脱皮する子ども。
ときに子どもの成長には目覚ましいものがあります。
普段はむしろ「子どもの成長ってやたら遅いな」と思うことが多いかもしれません。とりわけ小さい頃は簡単な言葉さえおぼつかず、体もすぐには大きくならないので、もどかしい日々が続きます。
ところがある日突然、それまで難しくてなかなか出来なかったことが急に出来るようになる瞬間が訪れます。
つかまり立ち、発話、パズル、竹馬…などなど。
すると、乾いた布が水を吸収するかのごとく、猛スピードで成長を始めます。
文字や数を覚えたての時期などは典型です。
基本的には飽きっぽいのに、何かに熱中すると取り憑かれたようにハマり出すのも子どもならでは。
長時間付き合わされ、「もう、やめようよ」と内心思っている大人をよそに「もっと遊びたい」と叫びます。
そして、そんな日々がまたしばらく続きます。
ときには何ヶ月、何年も。
永遠にこのステージが続くかと思えば、特に何かきっかけがあるわけでもなく、次第に冷めて次の対象に熱中していきます。
砂場からおもちゃへ、水遊びから折り紙へ、虫捕りからアニメへ、と。
たいていそのことを本人も覚えていて、何年か経つと以前遊び尽くした対象物を何かの拍子に取り出しては、懐かしそうに「好きだったな、これ」とつぶやいたりします。
その熱中が復活することもありますが、だいたい一時的です。
驚くのは、さも何事もなかったように「これに夢中だったんだっけ?」とキョトンとしている場合です。
あたかも記憶から全て消されたかのように、得意だったことはおろか、遊びのルールすら忘れている始末。
しまいには、本人から教わった遊び方をこちらが逆に教え直す羽目になります。
こうした劇的な変化は、まるで脱皮のようです。
昆虫がさなぎから成虫になるかのように、過去の一切を脱ぎ捨てる変化を何度も繰り返すのが子どもです。
がんばって早期教育を施したつもりが、何年か経つとさっぱり忘れていたりするのも同じ現象です。
親としては嬉しいやら寂しいやら、「あの頃は〇〇だった…」としばしば悲しげなトーンで思い返されるものですが、それは喜ばしく歓迎すべき成長なのです。
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