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昭和の言い伝えから日本文化を考えてみた。

「救急車のピーポーって音が聴こえたら親指を隠せ」という言い伝えを聞いたことありますか?さもないと、親が早死にするそうです。同じ理由で、「霊柩車に出会ったら親指を隠せ」というのもあります。

子供の頃、父からおきてのように守りなさいと言われて、何の疑問も持たず守っていました。

昭和12年生まれの私の父は、科学絶対信奉者。目に見えないものは信じない、もちろんオバケなんか絶対いないと思っているタイプなのですが、何故かこういった迷信と呼んでいいような民間の言い伝えを、心底信じていました。

この、「親指隠せ」をふとした拍子に思い出したんですが、よく考えてみると、なぜ親指を隠すのか、なぜ救急車や霊柩車なのか...。ナンセンスとも取れるような言い伝えです。あんなに迷信を小馬鹿にしていた父が、頑なに信じていたのも不思議です。

この背景には、日本独特の身体文化があるように思います。

ある茶道の流派では、親指の爪を隠すように所作をしなさいと言われるそうです。実際にやってみると分かるのですが、指に力が入らないというか、手先だけでは何もできず、身体全部を使わないと所作として成り立たないことがわかります。

日本人は手先だけで何かをすることを嫌います。

「小手先」とは、「その場しのぎで、将来を見通した深い考えのないこと」を表すそうです。(デジタル大辞泉より)

親指を隠す行為には小手先で所作をするな、というような意味が込められているのかもしれません。となると、救急車や霊柩車が通るときに親指を隠すのは、いざという時に覚悟を決めて、ちゃんとした対応をしろということなのではないかと(私見ですが)。また、人差し指で人を指差す行為が悪さをするというのも、なんとなく分かるような気がします。

このような身体に関する言い伝えは、例えば他にも

「夜に爪を切ってはいけない(親の死に目に会えない)」「人を人差し指で決して指してはいけない(指された人に悪いことが起きる)」「柳の木の下では息を吸うな(魂を持ってかれる)」「緊張したら手のひらにのの字を書いて飲み込め」など様々です。

地域によって少しずつ違いがあるかもしれませんが、実はこういったナンセンスな言い伝えに、日本文化の独自性みたいなものが隠されているのかもしれません。いつかこういうものを集めて検証してみたいものです。




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