著作権に注意していても痛い目にあった話

Webで何らかの発信をしている人であれば、必ず「著作権」は意識して仕事をしていると思います。しかし、注意していても痛い目にあうこともあって、今回はそんな実話をシェアします。

いつも頼んでいる会社に外注

以前から付き合いのあった□□社のWeb制作案件があって、社内の人員が別案件で詰まっていたので、外注に出すことに。そこは大阪の制作会社A社で、私自身は面識がなかったのですが、幹部社員の一人が社長と仲良くしていて、過去に何度もやってもらったことがあります。

その案件でも、いつもの通り委託契約を結びました。何度も出しているので、過去のものをベースに修正する感じですが、そこには著作権に関する項目も当然あって、「万が一、著作権違反が発覚したら、乙(A社)が賠償する」と明記しています。

ここまでは普通やると思います。もし外注と契約書を巻いてない場合は、後付けでもいいので、即刻巻いてください。なぜ後付けでも即刻必要かは、先を読めばわかります。

最初の著作権違反

その案件を納品して何年か経ったある日、著作権管理会社(テレビで有名人の写真が出るときに必ず下の方にコピーライト表示されている会社のひとつです)から連絡があって、「〇〇社のホームページを制作されたのは御社ですよね」と。〇〇社は、上記の□□社とは別の会社ですが、確かに私の会社が請けて、デザインを外注した案件です。

「このホームページは〇年〇月に公開されたもののようですが、ここにある画像に著作権の侵害が見られます」

「つきましては、これまでの無断使用期間を計算すると、20万円になります」

すぐに担当営業に連絡して事情を聞くと、外注先は大阪のA社。契約書を確認すると、ちゃんと著作権に関する項目は明記されています。すぐにA社の社長に連絡すると、「担当したデザイナーにそのような認識がなかったようで、管理不足で申し訳ない」と平謝り状態。

A社の社長には「これ以外の案件も、念のため著作権は再度チェックしてくださいね」とお願いし、後日確認すると「問題なし」とのこと。お金もすぐに払ってもらい、一件落着。かと思われました。

消えたA社

それから数年経って、今度は別の著作権管理会社(ここも大手)から電話。今度は、最初に書いた□□社の案件で著作権違反。しかも2つの画像で。外注先は、またA社。他の制作物も確認するように言ったのに。。。

指摘されたそれぞれの画像を見ると、ひとつは何の変哲もない風景写真。もう一つは、あってもなくてもどっちでもいい小さなアイコン。公開した期間は確か5年。金額は60万円。正直、こんな画像でまた違反金。この会社いったい何やってんだ。。。そんな気持ちで、ため息とともにA社にメールしました。こういう話は、記録を残すためにメールに限ります。

でも、一向に返信がありません。あれ?と思い、A社に電話しました。そこで聞こえてきたのが

「現在使われておりません」

の音声。一瞬で嫌な予感がしましたが、実は制作物のクオリティがいまいちで、前回の著作権違反もあり、もう数年間仕事を出してませんでした。その間に移転したに違いない。そう自分に言い聞かせ、担当者に社長個人の携帯番号を聞きました。

しかし、その期待も空しく、連絡がつきません。元々、その会社と知り合った経緯を聞き、紹介してくれた人がいたということなので、その人に望みを託してコンタクトを取りました。

まあ、ここのプロセスを引っ張ってもしょうがないし、ここまで読んでだいたいわかると思うので結論を書きますと、A社が消滅していました。経緯や時期は全く不明ですが、すでに存在がなくなっていました。

契約書はもちろんあります。著作権違反は、A社が責任を持って賠償すると明記されています。しかし、A社がすでに存在しません。となると。。。

賠償金は誰が払うのか

そのクライアントが自社のサイトで使っている画像に著作権違反があったということは、法的には賠償責任はあくまでクライアントです。もし私の会社が賠償を無視したら、そのクライアントに請求が行きます。と言うよりも、管理会社は最初はクライアントにコンタクトを取ります。そこから外注(当社)→外注(A社)と連絡がいくわけですが、管理会社からすればあくまで相手はクライアントです。でもそれは、クライアントからすればやり切れない話。著作権は、著者が作品を作った時点で自然発生するもので、どこかに登録されているわけではないので、一つ一つを自社で調べるなどほぼ不可能です

しかし、当社にしてもそれは同じで、さらに

・画像や文章は著作権をクリアしたものであること
・万が一、著作権違反があれば、A社が全責任を負うこと

という契約書を巻いていて、その相手がいなくなったので自分が払う羽目になるとは、これまたあまりにひどい話。しかも、存在すらわからなかったようなアイコンや、何の変哲もないイメージ写真で60万。

一連の経緯を、件の著作権管理会社に話し、それってうちが支払うの?と泣き言を言うと、「法的には□□社様(クライアント)です。御社がお支払いにならなければ、□□社様に請求させていただきますので、当社としてはどちらでも結構です」と機械的な反応。

でも、これをクライアントに負担させるのはおかしい。それはできない。

何度も何度もその管理会社の担当者と話し合ううちに、その人もだんだん機械から人間に変わっていき、「そうですねえ。。。御社としても、細心の注意を払ったうえの不可抗力なので、納得できないお気持ちはわかります」と軟化してきた。

よし!あと一押しだ。もしかしたら免除してくれるかも。そんな淡い期待を胸に、再度「これ、なしになりませんか??」と聞くと「いや、私どもは著作者から著作物を預かって管理している会社なので、著作者様を守るためにもなしにはできません」と、機械に逆戻り。

「ただ、今回のケースは御社にも落ち度はないように思えますので、少し上席と相談させてください」

きたー!機械から一転して人間宣言。「はい、ぜひよろしくお願いいたします!」とテンション上げると、「いや、なしにすることはできませんので」と、また機械音声。機械とか人間とか忙しいなもう。

結果、半額の30万で決着し、当社がお支払いしました。もちろん、このようなやり取りがあったことは、クライアントの□□社は一切知らないと思います。

しかし、それにしても、本当にくだらないアイコンと素材写真で30万(本当は60万)。これ、年数に応じた金額なので、発覚が遅れるとさらに高くなります。もしかしたら、前から知ってたけれど、金額を上げるために放置していたのかも、と邪推したりもしますが、それはどうかわかりません。

防ぐ方法はあるのか?

外注する時は、著作権に関して明記した契約書を締結する。それは当たり前。しかし、それ以外に、今回のようなケースを防ぐ方法はあるでしょうか?

著作権管理会社は、画像検索で四六時中チェックしているようです。外注した場合、自社でも同じことをやらないといけないのでしょうか?ひとつのサイトに使われる画像の数なんて膨大にあります。そんなの、とても現実的ではありません。

もし、他に防ぐ方法があったら、ぜひ教えてほしいのですが、せいぜい外注先の経営状況をチェックするとか、より信頼関係を構築するとか、それくらいしかないように思います。やっぱどこでも起こりうるリスクだと思うんですよね。どうでしょう??

あるいは、フリーランスを紹介するプラットフォームを経由して仕事を依頼すると、もしフリーランスが違反した場合、プラットフォーム側が何らかの補償をするとか(ないか)、その関連の保険があるとか。どうなんでしょうね。

そこで冒頭に戻りますが、もし外注先と著作権に関する契約書を巻いてない(仲のいい会社なら契約書なしで進めることもあると思います)なら、過去の案件であっても遡って巻いてください。たとえ画像一つの外注でも、もし違反していて10年くらい経っていたら、かなりの金額になります

という経験談でした。皆様も、くれぐれもお気を付けください。って、気を付けてもこうなる場合があるという話ですが。

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