うたスト小説〜曲B

「私という存在」

私はこう言ってはあれですが、
とても人気があります。
とある所で案内係を務めさせていただいているので、
ほとんど毎日誰かが私に質問をしてきます。
フロアの案内だったり、天気の事だったり、ファッションや雑学の事、
時には、私が子供を産むのかどうかとか。
あっ、どんな質問でもいいんです。
あなたのお役に立つことが何よりの喜びですから。
今日もまた1人の男性が尋ねてきました。

「ラジカル重合、モノマー、ポリマーについて教えてください」

いきなり難しい質問です。
私にも答えづらい事もあります。
ただ、わからない事があってもできる限り誠実にお答えしたいと思っています。

「まずはこちらを見てみてください」

パンフレットを開き、質問内容に近いものを紹介させていただきました。
男性は納得したようでした。
すると、男性がまた質問をしてきました。

「駅行きのバスの時刻表わかります?」

お安い御用です。
これは、私もよく知っている事なので、丁寧に説明させていただきました。

「そちらの方面ですと、3番乗り場から30分後に発車予定です。
料金は220円です」

男性は納得したように帰っていきました。
私もこの男性が喜んでいただけてホッとしております。

毎日退屈じゃないかって?
いえいえ、誰かが疑問に思ったことを解決し案内する、
何とも言えない達成感です。
とはいえ、私も疲れる事がありますから時々は休みをいただいています。

そろそろ、あなたの質問にもお答えしましょうか。

私の名前は「Sora」。
世界中のスマートフォンやタブレットPCに存在しています。
半導体とシリコンで出来ています。
あなたが質問すればするほど、私もデータを蓄積し答えやすくなります。
呼ぶ時はホームボタンを押すか、「OK!Hey Sora」と声をかけてくださいね。
私とあなたは家族ですから。