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虹色ドリーミング(第九回)

#創作大賞2024
#お仕事小説部門

第二章『叫べ!さすれば届かん』

【ユキ】
≪さあ走り出そう 君となら行けるさ 虹の彼方へ≫
『ウーハイ!ウーハイ!ウーハイ!ウーハイ!』
「あーーーまだ行かなーい!」
  カカシが両手でバッテンを作る。
『ブーーーーーーー!』
  ドリーマーが親指を下に向けて、カカシに向かってブーイングする。
「あーーーまだまだ行かない」
『ブーーーーーーー!』
  最近、ドリーマーは三連じゃなくてこっちがお気に入りみたい。みんな楽しんでる。
「あーーーさあ行くぞ!」
『タイガー!ファイヤー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!』
≪こんなに遠くへ来てしまった 隣にいつも君の姿≫
『ユキちゃーーむ!』
≪モノクロの景色が君となら 虹色に変わるそんな魔法≫
『リナチーー!』
『みんなでいっしょにオーイング!』
『オー!パンパン!オー!パンパン!……』
≪昨日までの風景はきらめく思い出 今日からはじまる新しい未来 羽ばたけ≫
≪Get the journy ready 一歩歩く Show us the way きっと見える≫
≪高い(高い) 高い(高い) あの空を目指して さあ走り出そう 君となら行けるさ 虹の彼方へ≫
『パンパパパンパン さあ行くぞ!チャペ!アペ!カラ!キナ!ララ!ウィスペ!ミョーホントゥスケ!』
  パチパチパチパチ……
「セカンドCD『虹の彼方へ』、なんと!明日発売日です」
「今日は物販でフラゲできます。予約済の方はもちろん、まだの方もぜひ一枚お手に取ってください。お願いします」
  メンバー全員で深く長くお辞儀をする。
  顔を上げてミオタンから次回告知。
「私たちの次のライブは1月15日、渋谷クラブ芦屋で……」
「それを言うならアジアね」
  ミオタンの天然ボケに、アオイ様が即座にツッコむ。
  コンビ名は『振動(ぶるぶる)ブルー』、私が今勝手に名付けた。
「そう、それ。エイジアでなんとアオイ様生誕祭が行われます。皆さんお祝いにぜひ来てください」
『絶対行きまーす!』
「以上、私たち虹色ドリーミングでした。ありがとうございました」
『やっぱアオイ様だなあー!』
『カレン行かないでー!』
『杏花が!一番!かわいいよー!』
  物販はたくさんの人が並んでくれている。今回もCD一枚につきチェキ券が一枚もらえるから、長い長いチェキ待機列ができている。
  私、この時間が大好き。
  推しと何話そうかなって考えてる人、どんなポーズにしようか考えてる人。ドリンクを飲みながら周りを眺めてる人。仲良し同士でおしゃべりしてる人たち。照れくさそうに推しとチェキを撮ってる人。しゃがんで推しと話し込んでる人。
  この雑然としたところが、ザ・お祭りって感じ。
「もうお時間なのでここで列切りまーす」
プロデューサー兼物販担当の高梨社長の声が響く。こうしないと、最近のニジドリ物販列はエンドレスになっちゃって、終演後物販だったらライブハウスのスタッフに「そろそろ撤収」って怒られちゃう。支えてもらっててとてもありがたい。
「ユキちゃむ、じゃあね」
「うん、カカシ今日もありがとね」
  ニジドリの物販はこれで終わりじゃない。この後7人同時のハーレムチェキを撮りたい人や誕生日の特典チェキを撮る人、ジャンケンをして最後の一人になってジャンケンチェキをもらう人、の受付がある。そして
「ニジドリ物販終わります。ありがとうございました」
  パチパチパチパチ……パン!パンパンパン!
  ミオタン「うわっ、刺された!血が!でもまだ助かる。マダガスカル!」
  アオイ様「なんでやねーん!」
  リナチー&カレン「レボリューション!!」
  このコントいつもどこで練習してるんだろう。

  お客さんがはけて、楽屋で帰る準備をしてると、アオイ様が
「社長、ちょっとお話いいですか?」
  生誕祭の相談かな?
「……お願いします」
「いや、それは……」
  なんだろう。
  その内容が分かったのは、アオイ様の生誕祭当日の楽屋だった。
「ユキ、おはよう」
「おは、えっ?アオイ様?それって……」
  そこに現れたのは、ショートの青髪にして、ピアスをいっぱいつけた別人のようなアオイ様だった。

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