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変化の多い時代だから、キャリア・デザインは1年くらいで充分かも

タイトルを見て開いてくださったみなさん、ありがとうございます。
初めてnoteを書いてみます、少しでもみなさんが何かを考えるきっかけになれたら嬉しいです。

今から20年前、僕が大学生の時の話なのですが、経営組織論のゼミに所属しておりまして、そのゼミ教授が「キャリア・デザイン」について語られた言葉が20年経った今でもずっと心に残っていて、その考え方のおかげでここまで心迷わず歩いて来れました。

きっと皆さんが人生で迷った際にも役立つ考え方ではないかと思い、僕の初めてのnoteは、そんなテーマから書いてみたいと思います。



◼️ キャリア・デザインとは

大学生当時、僕が思い込んでいた人生成功の秘訣というのは、未来設計が大事、プラン通りに人生を歩けるように頑張ることが重要、だからキレイな人生プランを念入りに描かないといけない、といったものでした。

しかし、キャリア・デザインについてのゼミ教授の説は、自分の想像と全く異なるもので、次のような内容でした。

「 キャリアの語源は、馬車の轍(わだち)。だからキャリアは未来にあるものではなくて、歩いた後にできるもの。キャリア・デザインという言葉があるけれど、それは未来すべてをデザインするということではなく、人生のターニングポイントとなる節目節目だけしっかり立ち止まって、自分自身が一生懸命進んだ後にできた轍(わだち)を見て自分自身が納得でき、そして次の選択をしっかりデザインできれば、それはとても良いキャリアを歩んだということなのです。」

さらに、

「 人生の節目さえしっかり立ち止まってデザインができていれば、あとは多少寄り道したりドリフト(漂流)したって構わない。むしろ、少しくらい流された方が、偶然の出会いや予期せぬ出来事が身の回りに起こって、想像していなかった景色が見えることもあるかもしれません。」

という話を教授から聞き、自分のこれまでの「キャリア」についてのイメージが完全に覆えされまして、それ以降、

・キャリアは未来にあるものではなく、一生懸命歩いた後にできた足跡
・大事な節目節目でしっかり立ち止まって振り返って、次をデザインする
・節目以外は、少しくらいドリフトしたって構わない

という考えに塗り変わり、このルールに全幅の信頼をおいて20年間迷わず歩いてきた結果、まわりを気にせず自分のキャリアの節目の選択に自信を持って前に進めている今の自分があります。


これは後になって気づいたことなのですが、この考え方を持って仕事に取り組むと、次の「節目」が来るまで「あれ、キャリアプランからズレてるかな?」「今月のこの仕事は、設計したプランに果たして続くのだろうか?」などと、細かいことを全く気にせずに、今の目の前に与えられた仕事、期待に応えることに集中することができるので、結果的に、一つ一つの仕事に対して成果を出すのが早くなります。

そして、一つ一つの仕事で成果を出す過程でさらに自分自身も成長できるので、次に与えられる仕事、期待される内容が大きくなっていき、そういった社内外からの仕事を迷いなく早いサイクルで繰り返し続けることで、当初のスタート地点にいた自身の力量で想定していた3年後よりも、自身の力量と周りの期待が大きくなっていて、当時見えていなかったところまで来れてしまっている、ということが起こります。

また時には、当時の自分には興味が持てなかった分野に楽しさを感じられるようになったり、当時まわりの人よりも苦手だったことが、ふとした瞬間にデキるようになり強みに変わっている、なんてこともあるかもしれません。

そのように、未来の自分と仕事環境はどんどん変化していくので、最初からガッチリと設計し過ぎてしまわずに、敢えてデザインしないということで未来の変化に柔軟に対応しやすい自分を保ち、結果的に自分の想像や計画を超えたキャリアを創れることになるのです。

◼️ 計画された偶然

ただここで一つ注意が必要なのは、敢えてデザインしない = 何もしない ではなく、計画的に「敢えてデザインしない」ことをデザインしている、とでも言いますか、音楽で言えば音を出さない休符、漫才の間、noteの改行と空白のように、明確な意図を持って何もしない(未来計画を立て過ぎないようにする)、ということなのです。

これについては、実は学術的な実証データと理論がありまして、心理学者のジョン・D・クランボルツ教授が1999年に「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」というキャリア理論を発表しているのですが、クランボルツ教授がビジネスパーソンとして成功した人のキャリアについて調査をしたところ、そのターニングポイントの80%が、本人が予想していなかった偶然の出来事によるものであることがわかり、そこで「計画的に偶然を起こすために」以下のような行動特性があると良いのではないか、という理論を提唱しました。

< 計画的偶発性理論 (Planned Happenstance Theory) >
計画的な偶発性が起こりやすい5つの行動特性
1) 好奇心(Curiosity) : 新しい学びの機会を模索し続ける
2) 持続性(Persistence) : 失敗に屈せず、努力し続ける
3) 柔軟性(Flexibility) : すすんでこだわりを捨て、態度、行動を変える
4)楽観性(Optimism) : 新しい機会は必ず達成できるとポジティブに考える
5)冒険心(Risk Taking) : 結果が不確実でも、行動することを恐れない

このような気持ちとスタンスで目の前の仕事に取り組めば、自分の予想の斜め上をいく偶然の好機がやってきて、人生の選択肢が増えるということなのです。みなさんの周りで、ラッキーなチャンスをたくさん掴んでいる人たちも、こういった特性を持たれている人が多いのではないでしょうか。

アップル創業者 スティーブ・ジョブズの「点と点をつなぐ (Connecting the dots) 」という名言をご存知の方も多いかと思いますが、これもキャリア・ドリフトの例と言えると思います。

もちろん当時は、これがいずれ何かの役に立つとは考えもしなかった。ところが10年後、最初のマッキントッシュを設計していたとき、カリグラフの知識が急によみがえってきたのです。そして、その知識をすべて、マックに注ぎ込みました。美しいフォントを持つ最初のコンピューターの誕生です。もし大学であの講義がなかったら、マックには多様なフォントや字間調整機能も入っていなかったでしょう。ウィンドウズはマックをコピーしただけなので、パソコンにこうした機能が盛り込まれることもなかったでしょう。もし私が退学を決心していなかったら、あのカリグラフの講義に潜り込むことはなかったし、パソコンが現在のようなすばらしいフォントを備えることもなかった。もちろん、当時は先々のために点と点をつなげる意識などありませんでした。

繰り返しですが、将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。


このように、その時その時の興味・チャンスに対して集中して一生懸命取り組み、しばらくして自分が歩いて来た足跡を振り返ってみたときに、結果的に様々な点と点が繋がっていることに気づくのであって、最初から点が繋がるように計画的にデザインすることはできない(または、計画できてしまっているとすると、それは他にある未来の可能性を狭めてしまっていることを疑った方が良い)ということなのです。

それでは、節目節目ではどういったデザインと選択をすべきなのか、これについては「キャリア・アンカー」という考え方があるのですが、これについては、また別のnoteで書きたいと思います。


おわりに

インターネット技術などの発達により、環境の変化のスピードが早くなった今、キャリアをあらかじめ計画し、その計画通りに進もうとすることは現実的ではありません。またあらかじめ早めにゴールを一つに固定できたとしても、それが未来でも素晴らしいゴールのままであるとは限らず、他にもあったはずの可能性を失うことになってしまいます。
(スポーツやアートの世界の場合は、昨今でもビジネスの世界よりは明確なゴールが設定しやすいかも知れません)

2020年は新型コロナウイルスの影響で、これまで当たり前だったものが当たり前ではなくなり、確実だったことが不確実になり、ニューノーマルな環境に公私とも変化させていくことを求められた1年だったのですが、こんな未来予測が難しい不確実な時代こそ、計画的にキャリア・ドリフトという考え方を取り入れてみると、日常の内外の小さな変化に動じることも減って、偶然の好機を捉えやすい体質になるのでは無いでしょうか。

そんな理由から、冒頭のタイトルにある通り、僕はキャリア・デザインは1年くらいで充分と考えています。長期間の綿密な計画を立てるより、むしろ1年間くらいの短期間の中で確実に描いた1年後に進むための綿密な計画を一生懸命立てることに時間を割いた方が、多くのチャンスと選択肢を手に入れられて、あとで振り返ってみたときに自身が納得できるキャリアになると信じていいます。

最後に、この敢えてデザインし過ぎない「キャリア・デザイン」の考え方について、僕の大学ゼミ教授の本を紹介させてください。(ビジネスの世界の人のキャリアを想定して書かれていますが、他の分野のみなさんにも転用できる概念だと思います。)


ここまで読んでいただ来まして、ありがとうございました。
みなさんが、自分らしいキャリアを歩いて人生の選択をされていく上で、少しでも何かのきっかけになりましたら、こんなに嬉しいことはありません。

今年はこれからも定期的にnoteを書いていきますので、よろしくお願いいたします!


そのほかの過去記事リストは、こちらになります!



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