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れいわ新選組が内閣不信任案を棄権した理由に”不信任”してしまう

 先日、立憲民主党と社会民主党が提出した内閣不信任案には、共闘野党の中で国民民主党が反対、れいわ新選組が棄権、という対応をしました。
 この両党が内閣不信任案に賛成しなかった理由ですが、国民民主党の場合は、(賛同は出来ませんが)一応意味は判ります。

 内閣不信任案については、依然として混迷を極めるウクライナ情勢、北朝鮮のミ サイル発射など安全保障環境の緊迫化、コロナ禍、物価高騰など、国難ともいえる状況の中、 国民民主党が求めてきた原油高騰対策やヤングケアラー支援、カスタマーハラスメント対策などの重点課題が不十分ながらも前進を見ている状況もあり、 政治空白を作るべきではないと判断し反対をした。

本日の国会対応について

 言い訳がましい文章ですが、「政治空白を作るべきではないと判断」というのは要するに「今、衆議院を解散されたら困る!」というのが本音ということでしょう。
 実際、国民民主党の前原誠司先生はそういう本音を公言しているようです。

 まぁ、そうだ。今衆議院を解散された方が野党は困る。だから国民民主党の言いたい意味は判ります。賛同はしないけど。
 過去にはハプニング解散の例もあったから、内閣不信任案提出には慎重になるべきだ、という国民民主党の主張も判りますよ?
 無論、「原油高騰対策やヤングケアラー支援、カスタマーハラスメント対策などの重点課題」が岸田政権下で進展しているとはあまり思えないですけど、少なくとも「岸田政権下でも出来ることはやっているんだ!今更解散しないでくれ!」という意味は、理解は出来ます。
 しかし、れいわ新選組の場合は、言いたい意味が判りませんでした。
 れいわ新選組が棄権した声明はこちらです。

本日6月9日衆議院本会議において、内閣不信任決議案と、細田博之衆議院議長に対する不信任決議案の採決が行われた(与党等の反対多数で否決)。立憲民主党、社民党がこれらの案を提出した。れいわ新選組は、これらの採決を棄権した。

もちろん、岸田内閣と細田衆議院議長は信任に値しない。だから不信任案に「反対」はしない。しかし、不信任案を提出した野党が、これまで国会において問題法案に本気で抵抗してきたかというと、決してそうではない。
私たちは、選挙前に「抵抗してます」感をアピールする季節行事に参加することは、茶番への加担になるのではないかと考え、「棄権」することとした。

【声明】季節行事と化した不信任案には付き合わない -細田衆院議長不信任決議案と内閣不信任決議案の採決棄権について-(れいわ新選組 2022年6月9日)

 すみません、冒頭から何が言いたいのか、理解できません。
 え?「不信任案を提出した野党が、これまで国会において問題法案に本気で抵抗してきたかというと、決してそうではない」って、どういうことですか?
 要するに、「立憲民主党や社会民主党は本気で政府に抵抗していない!」ということですか?
 何が意味不明って、政府への不信任が問われているのに、いきなり他の野党を攻撃しだすこの声明って、どういうことなの?
 で、立憲民主党提出の不信任案賛成が「茶番への加担になる!」という理由で棄権って・・・いやいや、不信任案への賛否と立憲民主党は関係無いでしょ。
 そして、その後も何故か立憲民主党批判が続きます。

選挙前の会期末になって、毎回のように、不信任案を提出し、そのシーンをテレビで流し、「私たちは政権に抵抗している」とアピールすることが恒例になってしまっているが、野党は、150日間の国会会期中に、どれだけ政権に抵抗してきたのかを自らに問うべきではないか。

同上

 いや、ですからね、なんで内閣不信任案への対応説明で他の野党をいきなり攻撃するわけ?あんたら共闘野党の仲間じゃなかったの?
 内閣不信任案に反対した国民民主党の声明でさえ、立憲民主党批判はしていないのに、れいわ新選組は何を考えてんだか。野党共闘はどこに行ったの?
 そして、次は立憲民主党を名指しで攻撃しています。

今回の国会では、日本のありかたを根幹から変える危険性をはらんだ法案が、しずかに、いくつも提出された。それら問題法案に賛成してきた立憲民主党の責任は重い。

例えば警察法改正案。これは戦後の警察制度を180度変え、戦前・戦中と同じように国家警察機関に捜査権限を持たせる法改正だ。警察庁が国民のプライバシーに捜査介入できるようにする法案を、たった2時間の審議で通すことに加担したことは大問題である。

同上

 要するに、「立憲民主党は『警察法改正案』に賛成した!そんな政党の茶番に加担したくないから棄権する!」という主張のようです。
 いや、「警察法改正案」と内閣不信任案に何の関係があるの?と思うんだけど。むしろそんなに政府の法案に反対ならばむしろ内閣不信任案に賛成しないと筋が通らないと思うんだけど。
 さらに細かいことを言うと、これ、少しでも政治に詳しい人だと笑っちゃうんじゃないの?

例えば警察法改正案。これは戦後の警察制度を180度変え、戦前・戦中と同じように国家警察機関に捜査権限を持たせる法改正だ。

同上

 うん、あんたの言いたいことは判った。同時にツッコませてくれ。

「山本太郎さん、あんた、まさか『国家警察機関に捜査権限を持たせる』ことに反対なのに自由党にいたの!?」

 政治に詳しくない人の為に少し説明させてもらうとね、実はこの、国家警察に犯罪捜査をさせるのは、元々野党側の主張だったのですよ。
 どういうことかと言うと、日本では戦後、国家警察が廃止されて自治体警察となり、警察庁は犯罪捜査を直接しなくなったわけ。その結果、都道府県警が独自に犯罪捜査をするんだけど、その際に様々な弊害が出てきたんですよね。
 例えば、冤罪事件として著名な足利事件のこと、皆さん覚えておられますか?
 足利事件と言うのは、簡単に言うと平成2年(西暦1990年、皇暦2650年)に栃木県足利市で4歳の女の子が誘拐されて殺された事件なんだけど、なんと栃木県警が無実の男を逮捕して、彼が有罪になり刑務所に入っている間に時効が切れてしまったんですよね。
 つまり、足利事件は栃木県警が冤罪を生み出しただけで、真犯人は永久に捕まらないという、最悪の結果になってしまったわけ。
 しかし、問題はこれだけに留まりません。
 実は、同様の事件は北関東一体で起こっていたのに県警間の縄張りの違いもあって捜査が進まなかったのです。
 これら一連の事件の真犯人は同一人物の可能性が高く、もしも広域捜査が実現していれば、冤罪被害を生み出すこともなく真犯人を捕まえられていた可能性が高かった訳です。
 無論、今でも県警間の合同捜査は行われてはいますが、その場合は警察庁が「調整」をするだけで、責任の所在は不明瞭でした。そこで警察庁が捜査に責任を持つよう法改正を求める声が高まっていました。
 そして、実はそのような法改正を最も積極的に主張していたのが、他ならぬ自由党代表であった小沢一郎先生な訳ですが、山本太郎さん、あんた、数年前まで何党にいましたっけ?
 しかも、今回の法改正はあくまでもサイバー犯罪に限定です。サイバー犯罪に県境が無いことはアホでも判る話であって、立憲民主党としては特に反対の理由は無かったのですよ。
 他にもれいわ新選組は「野党批判」を繰り広げます。

さらに、問題法案への加担だけではない。今国会ではすでに15回もの憲法審査会が開催された。慣例に反して予算案の審議中にも憲法審査会が開かれている。野党が抵抗を弱めたためだ。すでに戦争放棄をうたう9条についても、条文の書き換えをめぐり、意見が交わされている。

同上

 だからあんた、野党がいくら抵抗しても憲法審査会開会は防げませんよ!
 というか、なんで与党が憲法審査会を開くと「野党が抵抗しないのが悪い!」と言われるのですか?意味不明です。
 しかも、山本太郎さんって、護憲派でしたっけ?ほんの一か月前にはこう言っていましたよね?

日本国憲法は、一言一句変えてはならない、
という立場ではありません。

必要あれば、議論すればいい。

2022年5月3日 れいわ新選組 山本太郎 代表談話 「憲法記念日」

 しかも憲法審査会で9条改正が議論されていることを非難しているけど、それ、山本太郎さんも言っていることですからね?

じゃぁ、私自身は憲法に対してどういう考え方をしてるかというと、「一言一句いじってはいけない」とは思っていません。 で、変えなければならない部分もあると思ってます。 なにかというと、たとえば憲法9条なんかもそうですよね、おそらく。
どういうことかというと、憲法改正が必要な立法に関して、たとえば2015年の安保法とかですよね。 本来ならば、手続きとして憲法改正が必要だったけれども、憲法の解釈をねじ曲げて、無理矢理立法化しちゃうっていうようなことが行われたわけですよね。

だから、そういう詐欺的行為というのを防ぐためには、もうしっかりと憲法に、そこを書き込む以外にないだろうというふうに思っています。

憲法についてのまとめ(山本太郎:全国比例・れいわ新選組)

 なお、私の憲法9条に対する個人的な考えは、集団的であれ個別的であれ自衛権行使は制限するというのが「国の交戦権は、これを認めない」という内容の趣旨ですから、侵略国への制裁は国際安全保障(いわゆる集団的安全保障、集団的自衛権とは全く異なるので「国際安全保障」と私は表現する)に委ねるべきであって、国際安全保障に委ねることを完遂するためには、小沢一郎先生も仰っているように自衛隊の指揮権を政府が放棄して国連に委ねるぐらいの改革が必要だと思いますから、それを実現するために9条改正を議論するべきだとは思いますが、国連が侵略国への制裁機関として機能していない今では下手に改正せずに専守防衛に徹している方が良いでしょう。
(政府が自衛隊を指揮していると、日本政府による侵略が本音ではないか、と疑われる余地は絶対に出てきますし、というか、私自身が「政府は侵略に加担する気では?」と疑ってしまいます。)
 いずれにせよ、憲法改正を「必要あれば、議論すればいい」と言った一か月後に「憲法審査会開催を阻止しなかった!」と言って共闘野党を攻撃する支離滅裂さには驚くほかはありません。
 一体、れいわ新選組は本当に野党共闘を目指しているのでしょうか?
 れいわ新選組の声明文の最後はこう結ばれています。

ここまで野党が政権や与党に抵抗しない国会があっただろうか?歴史上、「野党がもっとも協力的だった国会」と記録されるのではないか。何よりその反省が必要である。
れいわ新選組は、野党が与党に徹底抗戦できるよう、最善を尽くしていく。

【声明】季節行事と化した不信任案には付き合わない -細田衆院議長不信任決議案と内閣不信任決議案の採決棄権について-(れいわ新選組 2022年6月9日)

 はい、本当に「野党が与党に徹底抗戦できるよう、最善を尽くしていく」のであれば、共闘野党を攻撃する暇があれば与党を攻撃してください。よろしくお願いします。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 拙い記事ではありますが、宜しければサポートをよろしくお願いします。 いただいたサポートは「日本SRGM連盟」「日本アニマルライツ連盟」の運営や「生命尊重の社会実現」のための活動費とさせていただきます。