Step

甘えるのがとんと苦手だ。相手に悪いからじゃない、1人でなけりゃ怖いからだ。だれかに寄りかかって、少し浮いたまんまで、そんなのできない。と思う。呆れるくらい臆病なのだなと毎日実感している。



知り合いの男が「ある日優しそうなきれいなお姉さんが『養ってあげるから一緒に住まない?』って言ってきたらおれ『はい!』って答えちゃう自信あるもん」と言っていた。そうか。と苦笑いした。






好きな男も甘えるのがとんと苦手のようだ。

それでも、ほんの一瞬、私に触れようとする。
私といるとき、あの人はどうしたらもっとも自然に私に触れられるか考えている。想いがもれて、完全に伝わるか伝わらないかのところで、引く。素直じゃないのもまた素直だろう。
そして私も、それにちゃんと見ないふりをしてしまう。安心など与えて何になるというのか、重々承知しているはずなのに。お互いがあと一歩ずつ踏み込めば、全てよくなるのに。


お互いばかみたいに甘えている。

私はあなたの髪の毛だけじゃなくて、顔の輪郭をなぞりたいし首筋だってさわりたい。薄く薄く脂肪のついた長い四肢も背骨も。あなたはどう。


ほんとうにめんどくさい。めんどくさいとか思ってるくせに諦めきれない私もめんどくさい。
さすがに、けじめをつけなければならない。

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