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薬局から病院へ紹介状を書いた一例

今日は前回かなりの反響があった紹介状シリーズの第二弾を書きます。
あくまで紹介状を書いて送るという行動を後押しする目的で書きますので、症例に関する詳細はここでは書きません。気になる方はぜひサークルにご参加いただければ嬉しいです。

ある日、僕が外来を担当していると下記のようなご相談を受けました。

70代後半 男性
以前住んでいた家を引き払い、最近(薬局の)近所に転居してきた
内科、皮膚科、整形外科、心療内科受診
お薬手帳から少なくとも15剤を併用していることがわかった
今後はどこか近くの病院にかかろうと思っている
「胃が重い。食欲がなく、ここ一年で体重がぐっと落ちた」

多剤併用、消化器系薬剤7剤、他科受診・・・。
直感的に薬剤性のにおいがプンプンする状況です。
転居に伴う主治医変更のタイミングでもあり、これはチャンスだと思いました。

1)全ての処方に関する情報を聴取・整理する

まずはバイタルチェック、基本的な生活状況を聴取したら、各処方薬剤についてアセスメントしていきました。
アセスメントといっても初対面なので限界がありますが、今後のフォローにも必要なので根気よく診ていきます。

幸い薬識や病識は高い方だったので、聴取はスムーズに進めることができました。

2)消化器系薬剤9剤の漫然投与を解消したい

状況を複雑にしていると考えられるこれらについてアセスメントしていくと、漫然投与かつ副作用の発現が疑われました。

具体的には、テプレノン、モサプリド、六君子湯、通導散、半夏厚朴湯、ファモチジン、ランソプラゾール。さらに市販のテプレノンを併用中でした。

とりあえず、これらの薬剤を整理(減量・中止)して状況をクリアにしてから主訴である食欲不振にアプローチしていく方針を取りました。

各薬剤に対して、効果の有無・漫然投与の疑い・中止および減量の提案を紹介状に記載しました。

3)心因性を除外する

数年前に心的ストレスにより体調を崩してから、現在も心療内科に通院されていました。そこで、心因性の消化器症状についても考える必要がありました。

処方はベースに漢方、不安時の頓服と不眠時の頓服が処方されており、比較的マイルドな内容でした。

現在は環境の変化なども幸いし、「今後は心療内科にかからなくてもいいかも」と仰っていました。頓服薬の服用頻度からも、かなり安定していると判断しました。

上記の内容を紹介状にまとめ、近隣の総合病院の内科をご紹介しました。

4)結果

テプレノン、モサプリド、六君子湯、ファモチジン、半夏厚朴湯が中止となりました。

その後1ヶ月は毎週薬局に来ていただき評価を行いました。
上記の処方変更後3週間後には消化器症状が消失し、スーパーで好きなお惣菜を楽しく召し上がれるようになりました。

そして、次回の受診までに医師にトレーシングレポートを使ってフィードバックを行いました。

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紹介状やトレーシングレポートを書く時に僕が心がけているポイントは以下の2つです。(過去の記事より引用

1つ目は紹介状に「薬剤性の有無」を書いたこと。
医師に手紙を書く際には必ず書くことをお勧めします。
薬剤師ならではの視点ですし、医師の診療に役立ちます。

2つ目は「紹介状書いてあげるから座って待ってて」と当然みたいな態度で伝えたところです。
バカみたいですが実はこれがなかなか難しいのです。
在宅で色んな不眠症の患者さんをみてきて、かつ上記のサイクルを回してきた自信がこの態度を裏打ちしています。
初めてこの言葉を発した時は内心「イタイなぁ俺・・笑」と思いながらも、そこは結果として「人のためになる」ことだからと自分に言い聞かせながら・・。
過去の記事より引用

まだトレーシングレポートや紹介状を送ったことがないけど、送った方が良さそうな患者さんが頭に浮かんでいる方がいらっしゃれば、ぜひ一度行動してみてください。きっと患者さんのためになると思います。

今日もありがとうございました!



いつも読んでくださりありがとうごさいます。みなさんが読んでくださることが活力になっています。