AI(人工知能)時代に求められるのはコンサルティング営業→デザイン思考型営業

BtoBの営業職を経験したことがある方であれば、一度は耳にしたことがあるであろう「コンサルティング営業」という言葉。

新卒で営業配属になってから6年・・・これからはモノ売りの時代ではない、コンサルティング営業の時代だと僕は教えられてきました。営業とはお客様の課題解決することが仕事であると。

最近は、このコンサルティング営業も限界にきているのではないかと考えています。

コンサルティング営業とは?

コンサルティング営業の特徴を自分なりに整理すると、この3つだと考えています。

①質問力=ヒアリングから相手を理解する力を通じて、現状を正しく理解すること

②課題定義力=課題を整理して、見える化する力を通じて、解決課題を明確化すること

③プレゼン力=課題に対する解決策を提示する力を通じて、意思決定を促すこと

コンサルティング営業は、課題解決することを付加価値として、自社のプロダクトを販売することだと自分の中では定義しています。

営業の機能は人工知能でも代替可能

この3つのコンサルティング営業スキルですが、おそらく人口知能に置き換えられていくと考えています。

そんな営業の危機的な状態についてまとめてみました。

目次

・人口知能とビッグデータが営業の仕事を変える(日立製作所の事例)

・コンサルティング営業の機能は人口知能で置き換えられる

・これから求められる新しいパターンを生み出す力(デザイン思考参考)

・課題解決力よりアイデア創発力


人工知能とビッグデータが営業の仕事を変える

コンサルティング営業と人口知能についてを考える上でヒントになりそうな日経新聞の記事をNewspicksでピックしました。

内容は、人工知能、ビッグデータが活用できるようになり、営業職の役割を変えるという日立製作所の判断についてです。

日立製作所は2018年度をめどに海外を中心に営業人員を2万人増やす。13万人の営業人員を活用し、従来の機器・設備販売から、AI(人工知能)やビッグデータ解析などの先端技術を駆使したコンサルティング型サービスの提供に経営の軸足を移す。製造業のサービス化は欧米企業が先行してきた。日立に追随する動きが国内の電機業界に広がる可能性がある。

引用:日立、営業2万人増員 コンサル重視へ転換

ここで書かれている営業人員は、もはや営業職ではないと考えています。

コンサルティング営業を実施する人ではなく、まだデータ化されていない新しい価値を創り出す人が求めらえれている気がします。


コンサルティング営業の機能は人口知能で補える

経営に関連するデータがすべて蓄積され、解析できる環境が整ってきている中で、営業の仕事は、すべて人口知能に任せることができると考えています。

最初に記載したコンサルティング営業に求められる3つの力が人口知能に置き換えられる姿のイメージ↓

①質問力=ヒアリングから相手を理解する力→データを自動収集しておけば抜け漏れなく現状は把握できる

②課題定義力=課題を整理して、見える化する力→パターン認識技術で、課題は自動抽出できる。課題定義に主観・バイアスがかからないので課題定義の精度は人口知能に頼った方が良い

③プレゼン力=課題に対する解決策を提示する力→明確な課題が定義できてしまえば解決策は自ずと見えてくる。そもそも、人口知能を活用すれば解決策も自動抽出できるようになる


コンサルティング営業がすごく時間をかけてやっていること、かつ人に依存する形で実践されていたことは人口知能に置き換えることができるという仮説をもっています。

なので、コンサルティング営業から、次のフェーズに入らないと生き残っていけないのでは・・・という危機感をもつ必要がありそうです。


これから求められるのは「感情課題」に対するソリューション提供

AI時代に求められるスキルセットは確実に変わってきている。

既存のパターンを正しく認識して、解決策のピースをはめ込む作業は人口知能に勝てるわけがありません。

人間が人口知能に勝てる領域は、悲しい、不安、気持ちい、好きといった感情にあるのではないかと思います。

営業に当てはめると、人口知能が認識できない感情面のソリューションを提供するのが「営業職」の役割になってくるのではないかなとボンヤリと考えています。


感情課題へのアプローチ=デザイン思考がヒント?

前から「デザイン思考」という言葉に注目して、その考え方や方法論を営業に取り込んできました。

デザイン思考とは、デザイン的プロセスを利用し、クリエイティブなアプローチから、様々なビジネスの問題を解決する方法

デザイン思考については、Newspicksの「馬場渉が教える「デザインシンキング」の実践法」に書かれている内容が、実践的でわかりやすかったです。

ビジネスシンキングとデザインシンキングの違いについて理解しやすいと思います。

https://newspicks.com/news/1406754

最後にあるこの言葉が好きです。

従来のビジネスシンキングでも多くの問題が解けますが、世の中は課題だらけです。多くの問題を多くのリソースで解決するアプローチをそろそろ見直しましょう。

営業も思考法や方法論をブラッシュアップしていかないと、外部環境の変化に適応できなくなってしまう。

さて、新しいパターンを営業時に生み出すために、僕がかってに名付けたデザイン思考型営業のプロセスをご紹介↓


デザイン思考型営業

デザイン思考のプロセスを営業プロセスに当て込めてみました↓

①ヒアリング・現場の観察→ユーザーやステークホルダーの感情を言語化する

ポイントはエンドユーザーやステークホルダーの感情(組織やユーザーが抱える不安や怒りなど)に焦点をあてること。

BtoBの議論でソリューションアイデアが発展しないのは、自社の組織や戦略課題についての議論が中心となり、顧客提供価値について話されていないことが要因だと考えています。

デザイン思考の原則は「ユーザー中心」であること。

自分たち都合でしか考えないと、いきなり機能(使いやすさ、現状と何が違うのか)や数字ベース(いくら売上が上がるのか)といった視点で議論が始まる。

イノベーションのジレンマで有名なクリステンセン教授も、顧客のニーズを見極めるときのポイントを下記のように表現しています。

 「ニーズを見極めるときは、顧客を無機質にセグメンテーション(細分化)するのではなく、その顧客が片付けようとしている用事に着目しろ」

顧客のジョブに焦点を当てたイノベーションとして「ミルクシェークの物語」というスライド。価値提案キャンパスP29がイメージとしてわかりやすいです。

http://www.slideshare.net/kazuyashishirai/ss-47504646

徹底的に感情面、顧客が感じる価値について議論をすると、ビジネスシンキングでは見えてこなかった課題に気づける可能性が高まります。

感情課題と理想の感情変化を明確にすることが第一フェーズのゴールです。


②潜在課題解決のための仮説を出し、プロトタイプをつくる

感情を見える化したら、すぐにソリューションアイデアを見える化します。

このフェーズはスピードが命。間違ってもやってはいけないのは、持ち帰ってPowerPointで30ページものの資料を提出するということ。

デザイン思考営業のゴールは、決済をとるための資料をつくることではなくて、理想的な感情の変化を起こすためのソリューションイメージを共有すること。

自分の場合は、その場で手書きでイメージをビジュアル化することが多いです。

手間をかけるのであれば、ペーパープロトタイプ、デモサイト制作など、ユーザーが体験できる形にアイデアを変える。即興演劇とかしてソリューション提供イメージを掴んでも面白いかもしれないですね。

感情の変化を起こすプロセスやイメージをチーム内(クライアント含む)と共有することが第二フェーズのゴールです。

③プロトタイプをもとに仮説検証・フィードバックの時間をつくる

イメージを共有したら、ソリューションの実現可能性について徹底的に議論します。

議論するのは、予算、スケジュール、組織リソース、KPIなど。

従来のコンサルティング営業、ソリューション営業だと、最初に組織リソースや予算の確認から入るから提供するソリューションの幅が狭まってしまうという課題があるような気がします。

営業にデザイン思考を取り入れると、まずはユーザーへの提供価値から考え、理想の感情変化を見える化し、変化を生むためのアイデアを形にする、その最後にアイデアの実現可能性を考えるという順番です。


コンサルティング営業との違い

・従来の課題解決型営業は、数字をベースとした課題定義→解決策の提示→既存のソリューションを提供する

・デザイン思考型営業は、感情課題に対して仮説をプロトタイプ化→実現可能性の議論→カスタマイズ化されたサービス提供する

いくら議論をして、ロジックツリーを書いても解決しないことはたくさんあります。だから課題定義より、アイデアや仮説を形にする=プロトタイプをつくるということを優先的に実施した方が効率が良いと考えています。

これから営業に求められてくるのは、「抽象度の高い課題(人の感情や市場の不確実性)を見える化して、プロトタイプをつくった上で議論をする」という能力ではないかなと思っています。

AI時代は、課題解決力よりユーザー共感力が求められる

既存のソリューションに依存した課題解決ではなくて、エンドユーザーやステークホルダーの感情に共感できる力が求められると思います。

共感をもとにした新しい視点のアイデアをベースに0→1をクライアントとつくりながらビジネス全体に貢献する営業スタイルに変わってくるのではないかとかってに考えています。

感情にフォーカスしたソリューションを提供できる人材になれば、あと10年くらいは人口知能に置き換えられにくいのではと考えています。

この仮説はもう少しブラッシュアップしていきたいと思います。

とにかく、営業は人にしかできないと思い込み、今まで磨いてきたスキルに胡座をかいていれば、ロボットさんに置き換えられてしまう!!という危機感はもっておきたいですね。

これからも日々アイデアを出しまくって営業を楽しんでいきたいと思います!

今後の構想

・営業職向けのデザイン思考ワークショップやって、新しい営業プロセスをつくる取り組みを実施

・BtoCの営業プロセスにデザイン思考を取り込んだ場合にどのような変化が起こるかを検証

※ちなみに、自分の場合はマーケティング施策(主にインターネット広告)を提案しています。業界・業種が違うと営業プロセスが全く異なると思うので、今回書いた内容は参考にならない営業の方はたくさんいらっしゃると思います。。