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たとえバケモノでも 「嘘つき姫と盲目王子」 二次創作小説01

たとえバケモノでも

「王様、お客さまデスよ」
サカサはそう言うと、そっとわたしの肩を押してくれた。
わたしは少々おどおどしつつ、謁見の間に入る。
「おや、姫」
王様ドラゴンが、丸い目を丸くして言った。

「なるほど。男の子の気持ち……」
「はい。お忙しいところすみません」
わたしは謁見の間の奥、王様ドラゴンの私室に通された。と言っても洞窟の中なので、調度品などが揃っているわけではない。だけど居心地の良さそうな空気に満たされている。
「王子、ですね」
「お察しのとおりです」
姫の姿は、魔女に取り上げられたままだ。わたしは自分でも自信のなくなる、醜いバケモノオオカミの姿。それでも王様ドラゴンは、わたしの気持ちをくんでくれたようだ。
「ニンゲンの姿でいられたときは、その、わたし。王子の気持ち、わかるって思ってたんですけど。いざ、元の姿に戻ってしまうと、これっぽっちも自信が無くなってしまって」
うんうん、と王様ドラゴンはうなずく。
「わかりますよ。わたしも娘のゆうに、どう接していいのかわからないときが多々あります」
「おんなじなんですね」
「ですねぇ。なので、できるだけお役に立てることをお伝えしたい」
わたしもうなずいた。

「さてさて。男の子の気持ち、一般論になってしまうかもしれませんが。多くの男子は、『わかってくれる』・『話を聞いてくれる』お相手に、ときめくことが多いように思います」
「共感、ですね」
「それです。王子もそのへんの思いは、持っているでしょう」
ふむふむと、わたしは頭に入れていく。
「それと、もうひとつ大きいのが。『プライド』かもしれませんね」
「自尊心?」
「そうですそうです」
プライドかあ……。王子なりのきっと、あるんだろうな。

「その。話を聞くことはできると思います。でも。——わたしみたいな、バケモノオオカミがお付き合いできる、んでしょうか。プライドにふさわしいと言うか」
言葉がしりすぼみになってしまった。
だけど、王様ドラゴンは安心させるように笑顔を浮かべた。
「姫と王子の、冒険のお話はよく知っています。これが一番、大切なのではありませんか?」
「——大切?」
「そうです。ときに危険を孕んだ、その同じ時間を過ごした王子にとって。姫は何よりの理解者になっていると。わたしは思いますよ」
「そっか……」
「いやはや、どうも自分の話ばかりで申し訳ない。ですが、姫はもうとっくのむかしに、王子の心を射止めていると。見受けられますが」
「そうでしょうか?」
うなずいて、王様ドラゴンは視線を上に向けた。わたしも見上げる。洞窟の一部がひらけていて、蒼穹がギザギザに見えた。
「でなければ、一緒に思い出の岩場で。過ごす時間は持たないでしょう」
「はい」
「いやどうも、話が回りくどくなっていけない。わたしのわるいところですな。——姫」
「はい?」
「その姿を、醜い・王子と不釣り合い、そう思っておられるようですが。だからこそ、ですよ」
「だからこそ?」
「もし王子が。姫を、外見で判断するような男の子であったら。今はもう、会うこともないのでは」
「……」
「王子は。姫の内面を好いているのですよ」

頬が熱くなってしまった。それを見たのか、王様ドラゴンはやさしく笑う。
「どうか。安心して王子と共にいてください」
「バケモノでも?」
「バケモノでも」
「はい」
「少しずつでも自信を取り戻された姫は、とても美しいですよ」
なんだか泣きそうになってきた。

わたしは丁寧に、時間を割いてくれたことの礼を述べ。入るタイミングを見ていたのか、案内してくれるサカサにもお礼を言った。
(バケモノでも)
(王子)
(わたしは王子が好き……!)
王様ドラゴンと話す機会があって、良かった。
醜くても、『わたし』であること。それを忘れないようにしていこう。

おしまい


こんばんは。
創作活動はやっぱり嬉し楽しい、ともみです。

さて、今回はこちらのnoteでは初めてになる(はず)、「嘘つき姫と盲目王子」の二次創作小説です。
確かこれって、「文庫ページメーカー」でTwitterにだったかな、もしかしたらお世話になってるDiscordサーバだったかも。まあとにかく、以前に書いたものです。

なんでいきなり載せたのかと言うと、自分でもわからないのです。ただ、ふと思い出して「ここに保存したはずー」とかフォルダの中ひっくり返して無事に見つけられて。読み返してみたら、「書いた記憶」が全然無いんですけど。でも感覚的に「載せちゃお」って。

簡潔に言いますと、難しいことは考えないで気が向いたから、でしょうか。

そんな、「嘘つき姫と盲目王子」の二次創作デビューです! 「わるい王様とりっぱな勇者」のは、前に載せた気が、するから……。思い出せないけど。

解離性健忘も、なかなかに困りますね。いろんなこと覚えていられない。だから「障害」なんでしょうけど。

そんな感じでおしまいです。
根気よく読んでくださって、ありがとうです!

未熟者ですが、頂戴いたしましたサポートは、今後の更なる研鑽などに使わせていただきますね。どうかよろしくお願い申し上げます。