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憲法についてとにかく雑感です

 今日は文化の日、明治天皇の誕生日なのですが、『日本国憲法』の公布の日でもあるので、雑感を。
 マスコミは年に一回は、実際には数回ぐらい「改憲か、護憲か」のアンケートを取ります。
 それはマスコミだけでなくて多くの国民が、何故か政治に興味の無いような人間までもが改憲だの護憲だのを言い出して、私にも改憲派か護憲派かを聞いてくる人がいます。
 正直な話、私はそういう話にあまり興味が持てず、特に「憲法改正=憲法九条改正」と考えている人に至っては内心では呆れてしまったりしますが、もう日本国民の8割は「憲法=9条」というぐらいに綺麗に洗脳されてしまって、いちいち呆れる暇もない状態です。
 一番意味不明なのが、安倍政権の掲げた「自衛隊明記の為の改憲」であって、それへの賛否を聞かれても「どうでもいい」が率直な感想です。自衛隊は既に合憲なのですから、明記しようがしまいが何も変わらない、そう言う意味のないことで議論する政治家は単なる税金泥棒だと思うので、私もそんな下らん議論には参加したくないし、政治家にそんな下らん議論への参加を求める有権者も税金泥棒の共犯者だと思います。
 だいたい日本には「憲法改正さえ出来ればなんでもいい」派と「どんな形であれ憲法改正は認めない」派とが同じぐらいの人数存在しており、その日本二大衆愚の政治屋たちが騙して票を取っているのが現状です。
 ええ、「騙して」です。騙されていることに気付かんから衆愚だと言ってるんですが。
 安倍さんが本気で「自衛隊明記の改憲」なんかするはず、ないでしょ。自民党が実現させたい憲法改正案は2012年に発表されています。その中で挙げられている内容は、九条よりもむしろ人権条項の改正内容の方が多いし、それこそが自民党の本音でしょう。
 要するに、自民党は人権抑圧の為に憲法改正をしようとしている、しかも2012年の自民党改憲草案は安倍さんが総裁になる前に党として発表した訳ですから、安倍さんが死んだ今ではこっちの方が成立の可能性ははるかに高い訳です。
 それをアホな護憲派も未だにキュージョー、キュージョー、と叫んでいる。私も現時点では『日本国憲法』第九条を変えるべきではないと言う立場ですが、仮に九条改正をされても平和主義者が政権を握れば戦争は防げる、しかし憲法で人権保障条項がなくなれば、一瞬で日本は独裁国家になるかもしれない、独裁国家になった後で平和を叫んでも意味はない訳です。
 改憲派も自分たちが何に賛成しているのか、判っていないアホが多いのではないのでしょうか。政治家の方もそいつらがアホだと思っているから、自民党改憲草案のような本音を隠しもしない改憲草案を出している訳です。本音駄々洩れの改憲草案を出しても9条だけを見て賛成するあたり、彼らは本当にアホなのですから、彼らを騙して票を取ろうと言う自民党の戦略は間違ってはいません。
 だいたい憲法についてのスタンスは改憲と護憲だけではありません。
 大まかに分けても改憲・護憲・論憲・制憲・復憲の5つがあります。
 誤解されている方も多いのですが、厳格な意味で護憲を言っているのは社会民主党だけです。社民党以外の、例えば日本共産党は声高にはしていませんが「制憲」の立場です。念の為に言うと、制憲と改憲は違いますからね。
 日本共産党が護憲だと思い込んでいる人の為に、試しに今年出された日本共産党の「憲法施行75周年にあたって」の声明を読んでもらいましょう。これのどこにも「護憲」とは書いていません。
 こういうと「護憲と言う言葉は使ってないけど、中身は護憲じゃないか!」と言う人が出てくるかもしれませんので、念には念を入れて解説しましょうか。まず、

「専守防衛」を投げ捨て、自衛隊を変質させ、大手を振って「戦争する国」に変える、この道を推進するための9条改憲に断固として反対する。

とあるから「ほら見ろ、改憲反対だろ」と思う人が出てくるかもしれませんが、これはあくまでも「9条改憲反対」ということです。他の条文については賛成とも反対とも言っていません。
 さらに言うと「この道を推進するための9条改憲」に反対している訳で、「如何なる九条改憲にも反対」とはどこにも書いていません。
 政治家の言う限定詞付きの反対と条件付き賛成が同義と判らないアホは「聖域なき関税撤廃を前提とするTPP反対」が「条件付きでTPP賛成」と言う意味だと気付かなかったりします。そういうアホは政治家にとってとても騙しがいのある有権者です。
 また、繰り返しますがこれは「改憲」に反対しているという事です。「改憲でなければ、護憲」と考えている人のことを衆愚と言います。
 例えばこの声明の最後のこの部分。

日本共産党は、9条に示された平和主義を守るとともに、「幸福追求権」(13条)、「生存権」(25条)、「財産権」(29条)など、憲法が国民に保障した豊かな権利を全面的に実現する政治、憲法を生かした政治を実現するために力をつくす決意である。

 これは一般論を述べているにすぎません。まぁ悪いことは書いていないから立憲民主党と共闘は出来る訳ですが。
 一方で、立憲民主党と相容れない部分はむしろ綱領に記されており、それにはこう書いてあります。

   党は、一人の個人が世襲で「国民統合」の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ。天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである。

日本共産党綱領

 ここでは「天皇の制度」を「憲法上の制度」とした上で、その「憲法上の制度」の「存廃」は「国民の総意」で決めるべきであるとしています。憲法で定められた制度の存廃を国民の総意で決めると言うのですから、護憲論とは違うことが判ります。
 しかし、ここでは「天皇制廃止の為の憲法改正」をするとは、何処にも書いていません。そう、日本共産党が改憲論だともどこにも書いていないのです。
 過去には日本共産党はこう言う見解も示しています。

 〈問い〉 憲法九条の改悪を中心にして改憲しようとする動きには反対ですが、憲法に明記されていない新しい権利も生まれてきているから憲法も変えたらとの意見もあります。どう考えますか。(滋賀・一読者)

 〈答え〉 日本共産党は、将来にたいする理論的展望として、日本が名実ともに「国民が主人公」となる社会として発展するにつれて、憲法も、国民の総意にもとづいて進歩発展してゆくべきものだと考えています。

憲法と新しい権利の関係をどう考える?

 ここでも「国民の総意」と言う言葉が登場しました。日本共産党の立場は「憲法も、国民の総意にもとづいて進歩発展してゆくべきもの」というものですが、憲法改正と言う言葉は慎重に避けられています。
 これについては、実は日本共産党の立場は明白であって、一言で言うと日本共産党は一貫して「国民の総意」を「憲法」よりも上位においています。ハッキリとそう言わないこともありますが、日本共産党は戦前から現代まで一貫してそういう立場です。
 これも勘違いしている人が多いのですが、実はこれ、『日本国憲法』の立場でもあります。
 『日本国憲法』はよく「国民主権」と言われますが、ここで言う「主権」は『大日本帝国憲法』の場合とは意味が違う、国民に「憲法制定権力」があると言う意味であって、国民には憲法を廃棄して新たに憲法を制定することも理屈の上では可能だと、なっています。それが制憲で、憲法制定権力の考えが根付いているフランスでは戦後になっても「改憲」ではなく「制憲」が行われています。
 日本共産党は改憲を否定したことはあっても、制憲を否定したことは一度もありません。ただ、制憲とはあくまでも国民主権が前提ですから、「国民の総意」が整うまでは「護憲」の立場に立つ、とそれが日本共産党の立場です。
 だから「現時点では護憲」なのが日本共産党。そこは押さえておかないととんだ勘違いをします。
 もっとも、バカは死んでも治らないと言いますが、これをさらに誤読して「日本共産党が権力を握ると制憲をするのか!」と言うアホが出てきそうですが、それも間違い。
 日本共産党は「二段階革命論」とかつては言っていた主張、今では必ずしもその理論には捉われてはいませんが、いずれにせよ、まずは『日本国憲法』の国民主権を中心とする内容を徹底させる、それが「民主主義革命」であってそこまでは立憲民主党や社会民主党とも協力できる、その上で将来的には第二段階として社会主義への変革を行う、そういう立場であることは今でも変更はありません。
 ただ、その第一段階についても日本共産党は長期的に行うと言っていますから、今すぐ天皇制廃止とか社会主義移行とかは考えていない、だからこそ立憲民主党とも手を組める。
 では長期的に何をするのか。
 実はそれも「国民の総意」でやることが書かれています。

日米安保条約を国民の総意で廃棄して、独立・自主・非同盟の日本に道筋を切り替える。そして、平和の憲法をいかして、世界から信頼される、自分の足で立った平和の外交に転換する。私たちはこの切り替えこそがいま日本がぶつかっている大きな大変革の一つになると考えています。(日本共産党創立81周年記念講演)

1、いま日本が必要としているのは民主主義革命

自衛隊問題の段階的解決
 自衛隊の問題では、まず1994年の第20回党大会決議で、恒久平和の理想を極限まで具体化した憲法9条の国際的な「先駆的意義」を明らかにしたことが語られます。「9条の完全実施」の理想に向け現実をどう改革していくか、探究の結果、2000年の第22回党大会で「自衛隊問題の段階的解決」方針を打ち出したと述べ、その内容が詳論されています。

 ただ、「もう一つ問題が残っていました」。日本共産党が政権に参加した時に、連合政権として自衛隊に対するどういう「憲法判断」をおこなうか、です。2017年総選挙の「党首討論」での発言――「野党連合政権としての憲法解釈は『自衛隊=合憲』を引き継ぐ」が紹介されます。同年に確認した党の方針にもとづくものでした。本書ではじめて、その方針がまとめて紹介されています。さらに、将来の民主連合政府が憲法9条の完全実施に踏み出す段階での「憲法解釈の変更」をどうするかも「国民の総意」で、と表明されています。

志位和夫著『新・綱領教室 2020年改定綱領を踏まえて』(上・下巻)

 そういうことで「国民の総意」で『日本国憲法』を徹底させて「民主主義革命」を行う、そこには「日米安保廃棄」や「自衛隊廃止」も含まれている、と言うのが日本共産党のロジック。そこは立憲民主党とは異なる訳です。
 じゃあ日本共産党と立憲民主党は相容れないのか、と言うと、それは日本共産党が「国民の総意」で日米安保廃棄や自衛隊廃止をやろうとしてきた時は、それは立憲民主党としては「いや、国民は日米安保廃棄や自衛隊廃止を望んでいないんだ」と、言います。しかし、現時点では日本共産党はそう言うことを言う段階ではないと言っているから、「限定的な協力」ならできるよね、と言うのが今の状況。
 これが新左翼党派だともっと過激に「一段階革命論」と言うのを言っている、これは一気に社会主義革命を起こそうというもので、こちらは立憲民主党とは相容れない主張です。
 昔の新左翼には暴力革命を起こそうとしている人もいましたが、彼らにとっては憲法よりも国民の総意が上である、国民の総意が得られたら暴力革命も正当化される、さらに革共同に至っては「労働者主権」と言うのを言い出して、ブルジョアを含めた国民の総意など要らない、無論立憲主義なんか絵空事だ、等と言っている訳ですが、それが典型的な「制憲」です。
 基本的に左翼の人は実は理論派、つまり理屈っぽい人ほど制憲の方が護憲よりも多い。では右翼で理屈っぽい人はどうかというと、それは「復憲」と言って『大日本帝国憲法』の復原・改正です。
 この「復憲」と「改憲」を混同している人が多いのですが、全く違う。復憲というのは、立憲主義を徹底する立場から『日本国憲法』の成立過程には問題があったよね、というものです。立憲主義を無視する安倍さんとは正反対。
 左翼の中では安倍政権が復憲の立場だと言うアホがいましたが、安倍さんは立憲主義を否定しているのですから、『日本国憲法』は勿論、『大日本帝国憲法』も守る訳無い、仮に『大日本帝国憲法』なんか復原改正されると安倍さんは戦前の日本にいたような右翼に殺されるわ、と言うジョークが昔右翼の間であったのですが、『大日本帝国憲法』の復原なんかしなくても彼は死んでしまった。そう言えば統一教会は改憲は言っても復憲は言わない、そこら辺は結構似非右翼の見分け方で使えるのですが、今日は割愛します。
 で、立憲民主党はなんかというと、それは「論憲」なんです。改憲でも護憲でも復憲でも制憲でもありません、論憲。
 立憲民主党は国民政党ですから、いろんな人がいます。そして他の政党とも共闘します。だから予め改憲や護憲と杓子定規に決めたりはしません。
 しかしながら、じゃあどんな議論でもOKかというと、そうではありません。立憲民主党の綱領にはこう書いてあります。

(ア) 立憲主義に基づく民主政治
私たちは、立憲主義を守り、象徴天皇制のもと、日本国憲法が掲げる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を堅持します。

私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います。

私たちは、草の根の声に基づく熟議を大切にしながら、民主政治を守り育てます。

 だからまず「象徴天皇制のもと」議論をする、だから天皇制廃止についての議論が仮に起きると、共産党は賛成するようですが、立憲民主党は反対すると言う訳です。
 次に日本国憲法が掲げる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を堅持する、これを前提とした上でならば、改憲でも護憲でも党員が自由に議論をすればよい、この前提を共有できない自民党はダメ、そう言う話です。
 で、この中でも私が重視するのは「基本的人権の尊重」です。
 実は、恐ろしいことに綱領に「人権」が入っていない政党が4つもあります。
 それは自由民主党、れいわ新選組、NHK党、参政党の4つ。後者二つはミニ政党としても、自民党と新選組はヤバい。
 自民党に至っては、結党時から今に至るまで一度も綱領本体には人権を明記したことはないです。綱領付属文書には書いていたことはありますが、今の綱領には付属文書もないから、全く人権に触れていない。
 私は日本維新の会とは意見が合わないこともありますが、その維新の会でさえ綱領には人権を明記しています。自民党は維新の会寄りかはマシだ、と言う人がいますが、アホか、と。自民党の方が遥かに危険です。
 ところがマスコミも人権を争点にした世論調査とかはあまりしない。少なくとも「憲法改正に賛成ですか?反対ですか?」の世論調査よりかは圧倒的に少ないから、国民は圧倒的にこの問題に気付いていない。
 そんな状態での憲法論議には私は興味を持てません。だから立憲民主党が「論憲」を言っているのは、まずは人権尊重、その上で議論をしましょう、という事で、これでまとまる以外に今は途が無いと思っています。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 拙い記事ではありますが、宜しければサポートをよろしくお願いします。 いただいたサポートは「日本SRGM連盟」「日本アニマルライツ連盟」の運営や「生命尊重の社会実現」のための活動費とさせていただきます。