自転車で一杯のフォーを食べにゆく
ホイアンに訪れて2日目の夜、まだフォーを食べていないことに気づいた。ベトナムに来てフォーを食べないなんて。
残りの滞在日数と食べる予定を考えると、あまり時間がない。夫が「朝ごはんにフォー食べたらいんじゃない?」。
確かに、朝は比較的涼しいし、優しい味わいのフォーは朝ごはんにうってつけだ。5月のホイアンは日中は35度近くになるのに、レストランなどはあまりクーラーが使われていない。風量の強い扇風機があるけど、その風も生ぬるい。温かいフォーを食べるなら朝がいい。
せっかくならホイアンの街をサイクリングもしてみたいので、ホテルで自転車を借りていくことになった。軽い気持ちで、サイクリング。バイクカオスなベトナムでのサイクリング、後に甘かったと反省することになるとは思いもしなかった。
朝7時にホテルを出発。ホテルの周りは、まだ歩道があり問題なかった。なにより、朝は涼しいしので気持ちが良い。ホイアンの風を感じながらのサイクリングは最高!と思っていた。
だけど、こんな浮かれた時間は長くは続かなかった。
旧市街の方へ近付くにつれ、通勤の車やバイクの交通量が多くなる。バイクと混じって進んでいくけれど、流れに乗らないと危ない。スマホでナビを入れて走るけれど、上手く曲がれず、何回もリルート。
特に道を渡るのが難しい。信号もないし、常に向こうからバイクが走ってくる。用心深い夫は、何度もタイミングを見送る。関西人の私でもたじろぐ。無秩序にはある程度の免疫もあるけれど、それ以上にベトナムの交通事情はカオスだ。
きっと何かのルールがあるはず。同じ方向に曲がりそうな人の後に続く作戦にする。「次は流れに乗って、曲がるよ!はいい、今!」と夫をうながす。なんとか難所を乗り越えて、やっと目的のフォーのお店にたどり着いた時には、汗でびっしょりだった。
フォーのお店は比較的空いていた。さっきまでの混雑とは違い、ピースフルな空間だ。野菜や、スープが入った鍋があるキッチンになぜかほっとする。
お目当てのビーフのフォーを頂く。透き通った優しいスープは、身体にしみわたり、心をほぐしてくれる。ライムを絞って味変してみたり、やっとたどり着いた一杯のフォーは格別に美味しかった。普段は早食いの私も、夫と無事にこれたことをかみしめががら、ゆっくりとフォーを味わった。
タクシーで行けばこんなに苦労をしなかったはず。だけど、私はそこにたどり着く過程も楽しみたかったから、ちょっと珍道中にはなったけど、一杯のフォーはその苦労を吹き飛ばしてくれた。
そして、また同じ道を帰るパワーも与えてくれた。
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