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製造業の強固なピラミッド

硬直化した構造

私の顧客は多業種にまたがっていますが、中でも製造業は200社を超えるリストがあります。それは3年前に継承した事業が製造業対象だったためですが、それまであまりその業界とは接点がなかった私としては、単に商品を売ることではなく、自分の持っている知見(EC、マーケティング)をどうやって組み合わせることができるか、どんな新しいことができるか、そのためにまず顧客を知ろう。そんな思いで顧客に接してきました。

その間、じっくり見てきて感じるのは、製造業の強固なピラミッド構造です。

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図にするとざっとこんな感じ(商社のポジションはケースバイケース)。雑すぎるのは自分でもわかってますので、突っ込みは無しで。こういう構造からわかるように、間に入るところが多すぎるのです。これは他の業界でも多かれ少なかれそうですが(ソフトウェア開発も含めて)、製造業界隈のそれは、強固にこの構造が守られているのが特徴です

例えば展示会にしても、来場客を招待するのは商社かその代理店だけで、中でメーカーの商品を見て気に入っても、直取引をすることはできません。必ず招待した商社のひも付きになります。その商社は、ほとんど接点のない会社にも招待券を配りまくります。自分の会社を経由して買ってくれるところを増やすためです。すべてにおいて、このような仕組みが浸透していて、中間にいる業者を守っています

取引先の社長から、以前こんな話を聞きました。ある案件でクレームを受け、大量に検品をしないといけないとのことで、急ぎ発注元に行ったところ、そこにはなんと自分を入れて14社集まっていたとのこと。つまり、中間に13社いた案件だったのです。当然、中には何もせずにペーパーだけ通している会社もたくさんあるでしょう。結果、実際に加工をする段階でどれだけ利益が薄くなるかは、想像に難くありません。

13社は私も初めて聞くレベルの特殊な事例ですが、こんな構造では金属疲労を起こすのは当然ともいえます。

「金属疲労」の元凶

すでに少子化、超高齢化はのっぴきならないところまで来ています。毎年30~40万人も人口が減る中で、製造業は人材を確保するために現場環境を良くしたり、労働集約率を下げようと自動化設備に投資したりと、様々な取り組みをしていますが、それには相当なコストがかかります。それが出せる会社はまだいいですが、出せない会社はすでに諦めモードです。

ただ、そのままでは他の人にしわ寄せがきて、その人も辞めていく。結果、仕事はあるけど人がいないので、外部にやってもらうしかない。でも、これまで「仲良し価格」でやってくれていた高齢者はどんどん辞めていってるので、出すところを探すのに一苦労。それ以外のところは、価格が合わない

私のところに相談に来る製造業の方も、この手の悩みを常に抱えています。実際、外注先として私のお客様を紹介して、取引が始まっているところもいくつかありますが、多くの場合、価格が合いません。根本的に儲からないのです

その原因はもうわかりますよね。このピラミッド構造が原因です。これにより、商社を経由した仕事が儲からない構造になっています。製造業は、中国やベトナムなどの海外に仕事を「取られる」のが問題視されてきましたが、これは取られているのではなく、商社が1円でも安いところに「出している」というのが正しい表現です。そして、中国の単価がアップしてきたら、それまでの中国価格で日本の零細工場(多くの場合、高齢者)にやらせようとする動きもあります。

しかも、どうでもいいですが、彼らの態度はだいたい傲慢です。「出してやる」感満載です。

どこにポジションを置くか

こんな旧態依然とした連中と距離を置くには、自らこのピラミッド構造を破壊するしかないのです。破壊というか、ピラミッド構造は変えられないので、その中でポジションを変えるのです。どこにポジションを変えるか。

ひとつは、ピラミッドの頂点、メーカーです。商社になるには、メーカーとのパイプが必要ですし、それがあってもなかなか取引には結びつきません。ならば、自分がメーカーになるのです。ピラミッド構造は強固ですが、メーカーにはなれるのです。会社での出世が年功序列に阻まれているのなら、独立して一気に社長になるのと同じです(ちょっと違うかな)。

ただし、製造業は一社ですべて完結できるわけではありません。工程ごとに、それぞれの分野に強い企業と役割分担する必要があります。そのマネジメントもそうですが、同時に、これまで「作る」ことに意識を集中していたものが、今度は「売る」ことを学ぶ必要が出てきます。ここがメーカー化の最大の壁でしょう。

さらにその前に、「何を作るのか」「何が必要とされているのか」を知る必要も出てきます。その辺は次回以降で。

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