだと真っ暗な夜になってしまいます。
チーちゃんは、暗くなる前に帰ろうとしていますが、
出口が見つかりません。

チーちゃんはしばらく歩くと大きな木を見つけました。
少し休もうかな・・。
疲れてきたので、木の根っこに腰かけました。
チーちゃんは途方にくれました。
木々の隙間から見える空はまだ青く明るいです。

「やあ、君、どうしたんだい?
こんな森に来るなんて珍しいね」

何やら声がしたので、振り返ると、
なんと大きな木が喋っていました。
木に目、鼻、口があります。
絵本で見たことあるそのままの顔です。

「見てわからないかな?
迷ったんだけど」

チーちゃんは絵本で見たことあるそれに驚かず答えました。

「そうなんだ。
じゃあ、この先に看板があるから、そこまで行ってみるといいよ」
大きな木は優しい口調で言いました。

「うん、わかったありがとう」
チーちゃんは淡々とお礼を言うと、
大きな木の幹をそっと撫でました。
大きな木は照れくさそうに笑っています。

大きな木を後にしたチーちゃんは、
しばらく歩くと看板を見つけました。
道が二つに分かれていて、看板にはこう書かれています。

「←正しい道はこちらです。
右へ行ってはいけません。」

「正しい道はこちらです。→
左へ行ってはいけません。」

????
チーちゃんは、どっちへ行ったらいいかわからなくなりました。
大きなため息も出ます。

「やあやあ、どうしたんだい?」

どこからともなく声が聞こえてきました。
声の方を見ると、小人の妖精が立っていました。
妖精は大きなエンドウ豆を抱えています。

「この看板意味がわからないんだけど、何なの?」

チーちゃんは、また淡々と言いました。

すると、妖精がケタケタと笑って言いました。

「看板には正しい道への案内が書いてあるよ」

イジワルな妖精さんです。
チーちゃんはムッとしました。

「どっちも正しくて、間違ってるからわからないよ」

チーちゃんは妖精を睨みつけて言いました。
妖精はまたケタケタと笑いました。

「じゃあ、ヒントをあげる。
2つの看板は同じこと言ってるよ」

妖精はエンドウ豆をポンポンと上へ投げたり、
キャッチしたりしています。

「ゆっくり考えてね」

妖精はそう言うと、ケタケタ笑いながら消えてしまいました。
チーちゃんは、妖精の態度にガッカリしました。

「そうだ、落ち込んじゃダメだよ」

チーちゃんは、もう一度考えてみました。
どっちなんだろう・・・
看板を何回も読みました。

「あっ!こっちだ」

チーちゃんは、閃きました。
その道を辿っていくと、見事に森を抜けました。
さっき入った場所とは少し離れていたけど、
チーちゃんが住んでいるいつもの景色、いつもの空でした。

チーちゃんはどの道を歩いてきたのでしょう?

答えは、簡単。
看板の矢印の先は、右でも左でもなく真ん中の事を指しています。
だから、右にも左にも行ってはいけないと書いてあるのです。