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全く意味の異なる「台湾独立承認」と「中華民国承認」

 台湾問題について、保守派・リベラル派を問わず「台湾=中華民国」と認識している方が多いことに、最近気付きました。
 釈迦に説法かもしれませんが、この問題について改めて説明させていただきます。
 台湾の立場を巡っては、台湾内部においては大きく「中華民国派」と「台湾独立派」とが存在しており、「中華民国派」も「統一派」と「本土派」に、「台湾独立派」も「中間派」と「急進派」に、それぞれ分かれています。
 「中華民国派」とは「台湾は独立国ではなく、中華民国の一部である」と言う立場です。
 中華民国は日本の見解では既に亡んだ国ですが、彼らの見解では「台北政府」が中華民国の正統政府です。そして、中華人民共和国は違法な政府であるとしています。
 基本的に今の「台北政府」は一貫してこの立場です。そのため「台北政府」は台湾や澎湖諸島だけでなく、福建省の一部である金門島等も実効支配しています。
 が、いくら何でも「台北政府」が中華人民共和国を滅ぼして名実共に「中華民国」となることなど無理である、ということはみんなわかっています。そこで「現実を見た」結果、二つの考えが生れています。
 一つ目は「統一派」で、これは「はやく中華人民共和国と一つになろうよ、同じ中国でしょ?」と言う立場です。
 もう一つは「本土派」で、これは「中華民国の看板は掲げるけど、もう何十年も台湾にいるんだから、台湾に根を下ろそうよ」と言う立場です。
 「台北政府」の最大野党である中国国民党は名前からして「中国」の政党であることにアイデンティティを持っている政党ですが、「統一派」の朱立倫主席らと「本土派」の呉敦義元主席らの間ではかなり意見の相違がみられます。
 次に「台湾独立派」は「台湾は独立国であり、中国の一部では無い」という立場です。
 しかしながら、実は台湾の後ろ盾であるアメリカが台湾独立に反対しているというジレンマがあります。アメリカは「台北政府」を「中国内の民主化勢力」として支援しているだけだからです。
(このアメリカの立場は他の問題でもそうで、チベットや東トルキスタンも支援はしますが、独立は承認していません。だからこそ中国は「内政干渉だ!アメリカだって中国の一部だと認めているじゃないか!」と反発している訳です。)
 そこでやはり二つの立場に分かれます。
 一つ目は「急進派」で、「中華民国の看板など掲げてられるか!」と言う立場です。彼らは海外旅行をするときもパスポートの「中華民国」の上に「台湾」と言うシールを貼るなどしています。
 もう一つは「中間派」で、これは前述の「本土派」の皆さんとも政策レベルで連携しよう、というグループです。台湾独立を宣言しなくても「台北政府」が台湾に根を下ろして政治をしてくれたら、事実上「台北政府」は「台湾の政府」になるからです。
 今の「台北政府」の与党である民主進歩党は事実上「中間派」の立場であると考えられます。政策レベルでは中国国民党の「本土派」と大きな違いはありません。
 このような状況で日本の戦略は「寝た子を起こすな」というものです。
 もし日本が「台湾は中国と統一するべきです!」と言うと、民主進歩党と中国国民党本土派の双方から「中華人民共和国と一緒になれるか!ふざけるな!」と言われて日台関係は悪化します。
 かと言って「中華民国が台湾の正統政府です!」と言うと、今度は中華人民共和国と台湾独立派の双方を敵に回すことになります。これまた採用できません。
 では「台湾独立を承認します!」と言えばどうなるかと言うと、これまた中華人民共和国と中華民国派の双方を敵に回すことになりますから、採用できません。
 じゃあどうすればいいのか、と言うと、先日の投稿でも触れたように、日本の立場は台湾については如何なる「認定」もしない、というものです。
 ようは曖昧なままでお茶を濁すわけです。幸いにも今の蔡英文「総統」は曖昧なまま外交関係を進めていますから、日本政府もこれ幸いとそれに乗じている訳です。
 これが蔣介石みたいに「漢賊不両立」とか言っちゃう人だと日本としては非常に厄介だったわけですが。

 まとめると、台湾問題については

1. 台湾は中華人民共和国の一部である。
2. 台湾は中華民国の一部である。
3. 台湾は独立国である(中華人民共和国でも中華民国でもない)。

という、3つの立場が存在しています。
 日本は「2」の立場については『日中共同声明』で明確に否定していますが、では「1」を取るのか、「3」を取るのか、については言葉を濁しています。
 現在の状況ではそれは止むを得ないでしょう。もっとも、私の立場は「1」でも「2」でも「3」でも無いことは、すでに過去に述べています

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