「青のフラッグ」7巻

登場人物全員大好きな漫画。もともとアプリの方で毎月無料で読めるのだが、好きすぎて単行本全部買っている。
あと個人的にはコミックスの、お話の間にあるキャラの獣化シリーズが一人一人わかりすぎてたまらなく好きだ。毎回楽しみにしています。

ネタバレバンバン出しますのでまだ読まれてない方は本作を読んでからお進みください。



6巻の怒涛の展開をうけてもなお、物語の加速度はぐんぐんと、でも静かに上がっている。7巻では、トーマと太一2人より、その友だちたちの思いが交錯していく。
本当に、全員がただ、切実に誰かを「好きだというただそれだけ」なのだ。

人気者のトーマの"ゴシップ"が学校中に広まるなか、トーマから告白され、なにを思えばいいのかわからない太一。そして、元気のない太一をただ心配し気にかけ続ける二葉。

二葉は、言えないことは言おうとしない。想像できない理解できないことを簡単に「わかる」と言ってしまえない。そして自分が、それを理解できないことに苦悩する人間だ。人は同じでないのだから理解できないものだってあるし、そんなのは過ぎた願いだと一蹴できてしまうかもしれない。46話のヨーキーは、そんな二葉の「弱さ」を指摘している。

「周りの環境がどうであれどう行動するか選択したのは三田だろ 空勢さんが気にする義理なんてねぇよ それはもう優しさではなく愚か」
「どんなに周りがやかましかろうと 今この瞬間にしかできないやるべきことを他人のために放棄するなんてことすんなよ」

ヨーキーは、賢いひとだ。


そしてこのセリフに対する二葉の思いは、またしても「ペン」を軸に話が動いていく。くるくると器用にペン回しをする太一をすごいすごいと二葉は言う。だがその言葉で、同じように「すげぇタイちゃん」と言うトーマとの記憶が思い出されてしまう。ただの幼なじみだった、友達だと思っていたトーマとの記憶。対して二葉が思い出すのは、3人が仲良くなれたきっかけであるバトル鉛筆だ。ここでも2人の思いが交錯していることをよく表していてとても切ない。

「二葉はなんでオレのこと好きになったの?オレのどこが好き?」
「太一くんこそ…」

2人がノートに書く文字と、目線、表情だけで互いの純粋な恋心が描かれていく(太一の上目遣いには私もドキッとしてしまった、作者の画力には本当に毎度驚く)。まちがいなく幸せな時間だ。
だが二葉には、その幸せでさえ不安になる。

この気持ちは傲慢でしょうか
それでも痛むこの気持ちは
行き場のないこの痛みは
何かを憎めたら楽なのでしょうか


そんな二葉のことが好きな真澄。トーマの一件で真澄の気持ちもずっと不安定に揺れ動いていた。
45話、二葉の言葉がきっかけでマミが真澄の気持ちに気づいたが、マミに「きついのはわかる」と言われた真澄の顔は一気に険しくなる。真澄の今までの思いはこのセリフに集約されるだろう。

「解るわけないでしょ アンタに 一緒にしないでよ」
「あんたに何が解んのよ 何も知らないくせに 私のことなんて 何も解ってないくせに」

大切な人にずっと言えないことがあった、本当の気持ちを押し殺してきた、この悲しみを、この罪悪感を、「普通側の人間」が解るわけない。
そうやって強く拒絶する真澄を、マミもまたドストレートな言葉でぶつける。

「気づくわけないじゃん バカにすんなよ 気ぃ使えるわけないじゃんか」
「アタシだって 気づきたかったのに」
「わかりたいよ 一緒じゃなきゃ 同じじゃなきゃ 理解できないとか 共感できないとか んなこと言われたって…」
「同じになれないじゃん アタシだって…なりたいよ でもムリじゃん ムリだし ねぇ なれないじゃん アタシだって…」

当事者じゃない。だからって、諦めたくない。わからないけど、せめて歩み寄りたい。一緒にはなれないけど、せめて隣にいたい。
それぞれ思う人は違えど、真澄とマミは「当事者」と「当事者の周り」という立ち位置だ。ここでも思いは交錯している。
泣きながら切実な思いを絞り出すマミの脳裏には、トーマの笑顔がチラつく。トーマのことが好きで、大切だから、気づきたかった。でも気づけなかった。どれだけ悔しく、不甲斐なく思っただろう。マミはいつだって自分にも、人にも誠実だ。直球の言葉にある痛いまでの誠実さが、真澄の苦しみを涙にしていく。


さて、トーマと太一の2人以外が大きく動いた7巻(特に真澄とマミ!)。次は、2人の番だ。だんだんとクライマックスに近づいているような気がしてはやく見たいような、見たくないような、変な気持ちになっている。でも見たい。号泣する準備はできています。楽しみです。

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