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「それって薬剤師の仕事なの?」葵みどりサイド①

「それって薬剤師の仕事なの?」という問いを、これまでに何度か受けたことがあります。
  
アンサングシンデレラを観て、この問いについて改めて考えてみました。


アンサングシンデレラでこの問いが投げかけられるのは、ICUで心マを行うシーン、血糖コントロール不良が疑われる患者の行方がわからなくなり病棟の内外を探し回るシーン、内服薬のオーバードーズによる急変が疑われる患者の家まで行って内服薬の内容を確認したシーンでした。


僕の場合は、患者さんを聴診していたときや、入院時サマリーをはじめて送った時などがそうでした。


高齢者施設で、患者さんの聴診を行っていた際に、たまたま居合わせた訪問看護師さんに「薬剤師さんも聴診するんですか!?何を聞いているんですか!?」と聞かれたことがあります。

そのとき僕は「●●(処方薬)の効果をみるために聞いています!」と答えました。(1年目だったので震えました笑)


また、ある病院薬剤部にはじめて入院時サマリーを送った際、受け取った薬剤部長さんから「ヘルパーさんみたいなことも書いてあるんですね」と言われたこともありました。

そのサマリーには、服用拒否がある場合は声掛けを工夫すると服用してくれることや、食事が入らない時は小さなおむすびにすると食べられる場合があるといったことを書いていました。

入院に際してモノ(薬)だけを渡しただけで飲めなければ意味がありませんし、ご飯が食べられなくなったら薬が効きません。

薬を渡したいわけではなくて、健康を渡したいのです。

(余談ですが、その患者さんは90歳代後半で認知症があり、自分が施設の社長だと思っている方でした。ですので、通り一遍の服薬介助では断られてしまうのですが、「社長、味見お願いします!」とお声がけすると喜んで飲んで頂ける方でした。)


いずれのケースも、葵みどりや僕の考える当たり前と世間の薬剤師に対する見方(あるいは薬剤師自身の自己に対する認識)にズレがあるのです。
※どちらが正しいという話ではありません。

僕の自分の仕事に対する考え方は、このブログでも何度か書いてきましたが、「薬剤師という前提を捨てる」ということを大事にしています。

つまり、まずは1人の人間として、患者さんの悩み事をどうにか解決できないかなぁと考えてみます。
その中で、薬学で解決できそうなのであればはじめて”薬剤師として”行動するようにしています。

ですので、ICUで心マをしたり、患者さんを探し回ったり、家まで薬を確認しにいっちゃう葵みどりの行動はとても自然に見えますし、僕もそうすると思います。

聴診をするのも、入院時サマリーを書くのも、薬剤師として患者さんに関わった以上はやるのが自然だと思っています。自分が調剤した薬に対して責任を負うという意味でも大切だと思います。


ちょうど先日もこのことを象徴する出来事があったのでご紹介します。
※チーム内SNSで共有したものをそのままコピペしています。

先週の金曜日の往診で、Aさんが「最近足に力が入らない」と訴えました。
車いすで生活されているのですが、やはり足の筋力は大事です。
そのひとつの理由は、車いす⇔ベッドや車いす⇔トイレの移乗を介助なしで行えるかどうかはご本人のQOLに大きく影響を与えるからです。
試しに立ってもらうと、足がプルプルしています。
どうやら体重もここ1~2か月で減少していることがわかりました。
医師の判断は「胃癌の既往歴があるし、栄養の吸収が落ちてるのかな?よくわからないけど、とりあえず採血して今度考えましょう・・」というところに一旦落ち着きました。
僕としては内心、10年以上前に胃を全摘しているので、栄養の吸収低下はあり得る話なのですが、それは今に始まったことではないしなぁ・・と思っていました。
そこで閃いたのは「そういえば最近、缶詰食べてるとこ見ないなぁ」ということです。
実はAさんは焼き鳥や魚の缶詰(タンパク質の塊)が大好きで、息子さんに定期的に買ってきてもらっていたのです。
ひょっとしてコロナの影響で差し入れが滞っているのでは?と思い、本人に聞いてみるとその通りでした。
そういうわけで、ケアマネに相談してしばらくの間は息子さんの代わりに缶詰を買ってきてもらえるようにお願いしました。
多分1~2か月で良くなると思います。
薬でもなく、疾病でもなく、缶詰の提案。
手前味噌ですが、これはなかなかできることではありません。
医師の指示通り調剤していればいいや、と考えていると難しいです。
患者さんの困りごとをどこまで自分ごととして捉えて、行動できるかが大事だと思っています。
たまに、それって薬剤師のやることですか?と言われたりするのですが、そもそも僕は薬剤師としてというより、一人の人間として接しているので当たり前のことだと思います。
自分のことを薬剤師だから、と規定してしまうと見えるものも見えなくなります。
来週のことも予測できない現代で真に課題を解決をしていくためには、自分を型にはめない、前提を捨てるということが大事なのかもしれません。  

今回の記事では、"当然"という言葉を"自然"に置き換えて表現してみました。
何が自分にとって自然か、つまり自分の役割はこれだとしっくりくるかは考えているだけでは分からないです。
まずは患者さんの困りごとを自分ごととして、飛び込んでみることで始めてわかると思います。

ありがとうございました😊

いつも読んでくださりありがとうごさいます。みなさんが読んでくださることが活力になっています。