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共和党も民主党も「穏健化」を模索する大統領選挙

 アメリカ民主党が大統領候補を急遽バイデン大統領からハリス副大統領に替えたことは、次回大統領選挙でアメリカ民主党が勝つ可能性を少しは上げたことになる。
 日本のマスコミは「ハリスは左派、バイデンは穏健派」等と報道しているが、確かにハリス副大統領は極左とも言うべき思想を持っているものの、ならばバイデン大統領が「穏健」かと言えばそうではない。
 バイデン大統領がこれまで「穏健派」と評価されてきたのは、あくまでも白人エスタブリッシュメント層に対して穏健である、ということに過ぎない。
 過激なプロチョイス(生命軽視)政策を推進した点に関してはハリス氏とバイデン氏に大きな違いは無いし、黒人射殺市長を駐日大使に任命、また別の黒人射殺市長を「初の同性愛者の閣僚」として入閣させると言ったピンクヲッシュ、と主に有色人種に対して厳しい政策を彼は実施してきた。
 共和党を支持する黒人の一部は、バイデン氏が過去に軽犯罪の厳罰化を行ったことを非難している。言うまでも無いことであるが、軽犯罪をしやすいのは治安の悪い地域に住んでいる人たちであり、つまり有意に有色人種の割合が高い。
 最近、バイデン政権は大学入試での積極的是正措置廃止に反対したことで黒人たちのポイントを稼いでいるようであるが、これは積極的是正措置と言いつつ「人口比で入学枠を割り当てる」という方式のため、アジア人やユダヤ人に不利な入試制度になっている。実は白人多数派はあまり損をしていない。
 すると、今度はユダヤ人票が共和党に流れることを防ぐためにパレスチナ問題でイスラエル支持を打ち出し、アラブ系やムスリムも多いアジア人からの支持を余計に減らしたのがバイデン氏である。有色人種の票を固めるにはハリス氏を出すしかなかったであろうし、内心では生命尊重派のオバマ元大統領が生命軽視派のハリス氏支持を表明したのも仕方のないことである。
 恐らくだが、ハリス氏もオバマ氏の入れ知恵でこれまでよりかは「穏健」な立場をとるであろう。ただし、それが白人エスタブリッシュメント層に対する穏健か、有色人種保守層に対する穏健か、は今後の流れを見ないと判らない。
 一方、私が注目しているのはトランプ前大統領が公約から「堕胎禁止」を削除したことである。
 元々、トランプ氏は全米家族計画を支持するなど決してプロライフ(生命尊重派)では無かった。大統領就任時は生命尊重派の仮面を被ったが、レイプによる妊娠の場合での堕胎をも禁止する州法に反対するなど、教条主義的な生命尊重派とは距離を置いていた。もっとも、その州法には私を含む多くの生命尊重派も反対していたが。
 いずれにせよ、アメリカ共和党はこれまで「減税」と「生命尊重」という反対の少ない政策を二大柱として選挙を戦ってきた訳だが、トランプ氏は「減税一本槍」で戦う気なのであろう。「チップの非課税化」と言った、アメリカ人受けしそうな政策もちゃっかり入れているのは、流石は経済人であるトランプ氏である。
 なお、減税による減収については関税引き上げで補うとしている。保護貿易主義を明確にしているのである。
 生命尊重色を薄めたこの公約については、私の支持するマイク・ペンス副大統領が失望を表明した。
 ペンス氏ら保守派は、立憲主義を徹底する立場でもあり、不正選挙を主張して前回の大統領選挙の結果を覆そうとしたトランプ派とは相容れない。こうして失ってきた保守派の票の部分を補うためにも、トランプ氏としては「穏健化」を図らざるを得ないのである。
 ただ、トランプ氏による穏健化はあくまでも白人エスタブリッシュメント層に対する穏健化であり、有色人種については隙がある状態である。せっかく有色人種票が民主党から離れているのであるから、そこにどうアプローチするかが今後の共和党に求められることである。


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