見出し画像

壱太郎・右近のお初・徳兵衛がものごっつよかった

大阪松竹座の立春歌舞伎特別公演を観てきた。
出演者も演目も豪華だったけれど、なかでも中村壱太郎のお初、尾上右近の徳兵衛の「曽根崎心中」が秀逸だった。

二人とも表情がすごくいい。若いというのもあるけど、それ以上に初々しさ瑞々しさが素晴らしく。

右近さん徳兵衛の純粋で真っ直ぐなさまが痛いほどで。騙されてお金返してもらえないうえ冤罪ふっかけられてボコボコにされて、泣きながら花道を去ってゆく、その泣き声がいまも耳に残ってる。

番付(パンフレット)にも書いてあったけれども、お初は「男にすがって生きていく従来の歌舞伎の女性像と違い、徳兵衛を励ましリードする強い女性」。
壱太郎さんはそれを見事に表現してらした。
「あなたが死ぬならわたしも死にます。ついていきます」
というのではなくて
「わたしがあなたを決して一人にはしません」
冒頭の生玉神社境内の場でこそ、久しく顔を見せなかった徳兵衛に「お逢いしたかった」と恨み言を言い、可愛らしく拗ねてみせるのだけど。
曽根崎の森で、逡巡する徳兵衛に見せる微笑には、儚げでいて芯の強さや大きな包容力が感じられて、壱太郎さんが観音菩薩さまに見えた。


もう一回観にいこうかなあ。という誘惑といま必死に闘ってる。
うう、どうしよう。





#舞台感想

この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?