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【領土問題】『サンフランシスコ平和条約』第2条の正しい解釈

 ウクライナ情勢に関連して、北方領土問題も注目を集めています。ここで思い出したいのが、安倍晋三元首相の名言ですね。

ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか!

 安倍さんは原発再稼働に原発輸出を推進し、プーチンさんはウクライナの原発を占領しました。原発大好きと言う共通点のあるお二人はどうぞ、一緒に原発に向かって駆け抜けてください。但し、無関係ないのちは巻き込まないでね。

 それはともかく、領土問題の話です。

 『サンフランシスコ平和条約』第2条では日本の領土についてこう規定されています。

   第二条
 (a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
 (b) 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
 (c) 日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
 (d) 日本国は、国際連盟の委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあつた太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす千九百四十七年四月二日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。
 (e) 日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。
 (f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 ここで「南極」が登場したことに驚かれるかもしれませんが、実は日本は白瀬矗の活躍により南極の領有権主張についてはかなり先進的でした。しかし日本政府が正式に領有権を主張する前に南極の領有権を放棄させられてしまった訳です。

 それはともかく、『サンフランシスコ平和条約』第2条の規定を見ると日本の領土について明確に決まったように思えます。そうだとすると領土問題など起きようはずがありません。

 ところが、そうは問屋が卸せませんでした。

 同条約第25条には次のような規定があるからです。

   第二十五条
 この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする。第二十一条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原又は利益も、この条約のいかなる規定によつても前記のとおり定義された連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない

 これによると、日本の利益は次の二つの条件に該当する国の為ではない限り「減損」することも「害される」こともないと言うことが判ります。

【条件Ⅰ】
①日本と戦争していた国
②アメリカ、オーストラリア、カナダ、セイロン、フランス、インドネシア、オランダ、ニュー・ジーランド、パキスタン、フィリピン及びイギリスの一部であった国
【条件Ⅱ】
『サンフランシスコ平和条約』に署名し批准した国

 つまり、この2条件に該当しない国には日本は領土を割譲する必要はないため、この2条件に該当する国が領有権を主張しない限り日本の領土が「減損され、又は害される」ことは無い、と言うことになります。

 【条件Ⅰ】はそもそも講和条約は戦争していた国同士が結ぶものだから、【条件Ⅱ】は原則として条約は締結国にしか適用されないから、と、一応の説明はつきます。

 では、この2条件に該当しない国は具体的にはどういう国か、と言うとこうなります。

【条件Ⅰ】に非該当
・韓国 等
【条件Ⅱ】に非該当
・中国
・ソ連(現・ロシア)
・インド 等

 韓国、中国、ロシア、と、見事に今の日本と領土を巡ってもめている国が揃っていますね。当然、これは偶然ではありません。

 韓国と中国は、それぞれ朝鮮事変と国共内戦の途中でしたので、連合国の中でもどちらの政府が正統かで揉めた結果、「どっちも呼ばないでおこう!」となりました。

 ソ連は講和会議には参加しましたが、アメリカやイギリスと対立したため、結局署名しませんでした。

 インドは一応連合国の一員ではありますが、かつてその連合国から植民地支配を受けていてようやく独立できた経緯があります。連合国が日本から領土や賠償金を取る気満々だったのを見て不参加を決めました。

 要するに、アメリカやイギリスに都合の悪い国を排除するのが本音でした。

 とは言え、流石に呼ばれもしなかった中国と韓国に全く利益が無いのは可哀想なので、「第二十一条の規定を留保して」とある通り、第21条を例外規定として設けることになりました。

   第二十一条
 この条約の第二十五条の規定にかかわらず、中国は、第十条及び第十四条(a)2の利益を受ける権利を有し、朝鮮は、この条約の第二条、第四条、第九条及び第十二条の利益を受ける権利を有する。

 ここで「例外的」に与えられた中国と韓国が受ける権利を有する利益についてみてみましょう。

【中国の利益】
・『北京議定書』等の不平等条約をすべて廃棄
・日本や日本国民の財産、権利及び利益を処分
【韓国の利益】
・領有権を主張(※具体的には朝鮮独立)
・日本と連合国の財産や請求権に関する清算等
・公海での漁業に関する協議
・日本における最恵国待遇等

 ところで、中国の例外規定に第2条(領有権)が含まれていません。そう、『サンフランシスコ平和条約』は中国に領土を割譲するものでは無いのです。

 が、中国やソ連が『サンフランシスコ平和条約』に署名も批准もしていないのであれば、第2条における台湾や樺太、千島諸島の規定が無意味になってしまいます。しかし、そんな無意味な条項が存在するはずがありません。

 そう、中国やソ連の為に次の条項がきちんと用意されていました。

   第二十六条
 日本国は、千九百四十二年一月一日の連合国宣言に署名し若しくは加入しており且つ日本国に対して戦争状態にある国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていた国で、この条約の署名国でないものと、この条約に定めるところと同一の又は実質的に同一の条件で二国間の平和条約を締結する用意を有すべきものとする。但し、この日本国の義務は、この条約の最初の効力発生の後三年で満了する。日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行つたときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼさなければならない。

 日本は『サンフランシスコ平和条約』に署名も批准もしていない国に対して『サンフランシスコ平和条約』と実質的に同じ内容で講和条約を結ぶ義務があったのです。

 もっとも、これもいくつか条件を見た国に限られます。

 まず「日本国に対して戦争状態にある国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていた国」の部分は先程の【条件Ⅰ】と同じです。それに加えて、さらに次のよう2条件を満たした国が対象です。

【条件Ⅲ】
『連合国宣言』に署名又は加入していること
【条件Ⅳ】
『サンフランシスコ平和条約』発効から3年以内に講和条約を締結すること

 つまり、中国やソ連がこの2条件を満たしたら、日本は『サンフランシスコ平和条約』と同じ条件で(無論、南樺太・千島諸島・台湾・澎湖諸島等の割譲も含めて)講和条約を締結しないといけない、と言うことです。

 中国やソ連は【条件Ⅲ】は満たしていました。問題は【条件Ⅳ】です。

 どうして「3年以内」と言う制限があるのかと言うと、3年たっても講和条約を締結しないようであれば、講和する意図が無いのか、それとも、『サンフランシスコ平和条約』と似たような内容であれば不満があるのか、いずれかであると考えられるからです。

 さて、中国やソ連とはその後、長い間講和条約は締結されませんでした

 しかも、その後に締結された『日中共同声明』や『日ソ共同宣言』では領土問題は曖昧なままであり、日本は今に至るまで中国やソ連に領土を割譲するとは言っていません。

 ということは、『サンフランシスコ平和条約』第25条の規定に基づき、日本の領有権は「減損され、また害される」ものでは無いと言うことになります。

 なお、ロシアや中国との領土問題は以上の話で解決していますが、他の国との関係について少し説明しますね。

 (a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 ここで言う「朝鮮」とは「朝鮮にある唯一の合法的な政府である」大韓民国のことです(『日韓基本条約』)。「平壌政府」(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)ではありません。北朝鮮も韓国の一部と言うことになります。

 いわゆる竹島問題とは、竹島が鬱陵島に付属する島嶼に含まれるかどうか、が争点です。世の中各地で領土問題はありますが、その中でも恐らく一番バカらしい領土問題が竹島問題でしょう。

 日本は韓国に外交権が無い時期に竹島の領有権を主張し、韓国は韓国で日本がGHQに占領されている時期に領有権を主張しています。もっとも近世以前から日本が竹島を実効支配していたので日本の方に分があるとは言えますが、では何故戦後こんなに求めることになったのか、と言うと専らアメリカの謀略です。

 アメリカにとって日本と韓国が適度に喧嘩してくれた方が都合が良いのです。東夷の黄色い猿の集団である日本と韓国は見事にアメリカの掌で騒いでいます。

 (d) 日本国は、国際連盟の委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあつた太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす千九百四十七年四月二日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。

 これは日本の委任統治領であったミクロネシアをアメリカの信託統治領にすると言うものです。委任統治領も信託統治領もどちらも「独立のまでの間、一時的に統治する」と言う趣旨のもので、日本もアメリカも将来の独立に向けてサポートする義務を負っていました。

 こうして日本からアメリカへ割譲された信託統治領の内、パラオとミクロネシア連邦、マーシャル諸島は後に独立しましたが、北マリアナ諸島はその後正式にアメリカ領へと編入されました。「領土不拡大原則!」とか言っておきながら、アメリカは結局戦後になっても植民地を増やしている訳ですが、戦前の日本の植民地支配をあれほど非難する皆様もアメリカには甘いです。

 (e) 日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。

 南極については日本が領有権を主張していたかもしれない地域は『サンフランシスコ平和条約』の批准国の中ではニュージーランドが主張しています(ロス海属領)。なのでここはニュージーランドの領土・・・と言いたいところですが、『南極条約』により南極の領土問題は棚上げにされています。

 (f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 ここは今でいう南沙諸島と西沙諸島のことです。『サンフランシスコ平和条約』の批准国の中で領有権を主張している国は、次の通りです。

【南沙諸島(新南群島)】
・ベトナム
・フィリピン
(・マレーシア)
(・ブルネイ)
【西沙諸島(西沙群島)】
・ベトナム

 西沙諸島はベトナムで確定です。南沙諸島が少しややこしいです。

 南沙諸島はベトナムとフィリピンがそれぞれ領有権を主張しているのですが、一部両国の主張する範囲が被っています。

 またマレーシアやブルネイは『サンフランシスコ平和条約』締結後にイギリスから独立した国で、一応西暦19世紀に一部のイギリス人が南沙諸島の領有権を主張しようとしていたようですが、その後南沙諸島が日本に領有され、しかもイギリスがその日本に大東亜戦争で勝利した後も、イギリスは南沙諸島の領有権を主張していません。マレーシアとブルネイの主張はやや根拠に欠けると言えます。

 なので結論としては、ベトナムとフィリピンの二国にじっくりと話し合ってほしい、と言うことになります。

 以上が『サンフランシスコ平和条約』第2条の解釈となります。

 なお、この解釈は真っ当すぎて、政府もどの政党も主張しておりません。






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