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地域連携(薬薬連携)について

今日は在宅領域における薬薬連携について書きます。

地域医療連携推進室の創設について.014

在宅医療における薬剤師の役割は薬学的評価を治療のサイクルに組み込むことで患者さんが抱える課題を解決することです。
具体的には往診同行で治療方針を決定(Plan)し、処方→服用(Do)、単独訪問にて効果判定・薬学的評価(Check)を行い医師にフィードバック(Action)することで次回の治療方針や処方内容に反映(Plan)されるということです。
この一連のサイクルを回すことで調剤が完結します。
これは薬剤師法第 25 条の2や改正薬機法に服薬後のフォローが義務付けられたことからも明らかです。

薬剤師法第 25 条の2
薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

僕は薬剤師1年目の頃からこのPDCAを回すことに徹底して取り組んできました。
患者さんご本人やご家族に説明のつかないお薬を飲んでいただくないと思い、処方の適正化に努めてきたつもりです。その中には認知症と考えられていた症状が実はH2ブロッカーの副作用だったことや、リスペリドンを中止したことで歩けるようになった方もいらっしゃいました。
しかし2年目に差し掛かった頃、実はPDCAを回せていないことに気がつきました。

それに気がついたのは居宅療養管理指導を新規に契約した患者さんや退院直後の患者さんの診察時、つまり初診をいくつか経験した時でした。
初診の際には前任の医師からの診療情報提供書に加えて看護サマリーやリハサマリーと患者さん本人とご家族からの情報を元に総合的に治療方針を決定していきます。
そんな中でこんなやり取りがよく見られるようになりました。
「この薬いつから飲んでるんだろうね」「なんで飲んでるんだろう」「たぶん飲まなくても大丈夫だと思うんだけど・・」「とりあえず継続(Do)しようか」
そして僕はこう答えていました。「はい」と。
もちろん漫然投与や副作用発現の疑いのある薬は要注意してフォローアップし適正化してきましたが、このような場合の介入は簡単ではありません。
ではここで何が介入を困難にしているのかというとシンプルに「情報不足」です。

少し抽象化して表現すれば「患者さんのストーリーがどこかで分断されている」のです。
ではどこで情報不足が起こり、患者さんのストーリーが分断されているのか。
それは患者さんのライフステージが変化するポイント、具体的には入退院時や転居時です。このポイントでは主に加齢や疾患により患者さんの認知機能やADLの低下と医療・介護チームの担当者の変更が起こっています。
この時の患者さんは自分で自分のストーリーを次の医療・介護チームに伝えることが困難です。そのために前任者が診療情報提供書や看護サマリーなどを使って、患者さんのストーリーを代弁するわけです。
在宅医療における治療というのは多くの場合が内服による薬物治療がメインです。
にも関わらず、その専門家であり責任者である薬剤師が薬物治療に関するストーリーを代弁できていないために患者さんのストーリーが分断され、上記のような「Do処方の罠」に陥ることになります。

地域医療連携推進室の創設について.005

「Do処方の罠」、調剤のPDCAサイクルが回せていないせいでいわゆるポリファーマシーを生み出しているのです。ここに僕は加担していることに気がつきました。

ではそれをどう解決するのか。
これについては僕自身が試行錯誤している段階ですが、おそらく薬剤師間でやり取りされるサマリーが必要なのではないかと考えて行動しています。
現時点で約50通の入院時サマリーを病院に送付してきました。
その中には多くの失敗がありましたが、いくつかは患者さんの治療に役立った例も出てきています。

今日もありがとうございました。


いつも読んでくださりありがとうごさいます。みなさんが読んでくださることが活力になっています。